82 ドアの前で 1
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
「さあ、出来上がったよ~」
厨房から出て来た料理人は、フードカバーをつけた皿をワゴンの上にサササッと置いていく。
「一番大きな皿は殿下用のハムときゅうりを挟んだサンドイッチ、中くらいの皿はアリアドネ様用のミルク粥、この皿はオレンジとリンゴをカットしたもの、そして、一番小さな皿はカスタードプリンだ。水差しの他に温かい紅茶もポットの中に入れてカバーを掛けている。レモンとミルクはここに・・・」
料理人はワゴンの二段目に置かれているレモンを入れた容器とミルクを入れた瓶を指で差してミアに教える。
この作業は重要だ。
毒物の混入を防ぐためにも、ここで受け取っていない食品をライナスたちに出してしまうようなことがあってはならないのである。
「ありがとうございます」
ミアは抱えていたブランケットを三段ワゴンの一番下にのせた。
「アリアドネ様、早く良くなるといいね」
「ええ、本当に・・・」
調理場を後にし、彼女はアリアドネの私室へ。
♢♢♢♢♢♢♢
コンコンコン。
もう三回もノックした。なのに、中からは何の反応も返って来ない。
「―――確かめよう」
ミアはワゴンの二段目に置いてあったグラスを手に取る。
そして、音を立てないように気を付けながら、ドアにピッタリとくっ付けた。
「これは安全確認。断じて盗み聞きではありません・・・」
彼女は言いわけをボソボソと念仏のように呟いてから、グラスに耳を当てる。
「―――あ~、寝てる・・・」
彼女はライナスに頼まれて、軽食と共に清潔なブランケットを持って来た。だが、二人はすでに眠っている。
ミアは険しい表情で腕を組む。
「どうすべき???」
このまま、ブランケットなしで朝まで眠ったら体力の落ちているアリアドネが風邪を引いてしまうかも知れない。
「殿下に何を言われようと、私はアリア様の体調を優先するわ!」
ミアは寝室に入ってアリアドネにブランケットを掛け、食事をのせたワゴンは分かり易い場所に置いて退出しようと決意する。
彼女はドアノブに手を掛けた。
「はぁ!? 嘘でしょー!!」
素っ頓狂な声を出してしまう、ミア。
「これ、殿下の仕業だよね。最悪!!」
声のボリュームに気をつけながら、不満を口にする。
「いくら上司とはいえ、庇い切れないかもしれないわ~」
施錠されているドアを見つめて、ミアはため息をついた。
♢♢♢♢♢♢♢
アリアドネの部屋の鍵を管理している侍女頭メリルのところへミアは事情を説明しに行った。
「―――というわけで、早くしないとアリア様が冷えてしまいます。メリルさん、マスターキーをお借りしてもいいですか?」
「ミア、私も一緒に行きます!」
稀に見るメリルの冷ややかな表情を見て、ミアはライナスのことが少し心配になってしまった・・・。
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