【5】 宿屋にて
やっとだ・・・やっと普通の会話ができる!!!
私はギルドを出て人気の多い大通りに出ていた。
その大通りは光の燐光に包まれているがの如く夜の暗さで街灯の灯りと人々の活気に満ちた笑顔が際立って見える。
辺りを見渡せばいろいろな武具屋の看板やお目当ての宿屋の看板。少し人目に着きにくいかなと思うところに指名手配の看板なんかもある。
私は宿屋の場所を兵士に聞いていたがそれは門からの行き方なので看板を頼りに宿屋に向かった。
宿屋に着くと何故か喧騒に包まれていた。
「食べたのならお金をちゃんと払ってください!」
「私は魔法士だ!私たちがこの国を守っているのだ!こんなボロ小屋の飯を食っただけでも感謝を示せ!」
どうやら宿屋の看板娘?と魔法使い風の男の言い合いのようだ。
「なっ!貴方たちのような人にこの国を私たち市民を守ってもらうなんて不愉快です!」
魔法使い風の男は顔を真っ赤にして杖を取り出した。
(短気な男だな・・・)
魔力から察するに火魔法を看板娘に使う気のようだ。
さすがの見物者も逃げ出す輩や心配そうに見る輩も出てきている。
私は思念のブーツの力で跳躍力を望みジャンプをして見物者を乗り越え看板娘の後ろに回りローブの内側にいれローブに魔力を流す。
看板娘は体が小刻みに震えていて、気を抜いたら気絶しそうである。
「・・・・・ファイアーボール!」
私のローブに少し衝撃が伝わる。
「・・・・え?」
看板娘には何が起きたのかわかっていないようだった。
私は看板娘をローブからだし身体強化をし魔法使いに肉薄する。
「いっ!」
魔法使いは一気に顔が青ざめる。
それもそのはず。
魔眼の召喚による威嚇を当てたのだから。
私は魔法使いの杖ごと魔法使いの腹を殴り店の外に吹き飛ばした。
幸い見物者も逃げるように道を開けたので怪我人は魔法使いだけだ。
私は腹を抱え蹲り食べたものを戻している魔法使いに近づく。
「口喧嘩だけだったらこんなことにならなかったものを」
「貴様、げほぉ、おぼえ"でおけ必ず殺してやる。魔法士ギルドにたてついたら・・げほっ どうなるか教えてやる」
私は魔法使いの頭を気絶するくらいの勢いで蹴り飛ばし気絶させた。
side看板娘
私はこの”大樹の宿”を営む夫婦・・・お父さんとお母さんの娘です。
いつもの習慣として一階の酒場の手伝いをしています。
普段は冒険者たちが酔っぱらって酔いつぶれるまで飲むのですが今日は少し違いました。
普通ならこんな酒場に顔を出すはずがない魔法士の方がいらっしゃったからです。
冒険者と魔法士は仲が悪い。
これはもう当たり前になっていることです。
だから冒険者の憩いの場に異物が入って来たことで冒険者たちは帰って行ってしまいました。
そして一介の冒険者では魔法士には勝てない。
それがわかっていて喧嘩をしようとする冒険者は冒険者ではないと言ってもいいと強い冒険者の方が言ってました。
私たちとしても魔法士はあまり好きではありません。むしろ煙たがっていると言い換えてもいいでしょう。
魔法士の方は食べ終えたのか席を立ち出口に向かって行きました。
お金も払わずに・・・。
「待ってください!!」
魔法士の方は渋々といったようにこっちを振り向きました。
「私に何か用か」
「食べたのならお金をちゃんと払ってください!」
結構な声の大きさで魔法士は言い放った。
「私は魔法士だ!私たちがこの国を守っているのだ!こんなボロ小屋の飯を食っただけでも感謝を示せ!」
私の家をそんな風にも言うことも許すことはできないが魔法士だからと言って他者を下に見る言い方にも腹が立った!
「なっ!貴方たちのような人にこの国を私たち市民を守ってもらうなんて不愉快です!」
魔法士は顔を真っ赤にして杖を取り出した。
どうやら魔法を使うようだ。
私は動くことができず目をきつく閉じることしかできなかった。
フッと私の後ろに暖かい物が包み込んだ。
魔法士の声が遠くの方に聞こえ耳鳴りがキーンと鳴る。
(え?)
そう思った瞬間に包み込まれていた身体が解放され魔法士の目の前に誰かがいた。
その人が魔法士を吹き飛ばしてしまい、近づいて行くと気絶をさせてしまった。
少なくともわかることはこの人が助けてくれたということだけだ・・・。
sideout
私は一つため息をつくと宿屋に戻り看板娘に話しかける。
「済まないが今日は泊まれるか?」
「え・・・あ・・・はい!空きがあるので大丈夫です!」
私は銀貨の入った袋を取り出し看板娘に渡す。
「さっきの魔法使いの食事分と残りで泊まれるだけ泊めてくれ」
看板娘は中に入った銀貨の量に驚き私を見る。
「あ、ありがとうございます。こちらがカギになります二階に上がってすぐのところにありますので」
「わかった」
私は淡々と階段を上がり部屋に行った。
部屋の中に入ると綺麗に掃除がしてあるが宿屋なだけあって部屋にはベットしかない。
ベットに腰を掛けてふとお腹が減っていることに気がつく
「食事の時間を聴きに行かなくては」
私は部屋から出て階段を降りる。
すりとやはり私に目が集まる。
辺りを見回し壁際の席が空いていたためにそこに腰を掛ける。
「先ほどはありがとうございました」
私の横にさっきの看板娘が立っていた。
「いや。別にいい。それよりも食事はできるのか?」
「あ、はい。できます。何がいいでしょうか」
「私はこの国に来たのが今日なのでな。お勧めを頼みたい」
「わかりました!」
てってと小走りで走って行ってしまった。
しばらくして看板娘が料理を持って戻ってきた。
「こちらがお勧めのガードリの揚げ物と、ワイトソウの和え物、ビッズのスープです」
出てきたのは鶏の唐揚げに白菜のような食材の和え物、それと豆のスープだ。
「これは?」
見た感じ米のようだ。
「マイと言う穀類の植物の種です。噛むほど甘味が出て美味しいんですよ」
この世界でも米が食べられることはとてもうれしい。
看板娘は一向に立ち去ろうとはしない。
「どうした?」
「休憩貰ってきたのでお話聞いてもいいですか?」
「別に構わないが・・・食べながらでもいいか?」
「はい!ありがとうございます。私はユリアって言います」
正面に座った看板娘・・ユリアはとてもにこにこしている。
ユリアは髪を仕事がしやすいようなのかポニーテールで縛り手足はすらっとしており胸も結構ある。肌は透き通るように白く顔は美女と言うより美少女と言う顔立ちで笑顔には無邪気さが残る。
この宿屋の制服なのかその服もユリアの笑顔を引き立てている。
「先ほどはどうもありがとうございました」
ユリアはそう言って頭を下げた。
「いや、なにせっかく来たのに泊まれなかったら嫌だったからな。おなかも減っていたしな」
私はフードをとりながらそう答えた。
「わ・・・」
ユリアは茫然と言った風に私の顔を見てきた。
「私の顔は変か?」
「い、いえ。何でもありません。でもずっとフードを被っていたのにとってしまってもよかったんですか?」
「私は気分で着けているだけだから気にしなくていい。しかも食事中は行儀が悪いだろう」
「ふふふ。そうですね。さっきこの国に来たのが・・と言ってましたけど別の国にいたりしてたんですか?」
どうしようか。旅人で魔物を狩って生計を立てていることにしようか・・・。そうだなそうしよう。
「あぁ、ずっと東の方の国からな。魔物を狩って生計を立てている」
「魔物をですか!だからあんなに強かったんですね」
「あの輩は何だったんだ?」
さっきあれだけ?のことをしたんだ。相手のことはわかっていても損はない。
「あれは魔法士ギルドの魔法士です。魔法士ギルドはプライドが高い人たちで実際この国を魔物から守っているのも事実ですから何とも言えませんけどあの人はまだ第四級魔法士でまだまともに魔物と戦えないんですけどね・・・。ああいう人たちが多いんです」
最後に残したあの魔法士の言葉から察するに私を狙ってくるはずだが、仮にもここに被害が出ないようにしなくては・・・。
私は料理を食べていく。
「うまいな・・・」
揚げ物はレモンみたいなのがかかっているのかさっぱりとしていて脂っこくもなく使われている肉もいいのか柔らかい。
和え物は塩加減も絶妙で出汁に何が使われているのかわからないがとても香りもいい。
スープはすっと口の中に入ると出汁のいい香りと味が口いっぱいに広がり豆も食べたことのない触感で食べるのを楽しませてくれる。
「良かったです」
ユリアも何か幸せそうにしていた。
「そう言えばあなたの名前、聞いてませんでしたね」
「私の名前はパーミス。パーミス・リーヴィヒアだ」
私は初めてこの世界に来て名前を名乗った気がするな。
「パーミスさん。パーミスさん。うん、パーミスさんは魔法士なんですか?」
「まぁ、魔法は使えるが・・・。さっきの奴とは一緒にしないでくれよ?」
「あんな人とパーミスさんは全然違います!」
「そ、そうか」
少し迫力に圧倒された。
そのあと私は食事が終わりユリアと少し話してから部屋に戻った。
私はベットに腰かけ結界魔法でこの宿と私に悪意や敵意があるものの侵入や外からの攻撃を反射させる結界をこの宿に張る。
「これで、夜の襲撃には備えることができる。用心に越したことはないだろう。この宿に迷惑をかけるわけではないしな」
私はこの部屋にも悪意がある奴などの侵入を防ぐために結界を張り眠った。
―――パーミス・リーヴィヒアの世界の適合を確認。
疑似シュミレーションを投映。
安定を確認。
これより×× ××の人格を完全修正。
魔法神、武剣神による精神安定の加護を解除。
解除完了。―――
無意識の中で誰かに話しかけられた。
『俺の名前をあいつらから貰ったんだろ?だったら頼むな。俺が死ぬ気で守った世界を今度は救ってくれ。頼んだぞ』
その声にはしっかりとした願いが込められていた。
補足説明を書き忘れてました!最後の精神安定の加護はパーミスには見られないようになっているということになってます!すみませんでした!