第5話:雨音に溶ける、独占欲
窓を叩く雨音は激しさを増すばかり。
春くんの部屋の時計が、カチカチと静かに時を刻んでいます。
「……止まねーな、雨」
春くんが窓の外をちらりと一瞥して、私の隣にドサッと座り込みました。
眼鏡を外したままの彼は、どこか危うい色気を纏っていて、さっきから目が合わせられません。
「……あの、私、そろそろ帰らないと……」
腰を浮かせようとした私の手首を、春くんの大きな手がガシッと掴みました。
引き寄せられるまま、彼の胸の中にすとんと収まってしまいます。
「……帰る? この雨の中をか?」
耳元で囁かれる低い声。
彼は私の肩に顎を乗せ、細い指先で私の髪を弄り始めました。
「ったくよぉ……。お前、自分が今どんなに無防備か分かってんのかよ。濡れた服で、男の部屋に二人きり……。……バカだろ、お前」
「だって、雨が降ってきたから……っ」
「……分かってるよ。でもな、俺は聖人君子じゃねーんだよ。眼鏡かけてる時は必死に『優等生の櫻葉』を演じてやってるけど……」
彼は私の手を自分の心臓のあたりに持っていきました。
トク、トク、と、勉強の時とは比べものにならないほど速い鼓動。
「……今は、ただの『春』だ」
彼は意地悪そうに目を細め、私の耳たぶを指でツンと弾きました。
「決めた。今日はもう、帰さねぇからな。……親には俺から『勉強が長引いて、雨も酷いから送っていく』って連絡入れといてやるよ」
「えっ、でも……!」
「……でも、じゃねーよ。……お前が俺をその気にさせたんだろ。……責任、取れよな?」
そう言って彼は、私の膝の上に自分の頭を預けてゴロンと横になりました。
下から見上げる彼の瞳は、獲物を逃さない獣のように鋭くて、でも、どこか甘えるような熱を帯びていて。
「……。……舞。……今日は一晩中、俺だけ見てろよ。……いいな?」
眼鏡のない春くんの、あまりに真っ直ぐな独占欲。
雨音にかき消されそうな私の心臓の音は、もう彼に筒抜けに違いありません。
物語はいよいよクライマックスへ……!




