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【6】 ギルドにて再び

 私はベットから起き上がると何か自分が昨日と違っているように感じられる。

 なんというか感情と言うものが動きやすくなったと思う。

 朝から不安感にさいなまれ少し気分が落ちていってしまった。

 生活魔法で服や体の汚れを落とし匂いを消す。

 ローブを着て篭手を手に着けブーツを履く。

 部屋を出て階段を降りていく。



 昨日と同じの席に座り少し待つとユリアが笑顔を振りまきながら来た。

「おはようございます。パーミスさん」

「あぁ、おはよう。ユリア」

「朝ごはん何にします?」

「またお勧めで頼む」

「わかりました」

 ユリアは軽い足取りで奥に引っ込んでいきしばらくしてすぐに料理を持って戻ってきた。

 出てきたのはマイとビッズのスープに魚を焼いた魚料理だ。

「これは?」

「それはジーアと言う魚の塩焼きです。この魚はこの調理法が一番おいしいんです」

 私は初めにビッズのスープを飲み豆の触感を楽しんでから魚を食べる。

 くどくなく生臭いとも思わない。魚特有の油が舌いっぱいに広がり塩も絶妙で味を引き立てる。

 少し残念に思えたのは大根おろしかそれに似た何かがないことだが文句なしにおいしい。



「やはりここの料理はおいしいな」

「おや、嬉しいこと言ってくれるねぇ」

「あ、お母さん」

 返事をしたのは体型が少しふくよかな四十代前半と言った女性だった。

「私はサーニスってゆうんだ。ユリアの母親だよ」

「初めまして。私はパーミス・リーヴィヒア。パーミスとお呼びください」

 私は一度食事用のナイフやフォークを置き一礼した。

「せっかくの娘の恩人なんだ。堅苦しいのはよしてくれよ」

「まぁ、これで慣れてしまっているもので・・・。一つ言っておくことが・・・」

「なんだい?」



 とりあえず結界を張ったことだけでも言っておかなければ。

「昨日のいちゃもんの件もありますし魔法士はプライドが高いと聞いてましたのでもしも夜中などに襲撃を受けないためにこの宿に結界を張らしていただきましたがよろしかったでしょうか」

「・・・どういったものを張ったんだい?パーミスさんも魔法士だったんだねぇ」

「私は魔法士ではありませんよギルドにはどこにも所属していませんから。それと結界の方は私、もしくはこの宿の関係者とこの宿に悪意を持ったものの攻撃を跳ね返し侵入を防ぐものです」

「それだけのものを・・・願ったり叶ったりだよ。ここでの絶対の安全が保障されているわけだからね」

 でもこのサーニスさんは魔法士と言ったときに少し目つきが変わった気がした。



「魔法士はやはりお嫌いですか」

「そうだね。でも、あんたは魔法が使えるけど魔法士じゃないしこうして気を利かして結界を張るなんていい人じゃないか。娘の恩人でもあるしね」

 にこやかな笑みを浮かべるこの笑顔はやはり親子なのかユリアとも似ている。

「安心しました。ユリア、ごちそうさま」

 私は料理を食べ終え、何故か私たちの会話を熱心に聞いていたユリアに話しかける。

「あ、はい。ありがとうございます」

「では、行ってくる」

「どこへ行くんですか?」

「ギルドに魔物を売りに行こうと思ってな。今、手持ちにお金が無いんだ」

「そ、そうですか。では、私は仕事に戻りますね」



 私は宿から出て結界の様子を調べる。

(誰かが引っかかった跡があるな。どうせ魔法士の連中だろう。寝込みを襲うなんて器に小さい奴らだ)

 私は十時くらいの時間帯の町を歩く。勿論フードを深くかぶって。いろんな道を歩いていると多少入り組んではいるが何かに集まるように道が作られていた。

 そこに向かって歩き出す。少しだけ昼に差し掛かった日光の暑さに当てられ細い入り組んだ路地に時折風が吹き抜ける。

 そこを抜けるとちょうど目的地であったギルドがあった。


 私はふぅと一つ息をだしギルドに向かった。

 ギルドに入ると昨日は落ち着いて中を見れなかったが中はかなり広く受付のカウンターから手前だけでも冒険者なら百五十人ほど入りそうだ。

 きちんと清掃は行き届いており二階からはがやがやと笑い声なおも聞こえるので二階は酒場になっているようだ。

 一階はギルドの隅に階段があり受付が十個ほどずらっと並んでいる。

 どの人も何かの作業をしていた。

 その中から昨日の受付嬢を探し、見つけると私はそこに歩み寄った。



「済まない。昨日、ここに来たものだが」

 受付嬢は私の格好を見て少し考えた後、思いだしたようだ。

「あ、昨日の!昨日はありがとうございました。助けていただいたレイナから話は聞いてます。今日はどのようなご用件でしょうか」

「魔物を売りに来た」

 そう言ってブラッデとスリーバーの残りをすべて取り出す。

「第四級危険災害種・・・。本当にあなたが?」

「何かダメだっただろうか」

 何か信じられないように見てくる。

「いえ、少々お待ちください」

 少し奥に行き戻ってくるとずっしりとした袋と魔道具を持ってきた。

「それは?」

 私は魔道具であろう分厚い板状の物を差す。



「これは盗品であるかどうかを調べるものです。失礼だろうとは思いますが決まりですので・・・」

 魔物の死体にかざしていくと青い光が薄らとほんわか光る。

「・・・・問題ないようです。これが第四級危険災害種の討伐報酬です」

 中に入っていたのは金貨が2枚に銀貨がジャラジャラと・・・。

「そうか、ありがとう」

 私は懐にしまうようにして空間魔法で作った空間にしまう。

「あの、ギルド登録はされているのでしょうか?」

「いや、どこのギルドにも所属していない。旅・・・をしているからな」

「では冒険者ギルドで登録しませんか。魔物が狩れる実力ならネーワースにすぐになれます」



「ネーワース?」

「冒険者ギルドの階級です。大人数での集団で魔物を狩ることができるのはノーネーム。少人数で狩ることができるならばネーワース。一人で魔物の集団を相手にでき生還できるものをエラーです」

 どうやら私は少なくとも少人数で魔物を狩ったと思われているようだ。

「いや、遠慮しておこう」

「宿に泊まるときでも多少料金は割引されますし、名が売れれば報酬の高い依頼も受けることができますが」

「・・・」

 これは・・・何か上の人間がいるなら何か言われているな。自分のことをよく言うのは気が引けるが、魔物を狩って帰ってくることはすごいことなのだろう。自分ならそんな将来性のある人間なら確保しておきたいと考える。

「上から何か言われているならしょうがないが。あんまりしつこいと呆れられるぞ」

「・・・す、すみません」

 そう言って頭を下げてきたが私は入り口からの魔力の気配に意識が向かう。



 ギルドの入り口に二人ほどの魔法士と思わしきローブを着た奴が乗り込んできた。

 一人の方は分からないが、もう一人は昨日ぼこぼこにした奴である。

「そこのお前!」

「昨日の魔法士か・・・。何だ?」

「昨日、私の名前に傷をつけたことを後悔させに来たのだ」

 喚いている方は呪文を唱え出しもう一人は魔力を練っている。

 それだけの行為であいつらの力の差が出ている。

 まず魔力の質が違い、それから魔力の練る効率の良さ速さがもう一人の方が一段上だ。

「フレイムランス」

 馬鹿な方は早速魔法を撃ってきた。

 だが私は何もしない。

 なぜなら――



 三つ隣の受付でいた女冒険者が魔法の気配を出してからずっと警戒態勢でいたからだ。

 予想通りに女冒険者は瞬時に闘気を剣と自分に張り魔法を流れるように素早く切り裂いた。

「ウォーターショット」

 もう一人の魔法使いが呪文を簡略して撃ってきた。

 私は懐から禍々しい気配を出す死を呼ぶ玩具箱デッドコールトイボックスを取り出したが杞憂に終わった。

 先ほどよりも素早いスピードで散弾銃のような水をすべて切り裂く。

 女冒険者は私の・・・それも手の中にある死を呼ぶ玩具箱デッドコールトイボックスに目を向けた。そして強い野生のようね警戒心で私を見る。



 私はサバイバル技術の足音を消す消足と魔力強化を施し無音で相手の懐に飛び込み顎を下から掌打する。やはり殺さないようにするのは難しい。

 もう一人はすぐに気絶した馬鹿を背負って出て行った。

 あいつも渋々といった感じからほとんど何もしないのはわかっていた。

 振り返れば周りは唖然としており女冒険者は未だに警戒している。








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