新しい家族
「僕達じゃダメなんです」
悲しそうにユリアは言った。
そう言われた相手は戸惑いながらもわかったと了承した。その返事をした後、ただしと話を切り出した。
その答えが何なのか、ユリアは想像できず、ただならぬ雰囲気に圧倒されてゴクリと喉を鳴らした。
「まだ暮らしが安定してないんだ、暮らしが安定してからマークを迎えに行くよ」
ただならぬ雰囲気はそう言った瞬間、一瞬で消えてにこやかな笑顔でそう相手が返事してくれたことにユリアは安堵した。これで、マークは“ひとりぼっち”にならないと安堵のあまり目を細めた。
そんな表情をしているだなんて、当本人であるユリアが気づくはずもなく、ただただマークのことを思って行動をするその姿を微笑ましげに、若者の慈愛深いその表情を懐かしそうに、優しげな微笑みで見守っているだなんて、周りが見えなくなるくらいに安堵しているユリアは全く気づいていなかった。
「……すまんな……。最後まで守り切れなくて。どうか、マークなりの幸せを見つけてくれること、ワシは祈っている。短い間だったが、大切な時間をワシと過ごしてくれて有難う。……愛しい愛しい我が孫」
二年経つのは早いもので、ユリアが養子先へと見つけてきた相手が引き取ると指定してきた日の前日の真夜中、愛しくて堪らないといったような表情をしながら、痩せた手で愛しそうにマークの頬をまるでその体温を覚えようとするかのようにゆっくりと撫でる。
そして静かに涙を流した。
「初めまして、マーク」
優しくて柔らかい微笑みを浮かべながら、マークに手を差し伸ばし、少しだけ屈んだ男性。
事情を何も知らないマークは戸惑った、……二人に嫌われるようなことを自分はしたのかと。だが、それは確認するまでもなかった、今にも泣き出しそうな表情を浮かべるユリアを見れば望んで送り出される訳じゃないと自惚れではなくそれがマークにはわかってしまった。
それならマークは我儘を言う訳にはいかなかった、悲痛そうな表情を堪えながら送り出すマーク達を困らせるようなことはしたくはなかったからだ。……それに目の前で優しく柔らかい微笑みを浮かべているこの男性の切なそうな顔を見たくはなかったから、淋しさを内心に秘めて、二人に微笑みを浮かべた。
「いままでありがとう。ぜったいにわすれないよ」
拙い言葉使いで、舌の回らないことに内心で転生したんだなぁと再び自覚させられながら、感謝の気持ちを有るだけこの言葉に込めた。