79 フラッシュバック 10
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
アリアドネはライナスの身体に腕を回し、ギュ~ッと抱き付く。
――――首の敏感な部分にアリアドネの鼻先が当たっていて、ライナスはムズムズしてしまう。
「(あ〜、くすぐったい!!だが、下手に動いてアリアが離れるのも嫌だ!!)」
ライナスは必死に耐える。
(ライナス殿下の銀の毛は毛足が長くて、絹のように滑らかでボリュームもしっかりあって、ふわふわ~~~。何なのこの安心感!そして、この心地良い温度!!ほのかにサボンの香りもするし・・・、ん~、堪らないわ~)
アリアドネは人生初のモフモフ体験にテンションが上がっている。
実のところ、彼女はこれまでの人生で動物と触れ合ったことがなかった。
それはクロ―シェ伯爵家のタウンハウスが帝都の中心部にあり、動物を置く環境になかったということもあるが、一番の原因はクロ―シェ伯爵がアリアドネを屋敷に囲い、極力外に出さないようにして来たからである。
また先のラース子爵事件の聞き取り調査で、ここ最近に雇われたクロ―シェ伯爵家の使用人は、マティルデや双子の姉妹の態度から、アリアドネのことを平民と伯爵の間に産まれた私生児と勘違いしていたことが発覚した。
心優しい捜査員が『アリアドネ嬢はクロ―シェ伯爵の前妻パシャの娘で、ピートアイランド王国の王族の血を引いている』と、使用人たちに教えてあげたところ、数人がショックで気を失ったらしい。――――倒れた者たちは王族に手を出したらどうなるのかを知っていたのだろう。
アリアドネに危害を加えていた者の処分は皇帝とピートアイランド王国の国王が相談して決める。これはアリアドネがそこまでしなくても良いと情状酌量を求めても、ライナスにはどうすることも出来ない。彼女がブリシア公爵家の孫娘(王族の血縁者)である限り、王族の権威を示すために厳しい処分を下すのは決定事項だからだ。
――――また、元々ドラクロア帝国で有数の農業地区だったクローシェ領については、伯爵の下手な領地経営以前に近年、凶作続きで領民たちが疲弊しており、衰退の一途を辿っている。
遅きに失したかも知れないが、これからクロ―シェ領は皇家の直轄地として、優秀な人員を投入し、再生を図っていく予定だ。勿論、ライナスもかの地が蘇るまでしっかりとフォローする。――――(虐げられていたにも関わらず)責任を感じているアリアドネのために・・・。
「(アリアがこんなに積極的に近づいてくれるのは嬉しいが・・・。人の姿でも同じことをしてくれるのだろうか?)」
今もアリアドネは彼をギュッと抱きしめて、銀の毛(体毛)に顔を埋めている・・・。
ライナスは嬉しいような、嬉しくないような何とも言えない気分だ。
「アリアは人間の私よりも銀狼の方が好きなのか?」
「どちらのライナス殿下も好きですよ?」
ライナスのボヤキにアリアドネは軽い口調で答える。
「本当に?」
「はい!――――あっ、でも・・・」
アリアドネは突然、ライナスからスッと離れた。
「ん、どうした?」
「ライナス殿下、私・・・」
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