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この世界の物語5

ーー前世の世界に心残りはない。

ーーただ、もしあの科学者にもう一度会えるとしたら、短い人生だったし、前世で苦しい思いをしたのも全てはあの人のせいだったけど、この前世がなかったらライさんと出会うことがなかったかもしれない。

ーーそうなれば、あの科学者を恨むことは僕にはきっと出来ないよ。

マークは、そう誰かに言った夢を見た。だけど、それを誰に言ったかは覚えてはいない。夢と言うものはそう言うものだ、朝になり目が覚めればその夢の記憶は曖昧になってしまうはずなのに、不思議なことに自分が言った言葉は正確に覚えていたマークは、その事実に不審感を抱いていた。

ーーただの夢じゃないのかも。

そう考えながら、隣にいないライを探してベッドから降りれば、すぐに姿を見つけることが出来た。コーヒーを優雅に飲みながら、新聞紙を読む姿はまるで貴族のように上品で、思わずマークは呆然とただ見つめることしか出来なかった。

そんなマークの気配を感じ取ったのか、ライはおはようと穏やかな声で声をかけた。

その声で、ハッとしたマークは照れたように微笑みながらライの側へと駆け寄り、新聞紙を手から奪い、膝の上に乗った。

十五歳にしては小柄で、低い身長なマークが膝に乗ったところで重く感じることはないのか、自分に甘えてくる彼を微笑ましげに眺めながら奪われた新聞紙を取り戻そうともせず、コーヒーカップを溢さないようにテーブルの上にゆっくりと置いた後、ライは頭を撫でた。

ライはマークが満足するまでしばらくの間、頭を撫で続けていれば、コンコンと遠慮がちにドアをノックする音が聞こえてきた。

たくさん撫でてもらえて、満足したのか、マークはぴょんと膝の上から降りて玄関へと向かい、躊躇うことなくドアを開けた。


『あの……ってあれ? 部屋間違えたかな?』

身体が透けていて、脚がない男。そんな男を見て、前に聞いたあの話を思い出したマーク。動揺することなく、にっこりと笑って、

「影の勇者さん、ライさんに用ですか?」

『……えっ!? 君がマークくん? 何と言うか……、若く見えるね。そうなんだ、ライに用があって!』

マークがそう聞けば、何処かユアに雰囲気が似ている喋り方をする影の勇者に和やかな気持ちになりながら、幼い見た目に戸惑ったんだろうなぁ……と考えつつ、同時に気にする人の方が多いのかもしれないが、マークは気にしてはいない低い身長と童顔で気遣わせてしまったことに申し訳ない気持ちにもなった。

「アクノ、低い身長と童顔のことはマークは気にしてないぞ。可愛らしいねって言われても満面の笑みだからな、それにマークが愛嬌あるおかげかな、良く兄弟に間違われるよ。と言うか、珍しいな。お前がユキアと一緒に行動してないのも」

『たまには別行動くらいもするよ、彼はもう二十二歳だからね? お嫁さんだって探さないといけないし、いつまでもずっと行動している訳にもいかないでしょ、僕は寂しいけどね。君達が兄弟に見られるのは君も若く見られるからね、十八歳の顔には見えないんだよ。それより、そうそう君が用があってきたんだ、周期的に黒き魅了が現れるよ。今度こそ、白き魅了に現れて欲しいものだよ、新しい勇者が現れるたびにこき使われるけど流石に幽体でも人が堕ちゆく姿を見続けるのは精神的に辛いからねー』

「幽体だろうと、当たり前のことだろ。お前だって俺にとっては人であるのは変わらない。自分を傷つけてまで気丈に振る舞うなど何度もそう言ったはずだろう?」

ーー良く喋る人だな、アクノさんって。それにつられてか、ライさんもいつもより喋っているし。

そう考えながら、長年このようなやり取りをやっているだけもある、二人の会話に入れないくらいに軽快な会話をする様子を、マークは十五歳とは思えないくらいの穏やかで落ち着いた表情でただただ見守っていたのだった。


十分くらい経ったのだろうか、ライもアクノも冷静さを取り戻したのだろう、話がだいぶ逸れたことに気づいた二人は苦笑して、話を元に戻した。その様子をクスクスと笑いながら見守る姿勢を崩さないマーク。

『君は嫉妬しないんだね』

「どうして嫉妬するのさ、勘違いして欲しくないなぁ、僕はね、恋愛的な意味でライさんを愛してる訳じゃないんだよ? 何でもかんでも恋愛に繋げるのはよくないよ、僕はね、ライさんをそう言う意味合いでは愛さないよ、今もこれから先もね。そりゃ、友人関係でも嫉妬はするよ? それは僕にもわかる、でもね……? ライさんは必ず最後は僕のところに戻ってくる、同じ時を生きているのは僕も同じだから。離れ離れにもしなってもいつかはまた出会う、アクノさんが闇の勇者と過ごす運命であるように僕達も同じなの」

マークはそう言った後、愛嬌のある表情で笑った。その笑顔を見た瞬間、アクノは目を惹かれた。

そのくらいに、マークがその容姿をしていることに違和感を覚えるくらいの艶やかな雰囲気を出し、十五歳でこの雰囲気を出せるものなのかと違和感を覚えたのである。

愛嬌で隠された確実にある、艶やかさ。それを感じ取ってからアクノは気づいた、自分はマークにとっての地雷を踏んだのだと……。

『たまにいるんだ、闇の勇者が女の子の時、自分の側に僕がいるのは自分に恋愛感情に抱いているって勘違いする子。それで嫉妬されてたりしたから二人はどうなのかなぁって。……そうだよね、僕も嫉妬はされたことはあるけど、代々の闇の勇者と一緒にいたけど恋愛関係になったことがないもの! だから、マークくんとライはどうなのかなって思っただけ! 気を悪くさせちゃったならごめんね、マークくん!」

慌ててそう聞いた理由を話すアクノに、マークは、

「……そうなんですか! それは大変でしたね、いえ全然気にしてないので気にしないでください!」

いつも通りの愛嬌のある笑顔を浮かべて、そう言うマーク。恋愛に対する話題の時以外、彼は一度も敬語を崩すことはなく、相当な地雷を踏んだんだなぁ……としみじみとアクノは思ったのだった。










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