二人目のプロローグ
一応同じ世界です
新暦378年
とある国の暗い暗い研究所で、
肉塊、そう形容することしかできないモノが巨大な試験管の中に浮いていた。
たくさんの白衣をきた人間に囲まれ肉体を弄られ続ける、それがその肉塊の日常である。
肉塊には知識はあれど、自我はほとんど無いも同然であった。なぜならそんなものは必要とされていなかったから。
感覚はほとんど麻痺している、まともに受ければせっかく獲得した知識が飛びかねないからだ
逃げようと思うことは無い、試験管の外のことなど知りもしないし興味も湧かない。
その日もいつもと同じく肉体を弄られるだけだと思っていた。
自分が浮かぶ赤い試験管、そこに付けられた大量の配線、暗い実験室、何もかも昨日と変わらない、
ただひとつ、白衣の人間達が、倒れてピクリとも動かないことを除けば。
それでも肉塊に興味はなかった、白衣の人間に対して嫌悪の感情も湧かなければ憐憫の感情も無い。
そして一人の男が研究室に入ってきた、
「やあ、醜い姿の兵器さん、僕の親友を救うために君を助けに来たよ」と、
ずっとずっと止まっていた運命が動き出した、その瞬間である。
「さてさてまずは君を試験管の外に出さなきゃね」と、男は先端が曲がった杖を両手で構え・・肉塊には知る由もないがそれは長身の銃の構え方に酷似していた。
そして男が放った魔弾によってあっさりと肉塊は解放された
「いやあここを突き止めるのにも苦労すれば、侵入するのは更に一苦労、もう僕はヘトヘトですよお」
男は肉塊の知識に照らし合わせても、よく喋るという評価であった
「ところでその姿だと何かと不便でしょう、人っぽくなれないんですか?」
成程確かにこのままだと声帯も無いから喋れない上に、移動もままならない。
と、肉塊は思考して、グニャリと姿を変えた。
「っと危ない危ない女性でしたか、そこに転がってる研究員達から服を剥ぎ取って使ってくださいね」
そこにいたのは、茶髪で、星のような模様を宿した蒼眼の、どこまでも黒い黒い羽を生やした少女だった。
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「さて、あなたには僕の指示に従ってもらう、抵抗しないでもらえるとありがたいんだけどいいかな?」
「・・・・・・・・・うん」
と、どこか曖昧に少女はうなずいた。
「おー良かった断られたらどうやって説得しようかと、っていうか会話できたんですね」
と、少し皮肉を交えて男がいうと
「声帯は、作った・・それにあなたについていく以外に、何をすればわからないから・・・」
男は苦笑する、どうやらこの少女に皮肉は通じないようだ。
「こんな辛気臭いところで話すのもなんです、外に出ましょう」
と、男が胡散臭い声色で言うが少女は、それを意に介さずそれに従った
「星空が綺麗ですね」
と少女は無表情で言った。
「君はもう少し表情筋を動かしたほうがいいと思いますよ、愛想悪く見える。」
男が真顔で言った。
「そうだ、私の名前、プレアデスにしよう」
星の名前から付けた名前は、不思議と彼女によく合っていた。
「おー成程プレアデスですか、よく合ってるんじゃないですか。・・・おっとそういえ僕も名乗り忘れていましたね」
おとこはそこで言葉を区切るとどこか誇らしげに言った。
「僕の名前はディアブロ・ケテル、この王国セフィロトの13貴族の一つ、
ケテル当主にして魔王シヴァ・クリフォトの無二の親友だよ」
ちょっと投稿頻度落として質を上げようと思います