41.「一発屋芸人よりバリエーション少ないけど、大丈夫そ?」
「這う女」こと、リナ・レーガン。
「怪異」としての詳細は謎。生前についても謎。もはや、何もかもが謎。
判明しているのは、笑いを求めているということと、なぜかブリッジが面白いと思っていること。……それだけ。
うーん……いくら何でも謎すぎる。
正直、味方につける意味があるのかどうかすらよく分からない。そろそろブリッジにも飽きてきたし。
「あ、やっほー二人とも! ねぇねぇ! 見てってよアタシの新技!!」
「……どうするんスか、お嬢」
ゴードンが困った顔でわたしの方を見てくる。
えー……そんなこと言われてもなぁ。
わたしはあくまでレイラに用があるのであって、リナに用があるわけじゃないし……
「リナ、少し席を外してくださいます?」
「え? なんで?」
「レイラと話をさせてくださいませ」
「え? 別にアタシいても良くない?」
そう言われると困る。
リナも一緒にいて困るということは、確かになさそう。聞かれて困る話をするわけじゃないし。
「分かりましたわ。そこでブリッジしていてくださいまし」
「あいあいさー!!!」
わたしの投げやりな言葉に対し、リナは意気揚々とその場でブリッジを始めた。本当にそれでいいんだろうか。
「──……」
レイラはと言うと、ひたすら困惑している様子で、わたしとリナを交互に見つめている。
さーて、どう話を切り出そうかな……。
「レイラ。大事な話がありますの」
「──? ────」
……あ、そうだ。エドマンドがいないから、翻訳できないじゃん……! 何言ってんのか全然聞き取れない!
「ゴードン、気合で何とか聞き取れない?」
「……えっ、無理ッスよ」
「アタシわかるよ!」
「だよねぇ……やっぱりエドマンドじゃなきゃなのかなあ……」
「アタシもわかるって!」
リナがブリッジしたまま理解ってるムーブを連発してくるけど、絶対何ひとつ聞き取れてないから無視しよう。
「エドマンドは今どこ?」
「着替え持って行ったら、なんかよく分かんねぇけどめちゃくちゃキレながらどっか走ってったッス」
「あー……アルバートに復讐しにいった感じかな……」
つまり、屋敷のどこかでリベンジマッチが行われてる可能性が高い、と。
エドマンドは復讐(概念)に燃えると格段に強くなるし、次はアルバートが服ごとミンチにされる番かな……。それはそれで悦びそう……。
「レイちゃん、見てて。アタシ、笑いでアタシの中の頂点狙うから……!」
リナが横でなんか言ってるけど、目標低いなこいつ。
「──……」
レイラ、たぶんそれ「そっか……」って言ってるよね。
どうしようかな。レイラがせめて聞き取れるぐらいの声を出す可能性があるもの……何だろう……。
恋バナは逆効果だろうし、怖い話は効かないだろうし……。
「レイちゃんとチェリーも仲間になってくれたし、これからは、三人でコンビ組んでくよ!」
リナ、それコンビじゃなくてトリオだ……ね……
……。……そうだ。そうだった。
「そういやわたし達、『三人でアイドルユニット組む』って話もしてたね」
「してたッスね。やっぱ、お嬢はフリフリ衣装が一番似合うと思うんスよ」
ゴードン?
頭よわよわなくせに、なんで変なところはよく覚えてんの?
まあいいや。それはそうと、これでどうにか道筋は見えた。
「レイラ」
黒ずくめの肩に、ぽんと手を置く。
レイラは小首を傾げ、わたしの方を見た。
「ボイトレ、頑張りましょうね」
にっこりと笑い、ありったけの優しい声で語りかける。
「──!?」
あれ? なんかビビられた?
おっかしいなー。




