55.「でもブリッジ走りは特に要らない」
食堂に戻ると、ボロボロのエドマンドが疲れ果てた表情で出迎えてくれた。
足元では、アルバートが恍惚とした表情を浮かべながら踏みつけられている。
エドマンド……お疲れ様……。
「復讐の機は熟した……。わが刃は怨嗟を忘れずして、さりとて安穏を乞うている」
「……ええと……? 『ボコしておいたから安心しろ』的なこと言ってる?」
たぶんなんだけど、エドマンドの言葉から怨嗟とか妄執とか仰々しい雰囲気を差し引いて、なおかつ「復讐」を「今自分がやるべきこと」みたいなニュアンスに変換したうえで難しい言葉をわかりやすく置き換えると、何となく言ってることがわかる……のかな?
「あ……だいたいそんな感じ……」
よし! レイラちゃんからお墨付きももらえたし、順調だね。
レイラちゃんはマイクが設置されてない部屋だと声が聞こえないだろうけど、ニコラスに頼んでピンマイクを用意してもらえればそれで解決するし……
よし、いける。
この二人に「怪異喰」を口説いてもらおう……!
「エドマンド、レイラ、話があるんだけど……」
「……話って?」
「時は来た。同胞よ、復讐の刃に迷いはない(訳:私にできることなら力になろう)」
兄妹は二人とも情に厚い方だし、意思疎通の問題がクリアできた以上、いずれやってくる「怪異喰」への対応も一緒に考えていけばいい。
上手く行けば、「怪異喰」の方の「核」をどうにかして、ただの女の子として館の住人に迎えられるかもしれないし。
「あれっ、アタシは!?」
逆立ち中のリナが素っ頓狂な声を上げる。
あー……リナは……えーと……う、ううーん……
……原作での役割、モブだからなあ……
「ブリッジ走り……頑張ってね……!」
「オッケー! 任せて!!」
待って、さすがに素直すぎて心が痛い。
本当にそれでいいのリナ……!?
「……私もブリッジ走りしたほうが良い?」
「レイラちゃんは無理しなくていいよ。そもそも走れないでしょ」
「栄光の日は過ぎ去り……甲冑に縛られし屍になれど、同胞のため復讐は為されるべし(訳:身体は鍛えている。私が手伝おう)」
「たぶんパワーじゃ解決しないよそれ」
待って、兄妹揃って良いやつ過ぎない?
でもブリッジ走り、一番意味ないんだよね。残念なことに。
「ここは役割分担ってことで! ホラ、アタシはスペシャリストだから!!」
まあいいや。リナが変なプライド持ってて助かった。
リナ、ありがとう。あんたはそのままでいて……




