85 ドアの前で 4
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
「いや・・・、差し出されても、今は受け取れない。ミア、カーテンを開いて、アリアにブランケットを掛けてくれ」
カーテンを開ける許可を出されてしまいミアは一瞬、固まった。
しかし・・・、ライナスに『出来ません』と言うのは、負けのような気がする。
ミアは覚悟を決めて、スッ~とカーテンを横に引く。
「あ~~~~、そういうことだったのですか!!」
ミアの目に飛び込んで来たのは、銀狼姿のライナスにギュッ~と抱きついているアリアドネだった。
「そうだ。アリアに風邪を引かせるわけにはいかないだろう?」
ライナスは尻尾を持ち上げて、パタパタとベッドを叩く。
「殿下って、愛情深い方だったのですね・・・」
「―――」
銀狼姿のライナスはプイッとそっぽを向く。どうやら、照れているらしい。
―――狼皇子のこんな姿を誰が予想するだろうか?
二人にブランケットをふんわりと被せながら、ミアは込み上げてくる笑いをかみ殺した。
そっぽを向いていたライナスも、ブランケットの心地よいぬくもりに包まれて、目を細める。
「殿下、メリルさんも殿下のこの姿を御存じなのですよね?」
「ああ、もちろん」
「メリルさん、こちらへ来て下さい」
ミアは後方で待機していたメリルを呼ぶ。
「殿下はアリア様の身体を冷やさないように、この姿(銀狼)で寄り添っていて下さったようです」
「―――まあ~、そういうことでしたのね。オホホホッ・・・」
メリルは想像もしてなかった光景を見せられて、一気に頭が冷える。
そして、ライナスを疑い倒した自分が恥ずかしくなってきた。
メリルの心中を察したライナスは彼女に声を掛ける。
「メリル、勝手に鍵を掛けたことは謝る。―――そのせいで、色々と気を揉ませたようだが、私はアリアを傷つけるようなことは決してしない。もう少し私を信用してくれ」
「はい、肝に銘じます。大変失礼いたしました」
メリルは深々と頭を下げた。
ライナスは「分かったならいい」と彼女に告げる。
誤解が解けたところで、ミアはライナスへ伝達しておいた方が良いことを思い出す。
「殿下、軽食を乗せたワゴンを室内に入れておきますので、ご都合の良い時にお召し上がりください」
「分かった」
「では、そろそろ・・・」
ミアはメリルに目配せをした。メリルは軽く頷く。
「――――殿下、私達は下がらせていただきます」
「ああ、ご苦労だった」
「はい、おやすみなさいませ」
二人は揃って一礼し、そそくさとアリアドネの寝室から出て行った。
♢♢♢♢♢♢♢
侍女の詰め所に向かって、二人は廊下を歩いている。
先ほどとは違い、ゆっくりと・・・。
「ミア、取り乱してごめんなさいね」
「いえ、殿下の今までの行いが悪かったのでしょう」
メリルは凹んでいるようなので、ミアはさりげなくフォローを入れる。
「だとしても、手籠めは言い過ぎだったわ」
「そうですね。殿下に対して失礼だと思いました」
ミアは正直な気持ちを伝えた。
部下の物怖じしない態度にメリルは目をパチクリさせてしまう。
「ミア、貴方って本当に・・・。――――でも、ありがとう。今後は気を付けます」
「ええ、そうして下さい」
「ミア・・・」
二人は顔を見合わせて、ブッとふきだす。
そして、他愛ないおしゃべりをしながら、階段を下っていった。
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