76.「悪役令嬢(?)たちの奮闘」
「推しは壁とか鎧になって見守りたい派なもので……」
「そういう人も確かにいるけど! 本当に壁に埋まってるパターンは初めて見たかな!?」
あ、待って。何だかぼんやり思い出してきたかも。
私が交通事故に遭う直前、スマホで見ていた新作発表PVが、ホーンテッド・ナイトメアのファンディスクだったような……。確かに、学校が舞台の、いわゆる「学パロ」だったような……?
ストーリーは確か、ホーンテッド・ナイトメアの「怪異」達が今度は襲われる側で、登場する「七不思議」たちは全員、館では「怪異」にすら至れなかった下級の魂たち。彼らは館で力を得られなかったものだから、レディ・ナイトメアたち「怪異」への復讐に燃えている……そんな雰囲気だったかも……
──ヒヒッ、だから言っただろう?
脳裏に聞き覚えのある声が響く。
──前向きになる程度で赦されて、正しい理に戻れるとは思えない……ってねぇ。ヒヒヒッ!
……くっそー、あの邪神め。
簡単には終わらないってことかぁ……!
「本来『骨格標本』は主人公を追いかけ回しては捕まえてホルマリン漬けにしてしまう『怪異』なんですけど……前世の記憶があると、あんまりそういう気になれなくて……」
なるほどね。今回の「レディ・ナイトメア」ポジションは彼女なわけだ。……そして、この子にも思いっきり「前世」とやらの記憶があると。
「ということで……力をお借りしてもいいですか」
「…………なんの?」
「もちろん……『ハッピーエンド』のためにです。さくらさん、できますよね!?」
骨の少女は両手を前に出し、骨ばった……というか骨しかない手のひらを合わせて「お願い」のポーズを作る。
あれ? もしかしてこの子、前世の時からの知り合い……?
「あわよくばエドたんの裸体をこの目でもう一度……あっでもどう考えても刺激が強くて墓に入るしかなくなる……やはりここは壁に埋まってニコエド新刊の構想を……いやここはあえてのレイエド……もしくはリナエド……もういっそチェルエドとゴドエドも足してエド受けオムニバス本に……それならアルエドとイーエド……はもはや王道過ぎる……けど王道もまた良いしなぁ……」
突然スイッチが入ってしまったのか、ブツブツと呟き出す骨格標本。
あ、この人絶対知ってる。Tmitterでめっちゃ見覚えある。色んな意味で腐り過ぎて白骨化しちゃったのかな、エドマンド推しの粉雪さん……。
「とにかく、協力します! 私をどうにか壁の中の楽園に戻してください……!」
「……オーケー! やってやろうじゃない!」
何にせよ、やることは変わらない。
まずはゴードンを見つけて、次に館にいた「怪異」たちを探そう。また彼らの協力を得て、今度は「七不思議」たちの負の感情を解いていくしかない。
わたしは奮闘するだけだ。
絶対に、ハッピーエンドを迎えてやる……!
「とりあえず、『体育館の悪霊』を説得して、エドたんだけはきっちり保護してあります! 縄跳びロープでの緊縛をリクエストしておいたので、見に行くのが楽しみ……こほん、少なくとも下手に暴走していることはなさそうかなと!」
…………。
うん、まあ、知ってた。
前途多難だぁー!!!!!!




