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再臨のラグナロク  作者: ちさん
一章 神の災涙
15/28

第15話 約束の日、西の遺跡にて~その一~

約束の日。


朝、俺たちは最後の作戦会議を行い、夕方ぐらいに西の遺跡へ出発した。


夕焼けに染まった空、新鮮な森の空気。

自然を感じながら、俺たちは重い歩みで遺跡へ足を動かす。


作戦内容はーー



    ●



「西の遺跡は、洞窟の中にある遺跡ではなく、北の廃都に似てる場所ダ。ただ神像とか、明らかに現代の建物じゃないものが多いから、廃都ではなく、遺跡を呼ぶようにしてる。その方も区別しやすいしな」


シアの家で、ライは地図を開いて、俺に遺跡のことを説明してる。

舞衣はその隣で、サポート役の感じで立っている。


地図はシアが遠征隊が遠征行く時、周りの環境が分かり易いように、聖術で作ったものらしい。

遺跡の居場所はもちろん、その周辺にある山の高さ、森の広さまでも記載されてる。


「廃都と似てる…じゃあ足場もぐちゃぐちゃってことか?」

「そういうことだ。だから廃都を特訓場所を選んだ。力を強くできる他に、似たような場所で戦闘体験できるから、イッセキニチョウってやつだな」

「へぇーそこまで考えたんだ?見直したゾ」


舞衣が時間差なく、ツッコミを入れた。


「うるせぇー」

「はは…でも、体験できたとしても、力の差は目に見えるだよな。そこはなんか対策あるのか」

「ない」

「ないっかい!」


舞衣が肘でライを突き、再びツッコミした。


「力の差はどうしようもない。ないだが、シアを助けるのが最優先事項だろう?」

「…そうか。無理に正面から戦う必要はないか」

「そうだ。この遺跡を見てくれ」


遺跡の構図は、丸い形で、真ん中に広場がある状態だ。北と南に山があり、東と西は人が歩く道になってる。


「遺跡の北と南は岩だらけで、歩くのが難しかったから、オレは遠征隊のみんなと一緒に、東と西に出入り口を作った。あのクソガキの性格で考えると、村への道と繋がる、東の入り口でオレたちを待つことはないと思う」

「「たしかに」」


俺と舞衣はあの少年の言動を思い出し、納得した。

自分が格上の存在を示すため、そして余裕を見せるために、きっとどっかに座って俺たちが来るのを待つだろう。


「そこで、だ。まずシアの居場所を確認する必要がある。あのガキと一緒にいれば問題ないが、もしいなかったら、ガキと戦いながらシアを探すハメになる」

「そうすると、助けるところか、シアを見つけないまま、俺たちが全滅の可能性がある、か」

「そうだ」

「無駄死にってこと?いやだな~」

「それがいやだったら、舞衣、オマエの目でしっかり確認してくれよな」

「分かってるわよ」

「目?君の目はいいのか?」


今までの戦いで、舞衣が遠方の敵を目で捉え、俺たちを支援してたことから、彼女は目がいい、ということはもう知ってる。

敢えてこのタイミングで話すってことはーー


「まあ、その気なれば、十キロ以上は見えるかな?この子のおかげだけどね」

舞衣は顔をアルテミスに寄せて、スリスリし始めた。

「十…!?」

「神具による身体能力の強化、人によって違うらしいんだ。普通の人より全般的に強くなる上に、さらに特定の能力が段違い強くなる。オレの場合は速度で、舞衣の場合は目だ」

「なるほど…俺は…」


特筆すべき能力は、今のところ感じたことはない。


「まあ、オレと舞衣も、戦闘の中で、突然気付いた。炎はまだ自覚してないだけ、かもしれないな」

「そうそう。だから落ち込むことはないよ」

「…ありがとう」


二人の慰めの言葉、嬉しいが、自分があまり役に立たないことは、何とも言い難い気持ちになる。


「話し戻すゾ。作戦はシンプルだ。まずシアの居場所を確認する。そこは遺跡に入る前に舞衣、オマエの目で確かめてくれ。その後、シアがいてもいなくても、オレたちより先に遺跡の南側に行って、オレと炎はすこし時間を置いてから遺跡に入って、時間を稼ぐ」

「了解!」

「シアがいない場合は、オレと炎でガキの注意を引き付ける。その隙でシアの所在を見つけてくれ。見つけた後すぐに戦闘に参加する。いいな?」

「オッケー」

「もう一つのパターン、シアがあのガキの隣居る場合、オレと舞衣でガキをけん制する。そして、炎、オマエが戦うフリをしながら、シアを助け出すんだ」

「…え?でもそれってライ、君が…」

「近距離で、一人であのガキを相手することになる。それは分かってる。しかし、あのガキはオレたち三人で倒せる敵じゃない」

「だったら…!」


俺が反論しようとした時、ライが大声で俺を制止した。


「だからだ!三人で倒せない敵に、正面から二人掛かっても勝てるはずがない。それなら一人をオトリにして、シアを救い出すのが一番いい方法だろう」

「それなら俺が…!」

「オマエ、戦闘経験オレより多いか?あのガキの戦い方が分からない状態で、臨機応変できるか?」

「そ、それは…」


ライが言ってることはごもっともだ。俺は目覚めて一ヶ月だけ、戦闘ところか、この世界のことすらもあまり知らない。そんな俺が、あの少年を止める?あの自称とはいえ、神の力を持つ存在を?


「大丈夫だよ。あたしがしっかり援助するから。それにライは別に死ぬつもりないでしょう?」

「…それはトウゼンだ。せっかく生き延びたんだ。簡単に死んでたまるか」

「ほらね。だから炎、あなたはシアを助けてあげて。それにさ、戦うフリと言っても、完全に手を抜くわけじゃないよ。そうするとバレるから」

「…そうか。分かった」


舞衣の言葉で、俺は落ち着いた。

俺の様子を見たライは、ため息をついてから話を続けた。


「長く話しだけど、多分、舞衣が別行動を取る時はすぐバレるだろう。それでも、ガキは何もしてこないと思う。そこが勝機だ。一秒でも早くシアを助け出せば、四対一になる」

「おお、勝ち筋が見えたね!」

「…ああ、絶対にシアを助け出そう!」



    ●



遺跡から二キロ離れたところに、俺たちは足を止め、舞衣が目を使って遺跡の周辺と中を観察した。


一分も経たない内に、

「…いた、シアは、あのガキの後ろにいる」

「!どんな状態だ!?」


俺は焦って舞衣に問い詰めた。


「ん…眠ってるかな。三日前、あたしたちの前から攫われた時と同じ感じだね」

「外傷はない?」とライが。

「ないね」

「そうか。少なくとも、本当に人質として扱ってるわけか。他になんかおかしいところは?」

「特にな…!?」


舞衣が話を言い切る前に、突然地面に座り込んだ。


「どうした!?」


俺は急なことに驚いて、舞衣の状態を確認した。


「あ、あのガキ…あたしを見て、笑った…悪魔のような、笑顔で…」

「な…本当か?」


舞衣は力なく首を縦に振り、体も震え出し、顔色が真っ青になった。


「…さっそく、バレたのか…」

ライは遺跡の方向を見つめ、冷や汗を流した。

「…どうするの?本当にあんな奴と戦うの?」

「…ああ、やろう。シアを助けるために!」

「「炎…」」

「ここまで来て、逃げようとしても、あいつは簡単に見逃してくれないだろう。もうやるしかない」

「…そうだな。じゃあ計画通り、舞衣が先に行ってくれ」

「…わかった。二人とも、無理しないでね」

「分かってるさ」


俺は安心させるように、笑ってみせた。

舞衣の心配な顔は変わらないが、俺に微笑みを返し、そのまま森に飛び込み、予定の場所に移動した。


「よし、オレたちも行くか!」

「おう!」



    ●



西の遺跡は、ライが言説明したように、北の廃都より少し小さいが、遺跡としては広いと言える。天井がないという点も理由の一つだろう。

そして、巨大の神像が遺跡全体に渡り、何柱も(たたず)んでいる。

しかも、そのどれも頭がない状態ーー頭以下の部分は埃あるが、キズはあまりない、まあまあ綺麗の状態だ。

頭だけが、まるで意図的に壊されたように見える。


「やあ、来てくれたね」


そのような不自然な環境の中、白髪の少年は、遺跡の北、岩山の上に両足を組んで、俺たちを見下ろしながら声をかけてきた。

その足元に、碧の鎖に四肢を縛られてるシアが、空を浮かんでる。

舞衣が言ったように、攫われた時と同じ状態だ。


「約束通り来たから、シアを放せ!」


俺は迷いなく、真っ先に要望を伝えた。が、


「約束?えーーボクを倒したら彼女を返す。という約束だったと、覚えてるけど?」

「くっ…」


その要望が通れるわけもなく、少年に嘲笑われるだけだった。


「ふふ、心配しなくても、ちゃんとボクを倒せたら、彼女を返すよ。もっとも、今のあなたたちじゃ、無理だけど。()()()でもね」

「なめやがって…!」


やはり、舞衣の事はバレてる。それでも余裕を見せてるってことは、舞衣の存在…いや、そもそも俺たちの存在は眼中なしか。


ライは事前に顕現させたグングニルを横斜めに構え、臨戦態勢に入った。

俺は右手で彼を止めて、少年に質問した。


「始める前に一つ聞きたい。お前の目的は俺だろう?何故関係ない人を巻き込む?」

「ふん~何を聞くと思えば、またそのこと?でもね、教えないー」

「ふざけるな!」

「おお、怖い怖い。そうだね…ボクを倒せたら、それも答えてやるよ。くひひ」

「炎、話すなんて無駄だ」

「…くそ!」


少年は岩山から飛び降り、俺たちの目の前に立った。


「さあ、戦いを始めようじゃないか!」


その言葉と共に、少年の体から黒と碧の霧ーーいや、密度が高い()()が吹き出し、遺跡の内部から外まで狂風を巻き起こした!


「ぐ…なんて力だ!」


俺とライは、防御態勢を取り、風で舞い上がってる岩を壊しつつ、攻撃のチャンスを窺ってる。

その時、

『る…聞こえる!?』

「この声…舞衣!?」


首にかけてる事前に用意した聖引石(せいいんせき)から、舞衣の声が響いた。


『あたしは先に仕掛けるから、二人はそれに合わせて!』

「…了解!」


俺はライの方を見た。ライも俺を見て、頷いた。

そして、


「このやろう…これでも食らえ!!!!!!!!!!」


森の中、舞衣がアルテミスの弦に源素の矢を形成させてた。風源素を示す緑の霧が、彼女の周りに集まり、やがて普通の矢より数倍大きい矢が形を取った。

舞衣はそれを少年目掛けて、迷いなく放った!

巨大の矢が、その大きさで速度落ちることなく、一瞬で少年が立ってる場所に着いた。

命中したーーと思った時、


ガンーーー!!!


矢が何かにぶつかり、激しい音を起こしながら、空に止められた。


居界(いかい)…!」


壁がーー碧の居界が、少年の周りを覆ってる。

自分も居界を使ったことあるから分かる。強い力による作られた居界は、簡単に破れない。


「まだまだ…!」


舞衣は放たれた矢に、空いてる左手を伸ばし、(ひら)いてる手を、握った。

その動きと同時に、矢が爆発した。

そして、激しい煙の中から、通常の大きさの矢が、空に舞い上がり、遺跡の上空に着いた途端、そのまま自由落下の勢いで、少年に再び仕掛けた!


「へぇ、二段()ちか?やるねー」


矢の雨ーー少年を逃がさないように、広く展開された無数の矢が、落ちる。

着地した矢が爆発を起こし、触れた物を壊していく。


その光景は、最初に村に着いた時、俺が見たあの爆撃の跡と同じ。


(これが、舞衣の本気…!)


強い。俺より断然強い。でも、あの少年は、矢の雨に打たれてもなお、()()()()


「舞衣のヤツ、無茶なやり方を…!炎、オレたちも行くぞ!」

「!ああ、分かった!」


ライがグングニルに(かみなり)源素を充電し、

俺は両手に火源素を燃やしながら、少年に向かって走り出した。


戦いは、始まる!

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