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違和感1

ーー何故だろうか、こんなにも時の流れが遅く感じるのは。体感では一年しか過ぎたように感じないのに、実際は六年も経ってしまっている。……まさか、前世の影響が出ていると言うのかな?

そう考え込みつつ、養父であるユアが趣味で始めた菜園を手伝いながら、魔法具であるじょうろを使いながら水やりをしていた時のことだった。

ユアは目を見開いて、盲点だったというかのような表情をしながらマークの肩を掴むから、思わず苦笑いをする。

どうしたものかと考えていれば、

「魔法具は使えたのか、魔法が発現出来ないところばかりを考えていたから、そこを見逃していた! 盲点だったよー」

そう言って、ぶつぶつと言いながら強く肩を握りしめるものだから、珍しく不機嫌そうな声をマークは出して、

「何がですか……」

「あのね! 魔法具は予め、魔法陣を組み込まれていて、魔力が少ない人や魔法を苦手とする人でも使えるように大魔法使いが魔法陣に組み込む補助魔法を作り、出来た武器だとこの世界では言われているんだ」

目を血走りさせながらそう言っているため、最低でも五年以上も息子でいるマークにはわかる、この話は長話になることくらい。

ユアは魔法のことになると直ぐに、まるで新しいおもちゃを与えられた子供のような表情をする。

この表情をし始めたらマークにとっては危険サイレンが脳内で鳴り響く合図だ、魔法の基礎すらもわからない彼にとっては自分の養父が言っていることはただの難解な暗号のようなものに感じさせるだけだから。


しかし、今回ばかりは聞かない訳にはいかないようだ。自分の命に関わることとなれば、この話を右から左へと話の内容を流す訳にはいかなかった。

必死に話を整理しながら、マークにとっては難しすぎるこの話を自分のなりの解釈をする。

ただ自分の意見だけを言って、結論を言わないタイプであるユアは珍しくこの話の結論を話す。

「つまりは魔法の発現が出来なくても、魔法具を使えなくはないと言うこと。魔法の発現が出来ないことにとらわれ過ぎて、魔法具の存在を忘れていたよ! 我ながら間抜けなことをした。待っててね、俺がマークに合う魔法具を探してくるから!」

自分のことのように悩み、考えてくれる。それはマークにとって贅沢すぎる現実で、これ以上望みなんてないくらいに嬉しいことなのに、本当に一番に感じる幸福ではないことへの違和感。

……自分が幸福に感じること、それはもう何なのかわかっているようないないようなそんな矛盾した心情を抱き、日々を生き、流されるまま周りの人とは違う時の流れを感じていた。

普段も頭が痛くなるくらいの難しい話であったはずなのに、今日の話は当然の知識であったかのようにすんなりと受け入れることが出来たことが驚きと感じないくらいにマークの感じていた違和感は日に日に二乗三乗するように、その存在を明確に示してきた。


ーーあの実験はあながち、的が外れていなかったのかもしれない。あの世界に適応出来なくなったから……、僕はこうして違う世界に生きていて、こうした違和感を感じさせられているのかな?


そう考えるしかなかった。

ただ一人で、こう悩んでも結論なんて何も出ない。それがわかっているからこそ、マークはこの悩みをユア達に打ち明けることが出来なかった。

それを打ち明ける時は、何故か今ではないとそう勘が訴えかけてきているような気がして、その悩みを自分の心の奥底に隠しておくことしか今の彼には出来ないのだ。

だから、自分が魔法具を使えるということを心の深く深くまで、素直に喜ぶことが出来なかった。









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