76 フラッシュバック 7
楽しい物語になるよう心がけています。
どうぞ最後までお付き合いください!!
「嫌な記憶を吐き出してしまえ・・・ということですか?」
「ああ、そういうことだ」
(今までにあったことを全て吐き出してみる?―――いいえ、それは無理よ。だって、ライナス殿下に継母から罵られながら、ムチで打たれていた話なんてしたくないもの)
「すみません、難しいです」
アリアドネは首を横に振る。
「アリア、辛い経験を口にするのは気乗りしないかも知れないが・・・」
ライナスはアリアドネの目を見て、低い声でゆっくりと言葉を紡いでいく。
「私は何があろうと君の味方だ。―――悲しい時はいつでも胸を貸すし、嬉しい時は一緒に喜びたい」
(ライナス殿下は惜しげもなく、私に優しい言葉をくれる・・・)
「―――そこまでしていただくわけには・・・」
「何を遠慮する。アリア、君は私の婚約者じゃないか」
「ライナス殿下・・・」
「アリア、そろそろ気付いてくれないか。―――私は惚れた女の心を掴もうと必死なんだよ」
「惚れた女?」
他人事のような声を出す、アリアドネ。
それを聞いたライナスはアリアドネ顔の横に手を付いて、彼女の上に覆い被さった。―――いわゆるベッドドンである。
「!!!!」
(ち、近っっ!!)
鼻先が触れてしまいそうな距離にドキッとしてしまう、アリアドネ。一方、ライナスはアリアドネの動揺などお構いなしで、彼女の瞳をジッと見つめている。
「こんな男は嫌いか?」
アリアドネは大きく首を振って否定した。―――ライナスは顔が緩みそうになり、天を仰ぐ。
(ん? どうしたの・・・)
「ラ、ライナス殿下?」
アリアドネに名を呼ばれ、ライナスは再び彼女へ視線を落とす。
「―――アリア、チョコレートトルテは好きか?」
「チョコレートトルテですか?」
アリアドネは首を傾げる。
(なぜ、急にお菓子の話に?)
「私はあんずのジャムを挟んでいる方が好きなのだが、両親は入っていない方を好む。アリアはどうだ?」
「あのう、実は食べたことがなくて・・・」
「そうなのか!? ならば、明日のおやつに二種類とも用意させよう。食べ比べて、どちらが好みか教えてくれ」
「分かりました。楽しみにしておきます!」
(チョコレート、あんずのジャム・・・、美味しそうだわ~)
「実家にいた時はおやつなんてなかったのですけど、定期的に料理長が紙袋に焼き菓子を入れてコッソリと渡してくれて・・・、それを大切に食べていました」
「焼き菓子なら日持ちも良さそうだ」
「はい、しばらく食事を抜かれた時も隠し持っていたお菓子で何とか生き延びたという思い出が・・・」
「料理長は命の恩人だな」
「ええ、本当に・・・」
アリアドネは白いお髭がトレードマークの料理長を思い浮かべる。
(クロ―シェ伯爵家の取り潰しが決まったということは・・・。―――もう料理長にも会えないのね)
彼女は無意識にまぶたを伏せてしまう。彼女の寂しげな表情にライナスはハッとした。
「アリア、料理長に会いたいか?」
「―――ええ、とても・・・」
「では、皇宮へ呼ぼう」
「本当に?」
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