轟音
三題噺もどき―きゅうひゃくさんじゅうきゅう。
ガシャン!!!!!!!!!!!!
「――!」
校舎全体に響き渡ったのではないかと思う程の音が聞こえた。
明らかに硝子が割れるような音。
小学生の頃にその音を目の前で聞いたことがあったが、アレはかなり衝撃的だった。
「――」
まだ若干心臓がバクバクしている。
勢いで、口内で転がしていた飴玉を飲み込んでしまった。
おかげで若干息苦しい。
「――」
とりあえず、水を飲もうと水筒に手を伸ばす。
水筒のカバーがいつもと違って一瞬戸惑ったが、洗濯に出していたのだったと思いだし、手に取りなおす。
同じタイミングで隣に置いてあった水筒も回収される。
机を挟んだ隣には、いつものように、当然のようにあの子がいる。
「――飴のみこんだ?」
「――ん、飲み込んだw」
いつもの昼休み。
いつものように弁当を食べ終え。
掃除の時間までの時間つぶしをしつつ、飴を舐めていた。
今日は昨日から持ってきているフルーツ系の飴玉。
比較的小さなサイズだったからよかったものの、大玉とかだったら喉に絶対つまっている。……その場合は喉にも入らないのか?
「……なんだろうね」
「ねー」
水を飲み、お互い落ち着いたところで、そんなことを言ってみる。
正直まぁ興味はないが、廊下が騒然としているので、若干気持ちが浮ついている。
それと、先も言ったが小学生の頃の記憶があるので、なんというか落ち着かない。
「……」
何があったか、詳しくは覚えていないが。何せ、小学校1年生の頃の記憶だ。
まぁ、それなりに体格のいい男子生徒がいたのだけど。その彼が、何を思ったのか、教室にある廊下に面した窓に、思いきり頭突きをしたのだ。
それが私の目の前で、ものすごい音と共に割れて砕けた。幸いガラスが刺さったりはしなかったが、間違っていれば失明でもしていたかもしれない。その男子もたいした怪我はしていなかった気がする。
トラウマという程のものではないが、それなりに記憶に残っている程度には、強い衝撃を持った記憶だ。
「あ、先生」
「……」
そう言う声が聞こえ、廊下を見ると、呼ばれたのであろう教師が速足で廊下を通り過ぎた。割れた音が聞こえたのかもしれないが、ここから職員室まではかなりの距離がある。
響き渡るほどの音だったとは思うが、あそこまで聞こえたとは思えない。
「どーせ、男子がボールでも投げたんでしょ」
「ま、そうかもね、」
聞くところによると、校舎と校舎の間にある狭い場所で遊んでいる人が居るのだと。
それがまぁ、硬球を投げて遊んでいるらしいのだから……これはまぁ、起こるべくして起こった事故な感じがある。どこからその球を持ってきたのかという感じだが……。
大人しく校庭で遊んでいればいいモノを、そんなところで投げているからだ。
「わ……」
「すーご……」
案の定というか、なんというか。
割れた先であろう、廊下の奥の方から。
先程通った教師の、ものすごい怒声が聞こえてきだした。
「……」
あまり、こういう声を聞くのも。
好きな奴は居ないだろうが。
ただでさえ、変に浮ついている心臓が、更にドクドクと言いだす。
他の教師も呼ばれたのか、次々と廊下を走る音が聞こえてくる。
「……」
どうやら、怪我をしたような人はいないようだ。
学校の硝子って結構な強化ガラスだと思っていたのだけど、そうでもないんだろうか。
まぁ、でも硝子って点の力には弱いとも聞くし。当たり所が悪かったんだろう。
「ん」
「あ」
騒がしい廊下と教室の中に、チャイムが鳴り響く。
気付けば掃除の時間になっていたようだ。
それぞれ、気にはしつつも、移動し始める。
「じゃ、」
「うん」
私は持ってきたモノを持ちつつ、掃除の場所へと向かう。
あの子とは別れ、私は図書室へと行かなくてはいけない。
「今日部活は?」
「んーわかんない」
「いつも通りかw」
「いつも通りですw」
ひらひらと手を振り、別れる。
廊下に出ると、まだ騒然としていたが、人混みは晴れつつある。
廊下の奥で破片をかき集める生徒と教師の姿を見やり、私は図書室へと足を向けた。
お題:洗濯・飴玉・硬球




