時が重なる
ーー君の側にいなきゃいけない。
ーー何故だろう、君の時はまだ動いているのに。君は俺と同類だと感じるのだろうか……?
儚く散る花吹雪の中、しばらくの間彼らは見つめ合う。まるで二人っきりの世界のように……。ただただ、自分達の存在を確認し合うように静かにその穏やかな沈黙を、どちらともしばらくの間壊そうとはしなかった。その瞬間、二人の時はまるで二つの時計針が重なりあったかのようにカチリと音を立てて、二人の運命は重なりあった。
マークの時が十五で止まったその瞬間、
「俺の側に……、神々がこの世界にいることを望むまでいてくれないか、少年」
この時。この出会いが、この願いが最悪の選択肢を一つ消したことを神々以外は誰も知らない。
ただ一人の男といつか消えゆく切ない愛に苦しめられたマークが出会ったのが運命だったこと、それは神々すらも予想できなかったことなのかもしれない。……他の選択肢に目を向けないくらいに、お互いの違う輝きに見とれたことなどね。
それは恋愛感情ではない、お互いとお互いを繋ぎ合わせる絆をつくるきっかけの感情。相手への興味。
やがて、友情以上恋愛未満な関係となり、その感情が二人のこの関係に依存を生むことだろう。誰も自分らを知らない世界で二人、生きていくのだからそうであっても不思議ではないのかもしれない。だが、その関係は恋愛関係には永遠にならないだろう……、いずれ彼らはお互いのことをもう一人の自分として接するようになるのだから。
それは彼らの運命であり、彼ら自身の願いでもあった。だからこそ、それを受け入れたその瞬間、神々にとって都合の良い展開だったとしても二人はそれ勘づいたが、感じていなかったことにした。……それほど彼らは時間制限のある切ない愛情に振り回されていたということだ。
それが例え、養父であるユアの側にいれなくなる選択だったとしても、マークは孤独が嫌だった。あまりの孤独に狂い、大切な人達が愛したこの世界を壊してしまうんじゃないかと感じて、今から孤独に慣れておこうと思い、これ以上大切な人が出来ないように感情を殺した。
望みに期待するのをやめた。
「……はい」
神々の駒でしかないのかもしれない、それでももう機会が二度とないであろうこの申し出に縋らない訳がなかった。利用されているだけなのだろうが、マークにとってはそんなことはもうどうでも良いことだったのだ。
そんな返事に安堵の表情を見せる目の前にいるこの男は、すぐに表情を一変させてこう尋ねた。
「咲かせ屋な花屋を探しているんだが、知らないか?」
その言葉にマークは瞼をパチパチと動かした後、ハハッと声を上げて、マークは数年ぶりにわらった後、
「僕の家だよ、案内するね」
こう言った瞬間、マークは内心でこう思った。……どんなに反対されようと、この人の側にいてこの人についていこうと。時に流されるまま、この世界の行方を見守り続ける覚悟が出来た瞬間だった。