45.「もうちょっとこう……手心ってない……?」
……けれど、レイラがエドマンドの妹だって分かったのは案外大きいかもしれない。
この事実があるかないかで、エドマンドへの理解が大きく変わる。
「……そっか、そういうことか……」
「……お嬢?」
ゴードンが不思議そうにわたしを見る。
ちょいちょいと手招き、部屋の隅でニコラスも加えて会議をすることに。
レイラは心配そうにエドマンドの方に駆け寄り、アルバートはというと、二人の横で退屈そうにあくびをしている。
「レディ、僕も一緒に話してもいいかな」
「今、あなたに構っている暇はありませんの」
「……だよねぇ」
アルバートの申し出は丁重にお断りしておく。
可哀想かなと少しは思うけど、ニコラスいわく「構うようになったからちょっかい出してきた」らしいしね……。
「……チッ、しつけぇんだよ。あの野郎……」
ゴードンも殺気立ってるし、今はあんまり関わらない方が正解だよね。
……まあ……いつかはアルバートのことも考えなきゃいけないわけなんだけど……。
何はともあれ、今考えるべきはエドマンドとレイラについてだ。
わたし達は彼らに寄り添って、前向きになれる手伝いをしなくちゃいけないんだから。
情報を整理するため、まず、ニコラスに話しかける。
「エドマンドは結局、領主を『大切な妹を預けるに値する男』として認めたんだよね」
「ヒヒッ、そうだろうねぇ。それどころか、忠義を尽くすべき主君として見定めたわけだ」
「そう。それで、領主の弟イーモンのことも『妹の相手として相応しい』と思ってたっぽい?」
「そうだろうねぇ。親友だったみたいだし。だからこそ、イーモンの暴走を諌めようとしたんだろうねぇ。ヒヒヒッ」
うわぁ、楽しそうだねニコラス。
流石は人の不幸大好きおじさん……。
「えっと……つまり、どういうことッスか」
ゴードンがついていけていないみたいなので、解説を挟む。
「エドマンドは信じていたはずの親友に、忠誠を誓った主君と、守るべき妹を殺されたんだよね……その上で親友に『妹を殺した』と濡れ衣を着せられて、拷問されたことに……」
……うん。言葉にすると、尚更エグいね。
エドマンド……。辛かっただろうなぁ。
きっと、彼もレイラと同じように、誰よりも自分を……主君を、妹を守れず、親友の狂気に気付けなかった自分を恨んだのかもしれない。それこそ、正気を保てなくなるほどに……。
「……。……キツいッスね」
「キツいよね……」
ようやくゴードンにも、エドマンドの置かれた立場が伝わったらしい。ただでさえ血色の悪い肌が、いつにも増して青ざめている。
「そりゃあ頭もおかしくなるってものだよね! ヒヒヒヒヒッ」
ニコラスは本当に楽しそうだね!
ああもう、邪神とはいえ人間だった時代はあるんだよね!? いや、むしろ人間だから人の不幸を喜ぶの……かなぁ……。
……ともかく。
今までわたしは、エドマンドを「復讐に狂った騎士」として、どこか他人事に見られていた。……正直、あのゲームの中での「怪異」としてはそれが正しいんだと思う。
ゴードンやチェルシーだってそうだ。過去や背景もある程度明かされはしたけれど、「ホーンテッド・ナイトメア」はあくまでホラーゲーム。過度の理解や共感は、「恐怖」を損ねてしまう。
だけど……レイラもエドマンドも、かつてこの世界で生きていた魂だ。
「レディ・ナイトメア」に語られなかった嘆きがあったように。
「首盗りゴードン」に語られなかった正義があったように。
取り零された想いが、そこにはある。
彼ら兄妹が本当に味わった絶望は、わたし達には到底計り知れないけれど……だからこそ、できる限り寄り添おう。
一緒に、ハッピーエンドに向かいたいからね。




