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第4話:眼鏡の曇りと、暴走する鼓動

帰り道、空が急に泣き出したかと思えば、バケツをひっくり返したような土砂降りに。

「ったく、最悪だな……」と毒づきながら、春くんが自分の上着を私の頭に被せ、そのまま駆け込んだのは……彼のマンションでした。


「……入れよ。風邪引くぞ、お前」

通された春くんの部屋は、彼らしく整頓されていて、本の匂いが微かに漂っていました。

玄関に入った瞬間、春くんは濡れた前髪を無造作に掻き上げ、眼鏡を外して棚に置きます。

「……タオル、持ってくる。そこで待ってろ」

リビングに残された私は、初めて入る男の子の部屋に心臓がバックバク。

ほどなくして戻ってきた春くんは、私の頭にバサッと大きなタオルを被せ、そのまま両手でゴシゴシと私の髪を拭き始めました。

「あ、自分でするよ、春くん……!」

「じっとしてろ。……ったく、お前はすぐ無茶すんだから。……服、結構濡れてんじゃねーか」

タオルの隙間から見える彼の瞳は、至近距離。

眼鏡という心のバリアがない春くんは、いつにも増して、攻めの姿勢です。

「……ねぇ、春くん」

「……なんだよ」

「学校の時と、全然違うね。……今の春くんの方が、私……好きかも」

不意に口を突いて出た本音。

すると、髪を拭いていた彼の手が、ピタッと止まりました。

「…………。……お前、それ、どういう意味で言ってんのか分かってんのか?」

彼の手が、タオル越しに私の頬を包み込みます。

じりじりと距離が詰まり、彼の整った顔が、吐息がかかる距離まで迫ってきました。

「学校じゃ眼鏡で隠してやってんだよ。……理性を保つのに必死なんだよ、こっちは」

「理性……?」

「……。……気づいてねーのかよ。俺が、お前以外にはこんな顔見せたくねぇって思ってること。……他の奴に、お前を触らせたくねぇって思ってること……」

春くんの低い声が、雨音に混じって鼓膜を震わせます。

彼は私の肩に頭を預け、掠れた声で続けました。

「ったくよぉ……。こんな狭い場所で二人きりとか……。……俺、もう我慢できねーんだけど。……どうしてくれんだよ、舞」

耳元で呼ばれた名前に、私の体温が急上昇します。

窓を叩く雨の音が、二人の速すぎる鼓動をかき消してくれません。

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