表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/83

73.「そんなよくある失恋ソングみたいに……」

「わたしは、みんなで楽しみたい」


 伝えたい。

 届いて欲しい。

 そう心から願えば、わたしの館は応えてくれる。 


「この館を、みんなが笑っていられる場所にしたいの」


 気付けば、碧、赤、黒……さまざまな色の視線が、わたしの方へと一箇所に集まっていた。


「みんな、これまで辛い思いしてきたし、苦しんできたし、呪ったり嘆いたり、奪ったり怨んだり、そういうことばっかりだったじゃん」


 なぜ呪うのか。なぜ奪うのか。

 考えてみれば、とても簡単なこと。

 ……()()()()()()()()だ。


「きっと思うところはあると思う。赦せないこと、悔やんでいること、足りないもの、いっぱいあると思う。……でも……そういう自分もひっくるめて、まずは、癒していこうよ」


 レイラは、哀しみの水底に沈んだままだった。

 エドマンドは、裏切られた傷口から血を流し続けたままだった。

 アルバートは、空虚な渇望(かつぼう)を抱き続けて飢餓(きが)に取り憑かれた。

 ゴードンは、愛と正義を見失って、果てのない迷宮に囚われた。

 ……わたしは、恐怖と絶望をねじ伏せようとして、呑み込まれた。


 イオリや黒沼さんも、今は分からないことの方が多いけれど、彼女たちだって彼女たちなりに思うところがあるはずだ。……リナだって、きっとそうだ。


「……ダメ、かな」


 ……少なくともアルバートや黒沼さんは、何を言われようが自分の欲望を優先するかもしれない。

 それでも、やれることがないわけじゃない。


「黒沼さん。とりあえず、曲はアルバート向けじゃなくて全年齢にして」

「なんでや! この燃え盛る愛をどないしたらええねん!」

「そこは個人的にCDに焼くなりなんなりしてもらって……ほら、生前だってR18はR18として楽しんでたじゃん」

「せやけど……」

「色んな楽しみ方ができる方がお得だと思わない?」

「……そう言われたら、せやなぁ」


 必死に説得すると、黒沼さんの態度がどんどん軟化(なんか)していく。

 なんやかんやでチョロ……ノリが良いんだよね。黒沼さん。

 

 アルバートはわたしと黒沼さんのやり取りをじっと見つめていたけれど、やがて、静かに(きびす)を返した。


「……どこに行くの?」


 その背中に問いかける。

 ……今度ばかりは、無視してはいけないような気がした。


「僕は、僕の在り方を否定しようとは思わない」


 その言葉から、ほのかに未練が伝わってくる。


「けれど……君の在り方も、否定すべきじゃない。そう思っただけさ」


 表情はわからない。

 けれど、その背中は、どこか寂しげに見えた。


「距離を置こう。僕たちは分かり合えないけれど、僕は、君を好きでいたいんだ」


 あれ?

 なんで私が振られた感じになっちゃってるんです?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ