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20221105悪夢

作者: 紙紙狼

寝過ごした。

授業はとっくに終わっているどころか、既に夜の戸締りの時間になっていた。

物音に気がつき起き上がった私を見て巡回していた教員は驚いた。まさか生徒が残っているとは思わなかったのだろう。そして、私も驚いた。

教員の横には、太った裸の人間が皮膚をどろどろに爛れさせ四つん這いになっているような顔の潰れた怪物が首輪に繋がれていたのだ。

それを見た私は凍りついた。察した教員はにこりと笑い「これが見えるのかい?」と囁いた。

怪物が私と目を合わせようとした瞬間、私は教室を出て走り始めた。

何が起きてるのかわからない。でも怖い。恐怖を振り払うように必死に走った。

しかし、走っても走っても廊下は続く。違和感を覚えると同時に窓を開け、身を投げ出していた。

我ながら凄い判断力と行動力である──関心してる場合ではない。私がいたのは3階の教室だったはず、下手をしたら骨折して動けなくなってしまう。

幸いにも着地と同時に縦方向の力を横方向に受け流すことに成功し、ごろごろと数回転がったところで立ち上がれた。

全身が痛みを訴えているが息付く間もなく駐車場へ向かった。

いつも迎えに来てくれるはずの駐車場──そこに止まっていたのは見慣れない車だった。

私が走ってきたのに気がついたのか運転席から中年の男性が降りて近づいてきた。

「やあ、今日は君のパパに頼まれてね、パパは仕事が忙しいみたいだから私が迎えに来たんだよ」

...私にパパと呼べる存在はいないはず、人違いかと疑って声をかけようとした時、腕を掴まれた。「さあ、来なさい」

さっきまでの私とは比べ物にならないほど思考が回らず、叫ぼうとした声も掠れてしまった。「たす...けて...」

誰にも聞こえないような声だったが確かに1人に声は届いた。目の前の男に。

「助けて?おかしいことを言うね、私は君を迎えに来たんだよ。大丈夫かい?どこか具合が悪いのかい?」

にやりと笑い私の口を塞ごうとしてくる。

嫌だ──怖い──怖い怖い怖い怖い怖い

火事場の馬鹿力とでも言うのだろうか。恐怖心で思いっきり腕を振ると男の拘束から逃れることができた。

私は逃げた。後ろを振り向きもせず、自身の肺に遠慮をすることもなく、交差点で赤信号だろうとなりふり構わずに走った。

ようやく家に着き、慌てながら鍵を開け玄関に雪崩込む。

なんとか家に辿り着いたことに安堵して扉の鍵を閉め外の様子を窺っていると、暗い家の奥から声が聞こえた。

「おかえり〜今日は迎えに行けなくてごめんね?」

私は一人暮らし、誰かが家に遊びに来るような人間関係もない。

振り返ると、かつて母親だった何かが様子を見るように近づいてきた。

私はその場に崩れ落ち恐怖心に呑み込まれた。

「嫌だ!来ないで!消えて!」

何かは心配そうに私の頭を撫でてきた。

「どうしたの?何かあったの?大丈夫、私がついてるから大丈夫。怖くない、怖くない」

敵意の感じられない言葉に少し冷静さを取り戻しつつぼろぼろ零れる涙を拭う。

今更のように心臓が酸素を求めて暴れ始めた。

体の痛みに顔をしかめつつ何かに促されるままに明かりのついた自室に入る。

「よお、遅かったじゃねーか」「お前どこで道草食ってたんだよ」

見知らぬ同い歳くらいの男子二人組が寛いでいた。

「...誰?」

突然の出来事の連続に理解が追いつかない。既に頭は崩壊寸前だった。

「お前どこかで頭ぶつけてきたのか?試しに俺が殴ってやったら治るんじゃないか?」「おいやめとけって、こいつの親に目をつけられたら俺達消されちまうよ」

どうやらこの2人は悪友ということらしい。

消極的な男子の制止を聞かずにもう1人の男子は私を殴ってきた。

一度ではない、何度も何度も。

「ぎゃははは、お前を殴るのは愉しいなぁ!殴れば殴るほど心が満たされていく!」「お、おい、もうその辺で...」

私を殴っていた男子はギロリともう1人の男子を睨むと言った。

「お前も殴ってみろよ、殴れば分かるって、それともお前も殴られたい側なのか?」

消極的な男子に助けを乞おうとして顔を向け──殴られた。

「どうだ?いいだろう?」「あは、あははは、愉しい!これ凄く愉しいよ!」

安息の地はどこにもないと悟った瞬間、全てが崩れ落ちた。

思考も視界も足場も、世界の全てがブラックアウトした。

「──さい!───君起きなさい!」

はっと目を覚ました。いつもの教室。いつもの授業風景。

いつもの授業風景?

私は学校に通ったことがない。

それにさっきまで別のことが起きていた気がする。

でも思い出せない。怖い。

記憶はなくとも恐怖心は確かにある。

嫌だ、苦しい、ここは一体どこなのか。

学校ってなんだっけ、私は誰なんだっけ、謎の恐怖心に疑問を抱きつつも1日がリスタートする。

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