表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/83

8.「芸人orアイドル?」

 ごたつきはしたものの、何とか主要な「怪異」を集め、席に着かせることができた。


「お嬢、話ってのはいったい……?」


 隣に座ったゴードンが神妙な顔で聞いてくる。さて、どう説明したもんかな。

 わたしが今までの「チェルシー」じゃないとバレるのを避けつつ、呪いの館の改革を切り出さなきゃいけないわけで……。


「わたくし、実は……」


 まあ、考えがないわけじゃない。「いつものワガママか」って思ってもらえれば、違和感はないはずだし。


「リナと、お笑いコンビを組むことにしましたの」


 ゴードンが「はぁ?」と間抜けな声を出し、ニコラスがぶっと吹き出す。「なるほど、つまりは復讐か」とか言ってる騎士と何言ってるか分からない貴婦人は、今日も通常運転で何よりです。


 でも、こう言えばリナも肩を持ってくれるはず。そう思い、テーブルの上でブリッジをするリナを見……


 お前またブリッジしとるんかい!!!!


「コンビ名、『這うナイトメア』でどう? どう???」


 しかもノリノリやないかい!!!!


「い、良いですわね。二人の特徴がしっかり組み合わさっていますわ」

「『這い寄るナイトメア』もアリだよ!」

「まあ、良いですわね。混沌(こんとん)とした感じがこの館にぴったりですわ」


 ともかく、これをきっかけにして、徐々に屋敷を明るい雰囲気にしていけば、リフォームも夢じゃない。

 ほら、コント用の会場欲しいーとか、ニコラスさん吉〇新喜劇っぽい曲弾いてーとか、色々理由をつければ何とか……!


「ちょっと良いかな」


 ……なんて考えていたら、対面に座った金髪碧眼(へきがん)の美青年が手を挙げる。


「……何ですの。アルバート」


 彼の名前はアルバート・ジャック。

 今は金髪碧眼の線が細くて見目(うるわ)しい貴公子に「擬態(ぎたい)」しているけれど、普段は全身が焼け(ただ)れた見るからにホラーな外見をしている。


 実はこいつ以外にも、私達はみな、頑張れば生前のような姿に「擬態」できる。疲れるけどね。

 ……ゲーム上でアルバートはそれを利用し、生きた人間のフリをして主人公に近づいて来る。「僕も、君と同じように迷い込んだんだ」……と。

 当然、罠だ。こいつの二つ名は「血まみれ貴公子」。生前は世界を震撼(しんかん)させた殺人鬼で、怪異としては「レディ・ナイトメア」と同等かそれ以上にヤバい。攻略対象ではあるけど、こいつのルートに行ってしまうとヤバさが色んな意味で段違いに跳ね上がると言われている。ファンからは「年齢制限を引き上げた男」とさえ呼ばれる始末だ。


 アルバートはニコリと微笑み、指を胸の前で組む。

 何? もしかして、怪しまれた……?


「更に(ひね)って、『這い寄る☆ナイトメア』はどうかな。ついでに、歌とかダンスをやるのもどうだい? デビュー曲は『(こうべ)を垂れて這い(つくば)れ豚よ』みたいな感じで……」

「それ、貴方の趣味ではなくて?」


 ふう、良かった。疑われたわけじゃなかった。

 良い笑顔でとんでもない発言飛び出てるけどね!


「ふざけんな! お嬢に何歌わせる気だ!」


 ゴードンがテーブルを叩いて抗議する。

 ほんとだよ。アルバートがドMなのはよく知ってるとはいえ、さすがに笑顔でその発言はない。


 ……毎回思うけど、殺人鬼のくせにドMって何?


「もっとこう……可愛いやつ歌わせた方が良いだろ! ピンクのフリフリ着て指でハート作る感じのさぁ!」


 あれー? ゴードン? アイドルの追っかけ趣味なんかあったっけ??


「理解した。復讐の時は近い」


 エドマンド、あんたは黙ってて。


「『(こうべ)を垂れて這い(つくば)れ豚よ』と『さくらんぼハート』と『復讐の時は近い』ねぇ……ヒヒッ、露出度は高めで……」


 ニコラスさーん!? 何をメモしてるのー!?


「──────」

「……失礼。『トリオになる気はないか』とのことだ」


 えっ、まさかのレイラも乗り気!?

 ……あれ、この館……意外とチョロいのでは……?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ