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再臨のラグナロク  作者: ちさん
一章 神の災涙
1/28

第1話 目覚め、そして天使と出会う

新作です。

今、考えた内容は、WLCよりちょっと長編になります。

でも更新スピードはたぶん遅いと思うので、

お待ちいただければ幸いです。


9/25 少し内容を修正しました。

「おいーー木材はここでいいか?」


紀神暦2年、人々が神々共に生きてる時代。

とある山と森に囲まれてる村で、十数名の人が一緒に生活している。その中に見た目が優男の若い男性が、森の中で樹を切り倒し、みんなが生活に必要な分の木材を大きい袋に詰めて、村に持ち帰ってきた。


「ええ、そこでいいですよ」


彼の質問に対し、外見的に男と年が近く、髪を腰まで伸ばしてる綺麗な少女が、優しく返事をした。

と、その瞬間。

「うっ…!?」

彼女が、胸を抑え、顔を歪ませた。


予想しなかった痛みが、彼女を襲ったからだ。


「おい、シア!大丈夫か!?」

青年はすぐに荷物を下ろし、彼女の所へ走った。

「は…はい、ライさん。私は、大丈夫、です…」

シアと呼ばれた少女は平気そうに言ってるが、顔は苦しいままだ。


「どうした?」

「…おかしな気配を、感じませんか?」

「そう言われれば…魔星族(ませいぞく)のヤツ?」

「…」

シアは何も言わず、ただ、ある遠い場所を見た。ライはその目線を辿り、理解した。


「まさか、アイツに何かあったのか?」

「…分かりません。ですが、この付近ではなく、向こうの森の中から不穏な気配を感じます。念のために…」

「分かった、じゃあ行こう」

「はい」

ライとシアは、躊躇せず村を出た。


村の周りは、全部が森。それもあまり整理整頓されてない、木の枝と雑草だらけだ。けもの道すらもない、原始林みたいな環境だ。

それを、二人は樹木の間を、障害物があるにも関わらず、飛ぶように走っていた。

「このままじゃ遅いですね…」


シアは焦った。理由は、先ほど感じた気配が、どんどん強くなったせいだ。

まるで()()に近づいているようにーー


「先に行っていいぞ!俺もすぐ着くからな!」

ライの言葉に、シアが頷いた。

「分かりました!では、お先に!」

シアは早いスピードのまま、さらに一歩前に踏み出し、()を目指して地面を力強く蹴って、森を越え、空へ跳んだ。


そしてそのまま背中に、


白い羽翼(うよく)を広げて、


3キロ外にある木造屋敷を目指して、飛んで行った。



    ●



「地球温暖化による厳冬と猛暑、人口爆発による資源枯渇と略奪、果てには無数の戦争ーーねえ、これは、まさに『世界の終わり(ラグナロク)』の再来と思わない?」


暗闇の空間に、少女の声が響き渡った。

周りは何も見えない。少女の姿も。だから声だけで判断した。

ふっと、何かが自分の顔を触った。感覚からすると、手だ。小さな手。多分それは、少女のもの。

優しく自分を撫でるその手と真っ逆で、彼女の声は、酷く冷たいものだった。


「ーーああ、失礼。あなたの世界は、既に滅んだのね」


その声が、悪意に満ちてるーーその言葉と共に、暗黒の世界は、自分を中心に、波紋が広がっていくように、()が現れ始めた。


暫くすると、目の前に、ある光景が映った。それは、


黒い霧を纏った、顔も形も分からない少女の姿と、


廃墟になった都市、炎に包まれた大地、止まない雨、轟く雷。そして、


地に転がんでる無数の死骸ーー


血に染まった赤い海ーー


一言でいうと、世界の終わりだ。


少女の言う通りだった。


それなのに、自分だけが生きてる。何故?


「その答えは、あなたの手にあるよ」


少女に言われて初めて、自分の両手は何かを抱いてることに気付いた。

目をそこにやると、女性だ。胸に大きな穴が開いてる、高校生の制服を着てる、少女の()だ。


そう断言できたのは、もう彼女の体に、温度を感じないからだ。


ただの物になり下がった、名前を知らない人ーーそれなのに、自分の心が、悲しみを感じた。

涙が、溢れてきた。


「うあああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

そして、天に向かって、とめどなく、叫んだ。

■■が死んだ。その事実を認識した瞬間、心が崩壊した。


「…いい、凄くいい…!あなたの悲鳴…!!もっと聞かせて…!!!!!」

少女が、俺の無様の姿を見て、興奮して顔が蕩けた。


「…と言いたいところだけど、そろそろ目を覚まさないと」

黒い霧が俺に近づき、顎を掴んで、無理矢理に俺の顔を上げた。その動きで、彼女の目を見ることできた。


赤い右目と金色の左目ーーオッドアイだ。


綺麗な目ーーと思ったが、その目に秘めた、破滅、狂気、それと暗い()()を感じ取った瞬間、()()()とか、褒めたい思いが全部吹っ飛んだ。


「世界が、本当に終わるよ?」

彼女の目に見惚れた自分が、彼女が話し終わると同時に、意識が朦朧しかけた。

「あは、あはは、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


思考が止まっる前に、少女の狂った笑い声だけが、脳に痛みを刻む、吐き気を催す、気持ち悪いぐらいに聞こえた。


まるで人を底が見えない深淵に誘うような、ぞっとする声がーー



    ●



「はっ…!?」


目が、覚めた。


「夢、か…」


夢にしては、鮮明過ぎる。

両手で抱えたあの少女の体温が、また残ってる。


体を起こし、周りを見渡した。木の部屋にいる。木で作られたいくつの家具が置かれている。

先ほど見た。あの破壊された世界の景色は、ここにはいない。

だからあれは夢だ。しかし、安心できる要素は、一つもない。


「何だ、ここは?」


見知らぬ部屋に、自分が寝ていた。

起きたら知らない場所とか、これ、睡眠薬を飲まされて誘拐された流れじゃね?

ベッドの横にちょうど窓があったため、そこから外を確認する。すると、


外は、果てしなく広い森だ。いや、もう樹海と呼んだ方がいいだろう。


そして山も、高く聳えている。


「え、富士樹海?」

そう疑ってるが、そもそも環境が違い過ぎる。


おかしいな植物、空を飛ぶ巨大の何か、窓越しに見えたのが、今までの記憶にないものばかりだ。

このまま見るだけでも埒が明かないと考え、俺はベッドから足を下ろし、立ち上がろうとした時。


「痛っ…!?」


体に激痛が走った。そしてその痛みのせいで、地面に顔をぶつけるように転んだ。

何故?

理由を探ろうとしたが、そもそもの問題に気づいた。


記憶が、ない。


いや、正確には、ある一定時期の記憶だけが消えたらしい。

自分の名前は、星野(ほしの) 竜炎(りゅうえん)。日本人。卒業を控えてた高校3年生。


そしてーーなかった。他の記憶が。


「記憶喪失…?はは、バカな」


それも都合よく名前とか、最低限の記憶が残ってる。


「ふざけんな…!」


体の痛みを歯を食いしばって、立ち上がった。そこから、部屋を出て、この建物が2階建てということが分かり、時間を掛けて1階に降りて、やっと外を出られた。


ヒューー


涼しい風が吹いてる。肺を浄化するような新鮮な空気。周りは先の部屋で確認した森と山がそのままで、そして巨大の牛みたいな生物が、ちょっと離れた場所に俺を見つめた。


「…はっ?巨大の牛?」


目の前に、牛ーーの形した四足歩行(よんそくほこう)の何かが、自分を見てる。涎を垂らしながら。


どうやら、餌を見つけたらしい。

「ガーーホォオオオオオオオ!!!!!!!」

「うわ!?」

牛(仮称)が、俺に咆哮した。


目測で高さ6メートル、身長20メートル超えてる牛ーーいや、もうバケモノだ。頭の両側に大きな角があり、体の表面も何か殺傷力が高そうな刺も生えてる。

遠吠えかーー牛は遠吠えしないよな。さすがに。だからあれはもう牛じゃないことは確定した。


「やばっ…!」

逃げないと!どう見ても勝てる相手じゃない!しかし、

「くっ!」

痛い。先の意味不明な痛みが、まだ消えてない。体を起こすのもやっとで、ましてや走るなんて、無理。


そしてそのことに気付いたのか、バケモノは俺に目掛けて突進を始めた。


あ、死ぬな、これ。


知らない場所で、得体の知れないバケモノに、無様に殺される。

(たぶん)人生初めて、夢から目覚めたことを、恨んだ。

そして神様、もし本当にいたら、せめて最後ぐらい奇跡を見せて欲しい。


(えん)ーーーーーーーー!!!!!!!!!!下がってーーーー!!!!!!!!」


馬鹿馬鹿しい願いを祈ったその時、空から若い女性の警告の声が響いた。

その声につられて、空を見上げた。

そこに、翼を持つ人影の存在が、上空から速いスピードで、墜落ーーいや、飛んできた…?


風を切る音と共に、その存在は、バケモノをターゲットとし、攻撃を仕掛けた。


「はああああああーーーーー!!!!!!!!!!」


気合の入った声と共に、振り落とされたーー


一閃ーー!


ガンーー!!


「ガァァァァァーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


バケモノが悲鳴を上げた。


地面を割った音と大量の砂塵(さじん)が飛び、バケモノの体に傷をつけ、その角も、あの一撃で切り離された。

その凄まじい攻撃を入れた存在ーー()()が、俺を守るように、バケモノの目の前に立ちはだかった。


「炎!大丈夫!?」

「あ、ああ…君は?」

「私は、アイニレシア。話は後で。まずはこのバケモノーー魔獣・ベヒーモスを退治します!」


アイニレシアと名乗った彼女は、真っ白な衣装を羽織り、太陽と同じ輝く金色の長い髪を風になびかせながら、自信満々に宣言した。


鍔に羽の飾りが付いてる、純白の長剣を片手で扱うその凛とした姿、そして何より背中に展開してる、大きな白い翼、俺は、彼女を多重の意味でーー


天使だ、と思った。

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