表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

BSスペシャル 「HumanAnimals 見えない“隣人”」を見て

作者: だるまん

 戦争は当事者かそうでないかで全く違うという現実を見せられた気がする。


 登場人物はイスラエル人数人。パレスチナと戦争をしている当事者の一方であり、その場にパレスチナ人はいない。そのイスラエル人が見せられるのはガザでの悲惨な状況。

 戦争について、そしてパレスチナ人について一般的なイスラエル人がどう考えているのかを語らせている番組だった。


 この番組を進行するディレクターはイスラエル人にパレスチナ人に対する攻撃に問題があると思っているらしく、それをイスラエル人に認めさせようとしているように見える。幼い子供の証言や民間人の死者、家族を失った人たち、ガレキの山の中でさまよう人、死んでしまった子供を抱きかかえる母親、地上波ではモザイク必至の映像や証言が並ぶ。

 それでいてイスラエル人を非難したり、イスラエル人に対する憎しみを語るパレスチナ人の姿は一切出てこない。そういう意味で偏っていると言える。


 登場するイスラエル人は理性的な人だと感じた。パレスチナ人に対する反応以外は実に誠実であり極右だとか政治的な発言をするような感じではない。むしろ今にもイスラエルの政策を批判しそうな人物さえいる。なのに、対パレスチナについては敵として例外的存在になっているという点で共通している。


 例えば、罪のない子供が死んでいるのはテロリストを壊滅するための許容される犠牲だと言ってみたり、自分たちが受けたテロ攻撃によって悲惨な現実を見ているから、相手の事を思いやる感情まで回らないとか、一人は誤った教育を受けたパレスチナ人はすべて殺してガザなどは人の住めない土地にするべきだとまで言う。


 イスラエル人はユダヤ人であり、ドイツのホロコーストの最大の犠牲者だった歴史がある。ユダヤ人であると言うだけで殺された歴史があるユダヤ人が、ユダヤ人でないパレスチナ人だから殺すべきだと言う。自己矛盾に見えるこの考え方を本人は全くおかしく感じていない。


 イスラエルはテロリストの位置を把握して精密な爆撃をしていると主張する。だから悲惨な子供たちの映像はごく一部のテロリストの巻き添えになった人だとしか考えない。敵国の中で悲惨な状況があったとしても見たくないし知るのは不快。その原因を作ったのはパレスチナ人でありイスラエル人は自衛のため、民間人の犠牲を極力出さないようにテロリストだけを攻撃している。


 戦争の当事者になるということは、敵という人間のように見える悪魔を殺すための攻撃に積極的になれるということらしい。出演した人が特別な偏った人だったとは思えない。番組タイトルのように「見えない隣人」となってしまうと何人死んでも何も感じなくなるようだ。


 私は戦争で世界が滅ぶようなことはないだろうと思っていたが、当事者になるとこんな考えから抜け出せなくなるならば、案外ありうるかもしれないと感じ始めている。


 日本がどこかと戦争をすることがあったら、私も敵を人間ではないと思うのだろうか。敵であれば民間人であれ赤ん坊であれ死んでもしかたがない、責任は敵にあると言えるのだろうか。


 いや、そこにたどり着くためのなんらかのトリガーがありそうだ。それは何だろう。

 憎しみ?悲しみ?恐怖?宗教?

 私がそこにたどり着く道のりにあるのは何なのだろう。

 戦争を終わらせるために必要なのは、そこにある何かを知ることから始めなければならないように感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とても興味深く読ませていただきました。 BSスペシャル自体は見てないので、個人的な感想です。 人は正義や信念というものを手にするとあらゆることをしても成し遂げようとするからではないでしょうか? …
録画しただけでまだ見ていないのですが、番組関係ない視点からの私見です。 ユダヤ人はホロコーストの「被害者様」です。「被害者様」という言い回しをご存じないなら検索してください。 ヨーロッパの負い目をいい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ