プロローグ 竜の源との出会い
青空を超えた先に、星々が点々と存在する黒い空間、宇宙ーー
そこに、一人の人ーーの形をした存在が世界を見下してる。
広く、果てが見えない黒い空を背に、
白い髪、白い服、白い目ーー全身純白の外見をしてる彼は、凡そ人が持てると考えられないオーラを漂わせ、世界を圧倒するような威圧を放つ。
王の威厳、神の威容ーーその表しだけでは不十分と思うほど、彼はすべてを超越した存在感を、表している。
彼は目の前の星を静かに眺める。宇宙から観察された星は、真っ黒で、一点の光も無く、生きてる命すらない。黒い「何か」に星全体が覆われ、終わりを迎えつつある世界である。
そんな彼と相対するのが、星野 竜炎。黒い星の中心と言える場所に、黒き霧を身に纏う炎が、冷や汗をかきながら、一人で立ち尽くしてる。
得体の知れない存在を目の前に、憎恨の源の力を既に展開した炎は、それしかできないからだ。
「それが、今のお前の力か…」
純白の存在が、感情の帯びない声で、虫けらを見る様な目で、炎を見つめながら話す。
「世界の危機に、そして自身の命が死に近付けばつく程、【憎恨の源】の力が強くなるはずだが…その程度とは、笑える」
彼は言葉と裏腹に、表情一つも変えず、嘲笑うこともせず、静かに告げた。
「まあいい…本当にその程度だけだったら、この星もろとも消え去るだけだ」
その言葉と共に、彼の背後にーー神意のみが使える術陣ーー「神源陣」を展開した。
しかしその神源陣の規模は、ただ彼の後ろの身近い場所にとどまらず、何層も重なり、瞬く間に星を包み込めるような、巨大の神源陣になった。
炎は感じる。その神源陣から溢れ出す力は、強い。
純白の存在の言葉通り、星を滅べるぐらいの、大いなる力。
『世界を破壊できる力を持つ』と言われる憎恨の源を、遥かに超えてる。
「…憎恨の力を完全に発揮できない、己の未熟さを恨むがいい」
男は炎に向けて、手を上げ、拳を握り、構えた。
それと同時に、神源陣から莫大な源素が彼の拳に流れ込み、純白の光の塊に変わる。
「消えるがいい」
男は、手を振り下ろした。
シューーーー
空気が存在しない宇宙に、有り得ない音ーー風が裂く音が響く。
拳ぐらいの大きさの光の玉が、男の手から離れた瞬間、光の束に変わり、勢いを増し、そして、
大地を覆いつくす一つの流星となった。
星を貫く一撃ーー
ただの流れ星ではなく、かつて世界に「大絶滅」をもたらした隕石群よりも広く、地上から見上げる果てのない空の景色すらも、眩い光に変えたその攻撃に炎は、避けることができない。
逃げることは不可能。理を壊す力を以てしても、抗うことができない。
それが純白の存在が体現する支配の理。
『始界竜源』ーー竜種の源であり、憎恨の源と同じく、『源』の一柱である神だ。