2.「転生って……もう死んでますけど!?」
「……あれ?」
少女は気が付くと、見知らぬ森の中にいた。
「こ、ここは、どこ……?」
前後の記憶が曖昧で、自分がいつから、なぜ、何があってここに居るのか、彼女にはさっぱり分からない。
「……あ。あれは……」
鬱蒼と生い茂る森の中、彼女は見つける。……いいや、見つけてしまう。
「その館」を──
そこで、少女が古びた館を見つけるアニメーションが挿入されたことを覚えている。
大きく浮かび上がる「ホーンテッド・ナイトメア」のタイトル。始まる乙女ゲーム風のOPアニメーション……
……思い出した。ここは、ゲームの世界だ。
傍らに座る、首に継ぎ目のある男。
壁際に立った騎士は赤く染まった目をかっぴらいたまま、血の涙を流し続けている。
半透明のおじさんが物悲しいピアノ曲を奏で、その隣では、椅子に座った貴婦人が床を見つめて何事かブツブツと呟いている。
全身焼け爛れた青年が雷鳴轟く窓の外を眺め、けたたましい笑い声が聞こえたかと思ったら、ブリッジをした女が廊下を高速で駆け抜けて行った。
そう。ここはかつて私が好きだったゲームの世界。
何がきっかけかは分からないけれど、わたしは唐突に「前世の記憶」とやらを思い出してしまった。
っていうか、あの……わたし、もしかしなくても……
テーブルの上の鏡を見る。ピンク色の髪、緑色のリボン、黒いドレス、血の気の失せた肌、見開かれた瞳孔……
ハイライトのない瞳と裂けた口からは、謎の黒い液体がポタポタと滴り落ちている。
今世、既に死後なんですけどー!?