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背中合わせのきみ

作者:

 「お前、名前は?」


 上座に座った若い男がくくっと喉の奥で楽しそうに笑う。耳に心地よい声で襖に手をかけた支を呼び止めた。

 支は特に感情の浮ばない表情のまま答える。


 「相良組の三代目が気にするまでのないただの女子高生です」


 その聞き様によっては馬鹿にしたような答えに周りいた部下がざわつくが組長である男が手を挙げ黙らす。

 若いが周囲の信頼をしっかりとつかんでいる。相当にやり手だと支は思った。

 あの若さでこれだけの極道を手中に収めているのなら大したカリスマ性と実力だ。


 「・・・・失礼します」


 これ以上興味をもたれても困ると判断した支は礼儀正しく頭を下げるとすぐさま踵返した。

 自分の目的は達した。極道と関わるのはこれで終わりだ、と支は思った。

 自分がよりにもよって相良組三代目組長に気に入られてしまったなどとこの時の支は夢にも思っていなかった。


 親友の流川華恵が親の借金を盾に無理矢理愛人にされかけていると支が知ったのは無断欠席の続く親友に見舞いがてらプリントを届けに来たときだった。

 何度チャイムを押しても何の反応もなく留守かと思いかけた支は帰ろうとしたとき家の中で微かな気配を感じた。

 再びチャイムを鳴らす。出ない。

 古い日本家屋だったこともあり庭から侵入した支が見たものは男に押さえつけられ今にも服を脱がされそうになっている親友の姿だった。

 見た途端支は無表情に躊躇も迷いもなく窓ガラスを蹴り破る。がっちゃん!と派手な音を立てて硝子が割れるのにも頓着ずかずがと室内に侵入した。


 「な、なんだおまえは!」


 狼狽した男を冷たく見据えながら支はさらに近づく。


 「強姦魔に名乗る名はない」


 無表情に言い切る女子高生に何を感じたのか男から血の気が引く。


 「支!」


 胸元を隠すように服を合わせながら華恵が支を呼ぶ。

 その顔にはぶたれたのか赤く腫れており目には涙が溜まっていた。

 親友の身に何が起きたのか見せ付けられ支の無表情に氷の冷たさが混じる。

 逃げ出そうとしていた男の背中に容赦なく蹴りを入れる。バランスを崩して転倒したところで容赦なく腹を蹴る。女とは思えないほどの強さに男の意識が一瞬飛びかける。

 支が履いているのは学校指定の革靴だ。さぞ痛いことだろう。


 「ごはっ!ごほごほっ!」


 容赦なく加えられた暴力に男は蹲って胃の中のものを全て吐き出す。


 「人の親友に無体なことをしようとしたんですからそれなりの覚悟をしてもらいます。警察に引き渡す前に彼女が味わった恐怖の万分の一ほどですが私が味あわせてあげます。・・・・覚悟してください」


 「ひっ・・・・!」


 無表情に見下ろしながらそんなことを言う支に男の顔が見る見る恐怖に歪む。


 「い、いいのか!そんなことをしたらそこの娘の両親がどうなってもしらんぞ」


 「・・・・・どういうことです?」


 男の言葉にきな臭いものを感じた。微かに眉を潜めた支だったがはっとあることに気付く。

 一瞬生まれた隙に男が支の足を振り払い割れた窓から外へと逃げ出す。

 バランスを崩し転んだため起き上がった時には姿が見えなかった。

 軽く舌打ちした。しまった。あいつを逃がしたらややこしいことになる。


 「華恵。おじさんとおばさんは?」


 「・・・・・・・・・」


 沈黙が答えだった。華恵の両親は共働きではない。この時間母親がいなければおかしい。それにこの数日の華恵の無断欠席とあの男の発言を考えれば答えは自ずと出てくる。

 華恵の両親はあの男に捕まっている。そして両親を人質に取られたため華恵は無体を強いられようとしていたのだろう。


 「そう、ですか」


 軽く息を吐く。返す返すもあの男を逃がしたことが悔しい。

 あのまま締め上げれば華恵の両親を助け出せただろうに。


 「・・・すいません。華恵。私は大きな過ちを犯したようです」


 一人蹲る親友に頭を下げると支は力強い目で彼女を見た。


 「事情を話してください。己の過ちは己の手で返上します」


 どんな手を使ってでも親友を助けると支は心に決めた。



 キッカケは父親が知り合いになったという男が家にやってきたことだった。

 「倉田」と名乗った中年の男は陽気な性格と巧みな話術で華恵の両親に土地を買わないかと持ちかけた。

 一等地で場所もいい。娘さんが結婚して新居を立てるのにピッタリの土地だ。お金なら心配ない。自分の知り合いに良心的な金貸しがいる。

 言葉巧みに華恵の両親を言い含め借金をさせた。

 そして後は想像通り、加速度的に膨れ上がる金利。借金は数日で借りた当初の倍以上になってしまった。

 とてもじゃないが華恵の家で払いきれるものではない。

 そこで「倉田」が本性を見せる。

 金を返せないなら娘を代わりに貰って行くと。

 それを聞いて華恵の両親は猛反発した。娘を渡すぐらいなら家族路頭に迷った方が万倍もマシだと「倉田」の要求を突っぱねた。

 そしてその次の日、両親は姿を消した。

 一人残された華恵に「倉田」が告げる。

 両親の安全を保障して欲しかった自分のもになれと。


 「・・・華恵。変な人に好かれましたね」


 どう考えても華恵を手に入れるために華恵の両親に借金を負わせたとしか思えない。

 確かに華恵は線の細い儚げな美少女だ。どこかで見初めた馬鹿が無理矢理手に入れようとしても可笑しくないぐらい魅力に溢れている。

 予想外に家族の絆が強くて実力行使に出たといった所か・・・。


 「しかし、厄介ですね。向こうから接触してくれないと居場所もわからない」


 しかも支が結構痛い目にあわせてしまったから逆上して華恵の両親にどんなことをするか分からない。一刻も早く探し出さないといけない。

 警察に相談?だめだ。時は一刻を争う。迅速に動いてくれるとは思えない。


 「・・・支・・・どうしたら・・・どうしたらお父さんとお母さんを助けられる?」


 がたがたと震える華恵。自身のせいで(それは決して彼女のせいではなく悪いのは「倉田」なのだが)両親を危険に晒しているのが耐えられないのだろう。

 自分だって男に襲われて怖いだろうに家族安否を気にかけられる華恵は本当に気丈であった。

 そんな彼女の抱きしめながら支の脳裏にはある一つの案が浮んでいた。


 (あまりご迷惑はかけたくないですが。あの人に頼るしかないですか・・・)


「大丈夫です。華恵。私のことを信じてください。絶対にご両親を助け出します」


 道は見えた。ならば後は走るだけだ。


 華恵を担任の女性教師に適当な理由をつけて(ストーカ被害にあってしばらく身を隠させたいと言った。ある意味間違ってない)泊めさせて貰えるように話をつけ華恵を担任の自宅まで送り届けたあと支は一人公園を訪れていた。

 日が沈みかけた公園を迷うことなく横切り公園の隅に作られたダンボールの家を覗き込む。


 「しろじぃ。居ますか?」


 意外なほど整頓されたダンボール中でごろんと寝転んでいた老人が支の声にのそのそと起き上がる。

 しろじぃ。この辺りのホームレスのまとめ役でこの界隈の情報通として知る人と知る老人である。

 本名も素性も誰も知らない。白い毛で顔が覆われてしまっているので「しろじぃ」と呼ばれている。

 昔、ひょんなことから懇意になった老人に支は手短に事態を説明する。

 しろじぃは聞いているのかいないのか「ほう」と「ほほう」とかとんちんかんな場面で合いの手を打つ。

 だが話終えた支に彼女が一番欲しい情報をくれる辺りやっぱり侮れないのかもしれない。


 「そりゃ・・・多分元相良組の下っ端だった倉本じゃな。組の金を持ち逃げして追われておったはずじゃがいやはや色ボケでそんなことをしておったとは穣ちゃんの親友が魅力的過ぎたのか奴が馬鹿すぎたのか・・」


 さすがのしろじぃも呆れたらしい。

 そして話を聞いて全体像が見えてきた支ももちろん呆れた。


 「話の流れからいくとその倉本はもしかして相良組に捕まりましたか?」


 「おお。相変わらず穣ちゃんは冴えているのう。どうやら穣ちゃんにぼこぼこにされてよろよろしとる所を相良組にと捕まったたらしい。いや、相良組の奴らも驚いただろうな。自分たちがボコボコにすべき男が既にボロボロにされておったのだから。今は丁度組に引きずられたころじゃないかの?」


「しろじぃ」


 皆まで言い切るより早くしろじぃが相良組の場所を書いた紙を差し出してくれた。

 それを受け取り深深と頭を下げると支は走り出した。その背にしろじぃが最後の助言をくれた。


 「門前で止められるようじゃったらワシの名前をだせばいい。「縁沼のしろじぃが身元を保証する」とな!」


 それに軽く手を振ることで感謝を表した少女にしろじぃは小さく溜息をついた。


 「ふぅ・・相変らず無茶をする穣ちゃんじゃ。まあ、あそこの組長は若いながらできたお人だからそう酷いことにはならないだろうが気をつけてな」


 お気に入りの少女の姿と壮絶な跡目争いの末に十代で組を継ぎ立派に組を護り続けている青年の姿を思い浮かべてさて彼らがどのような会話を交わすのかそれは数々の経験を経たしろじぃでも予想することができなかった。

 

 相良組の場所はしろじぃの根城からそう遠くない場所にあった。どんと立派な門構えと達者な字で書かれた「相良組」という文字が威圧感を放っている。

 その前に無表情に立つ支は何の迷いもせずに側にあったインターホンを押す。

 ぴーんぽーんと場違いな機械音のあと「はい」とドスの聞いた男の声が聞こえた。


 「こんな時間に申し訳ございません。私は縁沼のしろじぃに紹介されてここに来た者です。組長への面会を申し込みます」


 「・・・・・・・・・」


 インターホンの向こう側から戸惑いが感じられた。

 痛いほどの沈黙の後相手が小さく息を吐いた。


 「大変申し訳ありませんが当方いますこしごたついておりまして・・・」


 「倉本への制裁、ですか」


 「?!」


 その名に動揺した。そのことに力を得て支は言葉を紡いだ。


 「私の用事も倉本に関することです。そちらで処罰されることについて異論はありません。ただ彼に聞かなければならないことがあります。一刻を争います。どうか組長への面会をお願いします」


 その声は凛としており極道の本拠地に乗り込もうとする恐れや気負いは一切感じさせなかった。

 ただ静かな支の言葉にしばしの沈黙の後ゆっくりと扉が開いた。


 視線が痛い。

 あの後屋敷に招かれた支だったが通されたのは大広間。しかもざっと見た限り五十人はいるであろう強面たち見守る中、その中央に座るように指示された。

 黒い背広姿の男達の中で女しかも高校の制服を着た支は異物以外の何者でもなかった。

 背筋を伸ばし用意された座布団に正座する。

 無表情に座る少女は怯えも戸惑いも感じさせない。

 決して友好的でない空気に気付いているだろうに少女は毅然とそこに座っていた。

 重苦しい空気が漂う中で少女が軽く視線を動かす。上座にある襖が開かれ人が入ってくる。

 一目で雰囲気が違うとわかる男達。その中でも一際若い男が上座に用意された一段高い席に座る。下座の支と真正面から向き合う形だ。

 スーツを着崩した青年は驚いたことに二十を少し超えた辺りに見えた。見た目だけなら大学生で通る。

 若すぎる外見。だが発する空気や動作、視線の運びを考えると只者にはとても思えない。

 見た目だけだと信じられないがこれが相良組の組長だと判断して支はすっとその場に手ついて頭を下げた。

 自分が招かざる客であることは十分に理解している。知りたいことを知ったら即座にこの場から立ち去る気なら礼儀は通すべきだと判断した故の行動だった。


 「この度は不躾な訪問をしたことお詫びさせていただきます」


 じっと見られているのが分かる。観察するように内面まで見られているようで居心地が悪い。


 「倉本に何か聞きたいことがあるとか?」


 威厳に溢れた声。肌がぴりっと電気が走ったように痛む。


 「はい。あの男に監禁された人たちの居場所を聞きたいのです」


 顔は上げない。じっと耳を澄まして相手の返事を待つ。


 「ふぅ・・縁沼のじじぃの紹介じゃ無碍にも出来んか。一応うちはかたぎには手を出さないのが初代からの信条だからな。おい!」


 「はい」


 しばらくするとぐったりとした男が連れてこられ、組長と支の間に投げ出される。

 間違いない。華恵の家でぼこぼこにしたあの男だ。

 すっと自分の顔から表情が本当の意味で消え去るのを感じる。

 支は組長に了解の意味をとるように視線を送るとおどけたように彼は肩を竦めた。

 好きなようにしろと言う意味だと解釈して支は無様に震える男の元に近寄る。

 倉本が支に気がつき目を丸くする。ついで恐怖のあまり後すざりする。

 無様だ。本当に無様な姿。こんな男に華恵たち一家の幸せが無茶苦茶にされかけている。

 静かな怒りに支は身を任した。

 這って逃げる倉本の背に足を容赦なく叩き込んで動けないようにすると咳き込む相手に構わず襟首を摑みあげる。

 冷めた目の支だったがその目は怒り狂っているのが容易にわかる。


 「私がここにいることが不思議ですか?安心してください。私が味あわせたかった恐怖はここにいる方々が代わりにしてくださいます。素人の私がするよりも鮮やかに的確にあなたを苦しめてくれますよ」


 よかったですねと微笑みが自然にでる。

 昔から笑うことが苦手だがこんな時だけは笑うことができる。相手を心底恐怖に陥れたい時に鮮やかな笑みを浮かべることが出来る自分はどこかおかしいのだろう。

 嬉しい時に笑えないのに恐怖させたいときはするりと笑える。

 恐ろしい笑顔を瞬間に無表情に変えて支は尋問を開始する。


 「私の言いたいこと、分かります?分かりますよね?さっさと吐いて下さい。それとも素人の私の拷問でも受けますか?玄人さんよりずっとずっと下手ですから無駄に苦しみますよ?」


 素直に吐いて玄人さんから制裁を受けるか私に拷問されてから制裁を受けるか二つに一つです。と言う頃にはもう倉本は涙目であった。

 最初の一撃以外支は手を出していない。言葉と雰囲気だけで脅しつけている。

 周囲も驚いている。どう見ても華奢な女子高生が下手をすると自分たちすら舌を巻きかねない手際で脅しつけている光景は信じられないものがある。

 ただ上座に座って笑う組長とその側にひっそりと控える男だけは驚きもせずに静かに事態を見詰めていた。


 「み、港の・・・十五番倉庫!」


 「・・・・・二人は無事ですか?」


 「ぶ、無事だ!」


 「仲間は?」


 「い、いない!」


 「分かりました」


 ぱっと手を離す。支えをなくした倉本が無様に転がり急いで支から距離と取る。

 それを横目で見ながら支は上座に座る組長に頭を再び下げる。


 「お騒がせしました」


 それだけ言って出て行こうする支に組長が「まぁ、待て」と呼び止める。


 「いま、組のものを行かせた。お前さんが行くより車の方がはやい」


 「なぜ?」


 「うちの不始末に巻き込んじまった形だからな。侘びだ」


 飄々とした物言いからそれが本心なのか別の思惑があるのか支には読み取れない。


 「保護したら連絡が入る。座って待っていな」


 支はしばらく考えやがて大人しく座布団に座る。

 その姿に満足そうに微笑むと組長は「さて」と視線を畳の上で蹲る倉本に移す。


 「倉本・・・組の金を持ち逃げしただけでなく堅気にまで手をだしたとはな・・・覚悟の上だろうな」


 がらりと変わった空気に支は珍しく気圧されたように目を見開いた。支でそうなのだから直接晒されている倉本はそれ以上だろう。

 支でさえ少しだけ哀れに思えるほど震え上がっていた。


 「組を裏切った制裁は覚悟してんだろうな」


 冷たい視線が容赦なく倉本に突き刺さる。

 淡々とした口調がより恐ろしさを強調していた。

 ヤクザの制裁がどんなものか支には想像もつかない。だが多分「死んだほうがまし」と思うような目にあわせるのだろう。

 簡単に殺したら意味がないから。

 冷めた目で事態を観察している支。そんな彼女を上座に座った青年が面白そうに見ていることに不覚にも気付かなかった。

 

 倉本がどこかに連れて行かれた後。組長に側に控えていた男が何事か囁く。

 それに軽く頷くと組長が手渡された携帯を支に投げてよこす。

 なんとか受け止める。

 問うような目を向けると顎でしゃくられた。どうやら電話に出ろということらしい。


 「もしもし・・・?」


 「?支ちゃんかい?」


 「おばさん!」


 聞き覚えのある優しい声に思わず安堵する。強張った顔が微かに揺るんだのを見て周囲が少し目を丸くしているが安堵している支は気付かずに携帯から聞こえてくる声に耳を傾けていた。


 「おばさん。おじさんは?怪我は大丈夫ですか?」


 矢継ぎ早になる質問にいけないと思いつつもやめられない。

 ああ、ここに華恵がいればよかったのに。


 「私は大丈夫。うちの人はちょっと殴られて怪我しているけど命には別状ないらしいよ・・・支ちゃん華恵は?華恵は無事かい?」


 「はい。大丈夫です。今は担任の藤川先生の所で保護してもらっています。すぐに逢えますよ」


 「ああ・・よかった・・・」


 よほど娘の安否が気に掛っていたのだろう電話の向こうから安堵の気配が感じられた。


 「ところで・・・支ちゃん?」


 「はい?」


 「助けに来てくれた人たち・・・誰だい?警察には見えないけど・・・」


 「・・・・・・・・・・・・・・・」


 もっともな質問に支は思わず黙り込む。

 その人たちヤクザなんです。とはさすがの支も言えなかった。

 無表情が珍しく少し崩れてみえた。


 「えっと・・・とりあえずおばさんたちに危害を加えることはないと思います・・・から安心してください」


 それだけ言うのが精一杯だった。

 そして電話の向こうは明らかに納得していない。多分男達の風貌や気配から薄々物騒な空気を感じているせいだろう。

 進退窮まった所で携帯電話がすっと取り上げられる。

 いつの間にか側に立っていた組長が携帯を手に何事か喋る。


 「はい。そうです。心配いりません」


 驚いたことに向こうは彼の説明で納得してしまったらしい。次に電話に出たときにはもう普通の態度だった。


 ………どんな魔法を使ったんだろう。


 呆然とする支に組長はにやりと笑って「サービスだ」と言いながら上座に戻る。


 「あ、ありがとう・・・ございます」


 慌てて頭を下げる。


 「いいっていいって。気にするな」


 「はぁ・・・」


 かなり気さくな態度だ。それに酷く上機嫌に見える。心なしか周囲からの視線も痛いものではなくなっているような気が・・・。

 最初とは別の意味での居心地の悪さを感じる。


 「えっと・・・それではお暇させていただきます。本当にお騒がせしました」


 もう一度深深と頭下げて立ち上がり出口に向かう支。彼女が襖を開けるより早く側にいた男の一人が恭しく開けてくれる。


 「あ、ありがとうございます」


 「いえ・・・」


 本当にどうしたのだろうか?最初とは余りにも違う空気に戸惑う。


「お前、名前は?」


 不意に掛けられた声に振り向く

 上座に座った組長と目が合った。

 その瞬間ぞくりと悪寒が支の背筋を走った。

 反射的に襖を持つ手に力が入った。


 「相良組の三代目が気にするまでのないただの女子高生です」


 その聞き様によっては馬鹿にしたような答えに周りいた部下がざわつくが組長である男が手を挙げ黙らす。

 若いが周囲の信頼をしっかりとつかんでいる。相当にやり手だと支は思った。

 あの若さでこれだけの極道を手中に収めているのなら大したカリスマ性と実力だ。

 探り合うように視線が交差した。先に逸らしたのは支の方だった。


 「・・・・失礼します」


 これ以上興味をもたれても困ると判断した支は礼儀正しく頭を下げるとすぐさま踵返した。

 背後で強い視線が自分の背を追いかけているのを痛いほど感じながら。


 少女の姿が見えなくなるなり相良組三代目組長である相良総司は膝を叩いて笑った。


 「あははははっ!なんて女だ!あの度胸は並じゃねぇぞ!」


 上機嫌に笑う組長に部下もそれぞれ先ほどまでいた少女について感想を言い合う。

 飛び出してくる言葉はどれも好意的なものばかりだ。

 やんのやんのと湧き上がる場。裏切り者が出た後の空気の悪さは微塵も感じられなかった。


 「あははっ!・・・笹根」


 「はい」


 雑談にも加わらずにひっそりと側に控えていた男が音もなく近寄る。


 「調べろ」


 「了解しました」


 たった一言の命令に頭を垂れると笹根がすっと部屋を出る。

 これで眠るまでにはあの少女のことがわかるだろう。

 極道の本拠地に単身乗り込んでものの見事に渡り合い極道顔負けの脅しすらして見せる女子高生なんて初めてみた。

 興味を惹かれないわけがない。


 「さぁてどうするかな」


 長い黒髪の余り感情豊かとはいえない少女。

 だけど短時間で見せた表情はどれも印象的だった。

 背筋が凍るような笑み。

 冷たい眼差しとなんの躊躇もなく倉本を締め上げる姿。

 そして・・・助けたかった人の声を聞いた時に微かに見せた心底ほっとしたような顔。

 出会ってから僅かな時間で見た少女から目が離せなかった。


 『お前、名前は?』


 少女との接点がなくなる。そう思うと勝手に口が彼女を引き止めるための言葉を紡いでいた。

 だが少女は何一つ答えず去った。

 だが、甘い。

 向こうが逃げていくなら追いかけて逃げれなくするまでだ。


 「くくっ・・・逃がすかよ」


 猛獣が獲物を定めた。


 ぞくりとした。

 ばっと背後を振り返るが誰も自分を見ていない。


 「?気のせい?」


 だが確かになにかおぞましいものを感じたのだが・・・・。

 首を捻りつつ下校する支の隣に黒塗りの高級車が音もなく止まる。


 「・・・・・・・・・・・」


 嫌な予感がした。

 このような車を使いそうな人種とつい最近さらに限定するなら三日ほど前に接触した覚えが支にはあった。

 気のせい。気のせいと言い聞かせる支の祈りも虚しくドアから降りてきたスーツ姿の男には見覚えがあった。

 男が支の姿を見るなり機嫌良さそうに手を挙げ近寄ってくる。


 「よお。三日ぶりだな。お穣ちゃん」


 予感的中。


 降りてきた無駄に威圧感と色気を周囲に振りまき注目を集めているのは相良組の三代目だ。

 「その節はお世話になりました」


 逃げ出すわけにもいかず頭を下げる支に固いことはなしと組長は頭を上げるように言った。


 「はぁ・・・」


 上機嫌に車に凭れ掛かる組長の側には数人の構成員が固めている。

 空気の異質さと組長自身の見目に道行く人たちがちらちらと視線を送ってくる。

 このままだとそのうち警察が職務質問に来るか芸能プロダクションのスカウトマンが来そうだ。

 その光景に真っ先に思い浮かんだのがそれだった。


 「それでは私はこれで・・・」


 そそくさと逃げ出そうとした支の腕を組長が捕まえて止める。


 「・・・何かご用でも?」


 「ああ。もちろん。あんたに大切な話があるんだ。美作支?」


 教えていないフルネームを呼ばれ支は一瞬目を丸くしたがすぐにいつもの無表情に戻る。


 「調べたのですか」


 「悪いとは思っている。だが教えてくれないなら調べるしかないだろ?」


 悪びれない態度に支がむっつりと黙り込む。無表情が微妙に怒っているように見えた。

 組長がつかんだ手を引っ張る。倒れ込んだ支をしっかりと抱き込んだ組長は支の耳元でとんでもないことを宣言した。


 「支。お前俺の女になれ」


 断られることを微塵も疑わない自信に満ちた言葉だ。普通の女なら相手がヤクザの親分であることを知っていても頷いてしまいかねない拘束力を持っていた。

 だが相手が悪かった。

 珍しいことに。本当に珍しいことに支の表情が他人に分かりやすいほど動いた。

 そしてその顔を組長がぴくりと眉を上げた。


 「・・・・なんだ。その顔は」


 この人正気か?という顔をした支に組長が不機嫌そうに顔を覗きこんでくる。

 その顔をマジマジと見るがどうも熱はなさそうだし言動もしっかりとしている。


 「朝食と昼食に何を食べられましたか?何か言動が変ですよ?確かめるべきです」


 「・・・おい」


 「それともストレスですか?組長のお仕事は激務でしょう。適度な休息をお勧めします」


 「おいっ!」


 ぴたりと支が黙る。じっと見詰めると組長が一言一言言い含めるように囁く。


 「俺はなにも盛られていないし正常だ。その上で言うぞ。俺の女になれ」


 唸るように恫喝するように言われた言葉はもしかしなくても告白?だろうか。

 支はしばらく黙り込んでいた。何か考えているようだったがその内面は外からは計り知れない。


 「それは即ち私を囲いたい、と?」


 さらりと「囲う」なんて言葉が出てくる辺り支、普通ではない。


「響きが悪いな。結婚を前提にしたお付き合いの方がいいな。なんなら今すぐ籍を入れてもいいぐらいだ」


前半はロマンチスト発言とも取れるが後半はどう考えても普通の男の発想ではない。支の瞳が剣呑に細められた。


 『『・・・・・・・・・・・・・』』


 両者黙って睨みあう。

 不意に支が視線を回りにいる黒服に移す。


 「皆さんはこのことをご存知だったのですか?」


 支に視線を向けられて黒服たちがなぜだか嬉しげな空気になる。


 「・・・・・・・」


 だが組長の手前いつもの無表情を保って黙って全員が頷いた。


 「こんな女子高生の小娘が組長の側にいて皆さんは納得できるんですか?」


 言った途端に堪え切れなかったらしい黒服たちは物凄いマシンガントークで支を褒め称えた。

 曰くあんな痺れる脅しは聞いた事がないだのその度胸は三代目にピッタリだのこちらがもうやめてと止めるまで語り始めた。

 呆気に取られてよろけた支を組長が嬉しそうに抱きとめる。


 「くくっ・・諦めろ。うちの構成員は全員お前さんが気に入ったんだよ」


 頭上から降ってきた笑い声の主を支は無表情に睨む。

 この男は・・・。

 全ての元凶である男は睨まれていることすら楽しいと言わんばかりに笑っている。・・・・面白くない。

 支は無表情に頭を回転させる。議題はもちろんどうすればこの男にダメージを喰らわせられるか、だ。

 そして答えはひっそりと支の口から零れた。


 「ロリコン・・・」


 予想外の反撃に組長の口元が引きつる。


「俺はまだ二十六だ。お前と九つしか違わない」


世間的には女子高生相手に「俺の女になれ」発言をする二十代後半の成人男性がいたら十分「ロリコン」に該当すると思う。おまけで九つの年の差は普通「しか」とは表さないと支は思う。


 「・・・・私の意思は?」


 「しらねぇ」


 「即答ですか。いっそ清清しいまでの俺様ですね貴方」


 ふふふっあははっと笑い合う(支は無表情)と支はプロポーズの答えを口にした。


 「九つの年の差もロリコンも貴方のご職業も結構なマイナス要素なのでお断りします」


 「誰が断らせるか」


 笑い顔のまま支の腕を掴む組長。なにがなんでも支を手に入れるつもりなのか。

 その瞳には強い感情が渦巻いていた。


 「ええ。そうでしょう。そう言うと思いましたから・・・・・」


 断ってはいわかりました。なんて言える人間が極道の親分なんてやらない。

 相手の反応なんて百も承知だ。

 ぶんと空気が唸る。

 支は無表情にぽつりと呟きを零した。


 「実力で逃げます」


 組長が反応するよりも早く支の見事な拳が組長の鳩尾に決まっていた。

 堪えきれずに膝から崩れ落ちる組長。よっぽど綺麗に決まったのか腹を押さえて歪む顔には脂汗が浮んでいた。

 周囲からざわめきが起こった。どうみても堅気でない空気を持つ男を華奢な女子高生が一撃で膝をつかせたらそれは驚く。

 そして一般人以上に黒服たちが信じられない光景に固まってしまっていた。


 「そ、そうくるか・・・・」


 呟いた時には少女は彼の腕からすり抜けていた。フワリと風が気紛れに運んだ少女の纏う香りが辺りに香った。


 「組長!?」


 そこでやっと解凍されたらしい黒服たちがざわめくのを手で止めると組長は姿の見えなくなった少女を追いかけるように指示をだした。


 組長が真っ先に戦闘不能させられたことで逃げた少女への追跡が僅かに遅れる。

 その誤差は狙ったこととはいえ支にはありがたい。

 全力で走る。遠くで自分を追いかけてくる気配を感じて支は角を曲がるなり近くあったトラックの陰に隠れる。

 じっと気配を消していると黒服たちが「あねさん~~」と言いながら走り去っていく。

 息を潜めてそれらをやり過ごす。腕時計で更に十分ほどその場に隠れてから支はトラックの陰から出るときょろきょろと辺りを窺い敵がいないことを確認した上で走りだす。

 捕まる気はサラサラなかった。


 支が逃亡しているころ支に逃げられた総司は車の中で痛む腹を押さえていた。


「っう・・・容赦なく殴ったなあいつ・・・」


「自業自得かと」


 痛みに顔を顰める総司に笹根はそっけなく真実をつき放つ。

 この外見はほぼ同い年だが実は組員の中では先代から使える古株である年齢不詳男にはどうにも総司は弱い。

 子供の頃世話係だった関係上知られたくない弱みを大量に知られているせいかもしれないが。

総司はふて腐れたようにそっぽを向いた。


 「なにが自業自得だ。俺は惚れた女を迎えに来ただけだぞ。ついでにいえばなんでお前は支を追いかけなかった」


 この男なら楽々と支を捕まえることだできただろうに。

 あの混乱の中、部下達の中で唯一冷静だったはずの男はさらっと総司の言葉を流した。


 「私の仕事は貴方の側で貴方を支えお守りすることです。お側を離れるなどできません」


 「嘘付け。ただ単に追いかけない方が面白そうとか考えたんだろうが」


 返ってきたのは沈黙。ルームミラーには謎めいた笹根の笑みが見えた。

 笹根は喰えない性格をしているためか時々面白いことなら多少総司が痛い目見ても放っておく傾向がある。

ここ一番という時にはちゃんと自分の仕事はするのだが通常命に危険がない限りそういう傾向が強いのは確かだ。 「ご本人の意思を無視しては事を運べば当然反撃されますよ。相手が普通のお穣さんでないことは知っていらっしゃったでしょうに」


 そして笹根は正論を言う。耳に痛いことを承知でずけずけと矢を放つ。

 笹根の言葉に思わず黙り込む総司。

 支が強いことは分かっていた。だがまさか自分に攻撃して逃げ出すとは思ってもみなかったわけで・・・。

 仮にも手を貸してもらった相手だろうが容赦なく攻撃できる支を誉めるべきなのかもしれない。


 「今度ばかりは相手が悪いかもしれませんよ」


 笹根の言葉に総司はふんぞりかえりながら心外とばかりに鼻を鳴らした。


 「ふん。馬鹿をいうな笹根。俺は一度欲しいと思ったものは必ず手に入れる。

 逃げるというなら追いかけて捕まえて二度と逃げる気など起きないようにするだけだ」


 獰猛な肉食獣のような笑みを浮かべる総司は恐ろしさと同時に抗いようのない魅力を兼ね備えていた。


 猛獣が笑う。


 もうすぐこの手に舞い戻ってくる獲物を思い舌なめりしていた。

 猛獣の牙と爪が哀れな獲物を追い詰めていく。


 しろじぃはあっちこっちに顔を利く上に裏街道の人間でも彼に頭が上がらない人間が多いと聞く。

 しろじぃの所に逃げ込んだもの彼に組長を説得してもらおうという魂胆があったからだ。


 「おやおや。穣ちゃん。大変だね」


 全てお見通しのようだ。さすが情報通。


 「助けてください。しろじぃならあの人を説得できますよね?」


 「ほほほっ・・・随分と高く評価してもらっておるの。まかせろ・・・と言いたいところだが無理じゃ」


 すまんの~とのほほんと言うしろじぃに支が何故と問う。

 しろじぃは白い髭を撫でながらはてさてとのらりくらりとかわす。


 「しろじぃ・・・意地悪しないでください」


 「意地悪じゃないんだが・・・穣ちゃんを助けてやりたい。この気持ちに嘘はないぞ?相手が相良の組長さんじゃなけりゃ助けてやれるんじゃがねぇ・・・実はなあそこの組長さんには大きな借りがあってな・・・・」


 「はぁ・・・」


 しろじぃがあの組長に借り?なにやら話がきな臭くなってきたような・・・。


「穣ちゃんが逃げ回っている頃に組長が直々に来られてな借りを盾に色々と頼まれてのぉ~~~」


 のほほんと言う内容があまり自分に優しくないものだと感じ始めた支の腕を後ろからやってきた誰かが掴んで引っ張る。

 背中に何か当たる。耳元で聞こえた溜息は呆れとも安堵ともとれた。

 零れた吐息が支の黒髪を微かに揺らした。

 ぞくりと悪寒が走った。それと同時に力強い二本の腕がまるで逃がさないと言わんばかりに支をしっかりと抱え込む。

 しろじぃの視線は支の背後にあった。すなわち今、支を抱きしめて離さない人物に。 「まぁ、穣ちゃんがここにきたら自分が来るまで引き止めておけという内容じゃ。

 組長さんやこれでいいのかい」


 「十分だ。礼を言うぞしろじぃ」


 今、一番聞きたくない声が頭上から聞こえてきた。

 思わず上をみて予想通りの顔に微笑まれたので反射的にしろじぃを見る。


 「読み負けたお穣の負けじゃよ。相手が悪かったのぉ。ふぉふぉふぉ!」


 しろじぃはすごく楽しそうだった。


 「しろじぃ・・・・」


 助けてください。


 声にならない支の声を正確に読んだしろじぃがにこやかに笑う。


 「穣ちゃん。人生に荒波はつきものじゃよ。荒波も案外飲まれたら居心地がいいかもしれんし」


 ずるずると連行される支にしろじぃはそんな教訓なのかなんなのか分からない言葉をくれる。


 「安心せい。その人は懐にいれた相手には優しいから」


 「それでなにを安心しろと?」


 俺の女になれと宣言された身としては相手が優しいとかあまり関係がない気がする。本当に優しかったらこんな強引な手段なんて取らない。絶対に取らない。

 遠ざかるのにしっかりと聞こえていたらしい支にしろじぃは言葉を付け出す。

 「極道ものにしてはやさしいぞ?」


 ヒラヒラと手を振るのと支が車に押し込められるのとはほぼ同時だった。

 車に支を押し込めると車は静かに発進した。

 車内で組長は当然のように支の肩を抱きしめていた。ご満悦である。そして支は加速度的に機嫌が悪くなっていた。


 「離してください」


 「う~ん。嫌だ」


 支の当然の要求も全て却下される。腹いせに暴れるが身体に回された腕がたくみに押さえ込んでくる。


 「・・・・どこに連れて行くんですか」


 「俺のうち」


 「・・・・・・・・・・・・・なぜ?」


 「支が俺の女だから」


 「了承した覚えはないです」


 「了承させる。お前は俺に惚れる。絶対だ」


 獣の目が支を真正面に捉える。逸らせば喉笛を食いちぎられるような錯覚に囚われそうになる。

 「なぜ・・・私なんかを・・・」


 「気に入ったからだ。他に理由は無い」

 じっと支の黒い目が組長を見据える。


 「すぐに冷めます」


 「冷めない」


 「側にいればきっと飽きますよ」


 「飽きない」


 「飽きます」


 「飽きない」


 「飽きます!」


 珍しく声を荒げてしまい支は決まり悪そうに黙り込んだ。

 そんな彼女を組長が楽しげに抱き寄せて支の眉に皺ができた。


 「家に帰ります」


 「あ、無理。お前のアパート解約したから」


 「は・・・・?かい、やく?」


「どちらにしろ一人暮らしだろ?頼れる親戚もないんだろ?住む場所が俺の家に変わるだけだ」


 何をこの男は言っているのだろうか?

 理解したくないが本気で先に手を打たれているのは認めざるを得ない。


 「安心しろ。荷物なんかはもう運んである」 


 「仕事が早いですね・・・・」


 言葉に込めた嫌味に気付いているだろうに組長はにやりと笑って見せた。


 「惚れたか?」


 「いえ、全然」


 「そのうち惚れさせる」


 「惚れませんって」


 つんと顔を背ける支に組長はくくっと肩を震わせる。

 支に睨まれるが笑いは止められない。

 不機嫌な支。上機嫌の組長。私は無関係と言わんばかりに無表情な笹根。

 こんな風に組長と支の奇妙な共同生活は始まりを告げた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白すぎます!!ぜひ連載化して下さい!もっと読みたい!むしろ書籍で手に入れてどこでも読みたい面白さです♪二人の攻防戦が気になります!お願いしますm(_ _)m
[一言] お穣ちゃん は お嬢ちゃん ではないですか? あと、今日(10/26)の小話の中、 高感度 は 好感度 の間違いではないかと。 小話でも彼らの続きが読めて嬉しかったです。 また、ぜひ続き…
[一言] 面白かったです!続編むちゃくちゃ期待しています。
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