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千夜一話物語【第三章「異世界勇者の解呪魔法」連載中】  作者: ぐぎぐぎ
千の夜と一話ずつのお話
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18回目 証明方程式

ある研究者がネットワーク上に世界を創造できないか研究をしていた。

人間の感情が人間の脳が引き起こす錯覚であるなら、

この世界の全ての現象を数式で表すことができるなら、

恐らくそれは可能なはずであるから。


そうして理解者もないまま彼の研究は一応の完成をみる。

むしろ彼にとっての想定外はその先にあった。

事もあろうに彼が生み出した世界の科学者の方が先に、

この世界にある理にたどり着いてしまったのだ。


彼にとって予想外だったのは今まで箱の中に閉じこめた物だと思っていた、

自らが生み出した情報上の世界が彼の住んでいる世界と地続きであった事だった。


彼がそれに気づいたのはある日彼の研究室に見慣れない正物体が落ちていた事、

それに書かれていた言葉エウレカ。

彼は助手の誰かの忘れ物だろうと考えていた、

そうして日課となった自らの生み出した世界の観測を行っていると、

その世界の科学者が妙なことをしていることに気がつく。

巨大な地上絵を書いているのだ。

そこに書かれた言葉もまたエウレカであった。


彼にとってあまりその世界に不自然な干渉はしたくはなかったが、

事実を確認するために彼はその科学者の使っているスマートデバイスにアクセスし、

「贈り物は受け取った、お前の仕業か」

とメッセージを送った。

すると彼は即座に返答をよこす。

「その通りだ、提案がある」


その日から二人の科学者による二つの世界の技術交換がはじまった。

科学者が観測しているだけではわからなかった事が、

もう一人の科学者からのメッセージから読みとることが可能になった。

二つの世界にある科学技術はまるで相互補完をするかのように、

互いに無い物をお互い持っている状態であったのだ。


二人の科学者は交換条件として互いの世界にない科学技術を交換しあい、

互いに社会に貢献し時の人として大成していった。

そこまではよかった。


経済的に余裕ができてきた科学者は、

こちらの世界からあちらの世界へ物を送れるようにならないか、

その研究に興味を持ち始めた。

向こうの世界の科学者は最初は渋っていたが、

もうお互いが無二の友とも呼べる存在であったため、

彼の見つけた方程式を科学者に提供、

科学者はそれを利用して自らの生み出した世界への物質の転送を実現化した。


二人の科学者は互いの世界の交流やさらなる技術発展などを夢見始める、

しかし現実はうまくいかなかった。


向こうの世界の権力者が二人の関係に気づき、首をつっこむようになりはじめたのだ。

こちらの世界からの優位性を覆すために、相互交換装置を利用された。


暴走した権力者がこちらの世界を取り込もうとし、

リミッターの外れた相互交換装置のワームホールがいわば情報ブラックホールと化し、

全てを飲み込み始めた。

物質が崩壊し情報として取り込まれていく悪夢の中、

この世の終わりを覚悟する科学者。

しかしそれは唐突に終わりを迎える。

情報世界の存在を支えていた機械の抱えることのできる情報量を超え、

あちらの世界が情報崩壊を起こした事でこちらの世界に発生していたブラックホールは蒸発した。


こちらの世界から取り込んだ物質の情報と混ざり合い、

多くのバグを発生させた莫大なデータから元の世界を復元することは不可能だった。


思うところあって研究者を引退し、田舎で暮らし始めた男の前に一人の女が現れた。

彼女は彼に向こうの世界の研究者にしか彼が話していない話をする。

「君は愚かだ」

彼の口癖だった言葉を交えて彼女は笑う。

直接言葉を交わしたこともなかったのに男は向こうの世界の科学者を男だと勘違いしていた。

そして理論上にはお互いに同じ物を共有していたことがどういう意味を持つか、

それも考えていなかった。

「引退、それもいいがまだやれることはあるだろう?」

そういう彼女は手を差し出す

「全てが想定外、君はいつも私を驚かせる。

 いいだろう、私にもまだやることが残っているらしい」

男は彼女の手を取り固い握手を交わした。

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