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目を開けるとそこには…
「おい!門の目の前に転移してくるとはいい度胸だな!」
私に槍を向ける鎧姿のおじさんと
「転移にて所属不明の人物が門に接近!至急応援を!」
なにやら水晶玉に手を当ててどこかに連絡を取っているらしいローブ姿のお兄さんがいた。
「あ、え?」
「しゃべるな!詠唱をする気だな?この距離ならすぐに喉を刺せる。無駄な抵抗は止めるんだ!」
どうやらしゃべらせてすらもらえないらしい。辺りの様子を確認しようにも、喉元に槍を月杖られている状態だ。普通に怖い。
「応援到着まであと3分です。拘束いけますか?」
何も言えない、動けないの状態でいると、どこかへ連絡を済ませたらしいローブ姿の男がこちらへ向かいながら両手を私に向けてくる。
「転移を使えるレベルの魔道士だ。拘束もいつまでもつか分からないが頼む!」
鎧姿のおじさんの一声と共に、ローブのお兄さんは私に向けた両手を光らせる。
次の瞬間、私の両腕は後ろ手で光の鎖に繋がれ、口元もひかり始めたと思うと急に口が動かなくなった。
急に後ろ手に腕が拘束された衝撃で私はバランスを崩して地面に倒れ込むが、鎧姿のおじさんは相変わらず喉元へ槍を突き付けている。こうなってしまうといよいよ何もできる事はないので、事態が進展するまでこのまま待つことしかできない。
「大丈夫か!」
なにやら渋い声が聞こえるが、倒れている角度からその声の主は確認できない。
「拘束は今のところ維持できています。今のうちに魔封じとスリープを。」
鎧姿のおじさんの声がそう答えると、死角から来た誰かが私の首に何かをはめ込む。その後私の意識は再び落ちて行った。
―――
――
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「スリープは問題なく効いたか…」
門の目の前に転移してくるなんて、どんな実力と自信を持った魔道士かと思ってみれば、殊の外あっさりとしとめる事が出来た。
「ガイ。状況を説明しろ」
先ほど駆けつけてくれた隊長が、俺にに状況説明を求める。見慣れぬ服を着た所属不明の魔道士が転移で門の目の前に現れた事、抵抗する隙を与えずに拘束した事などを簡潔に報告すると
「抵抗していないのか…戦闘音が聞こえないからおかしいとは思ったのだが…。こいつは本当に転移を使えるレベルの魔道士なのか?」
隊長の疑問は俺も感じていた事だ。だが、門の目の前に突然現れた事に変わりはない。門の目の間へへの転移は無条件で戦闘の意思があるとみなされるのは、魔道士なら知っているはずだ。
隊長の疑問に俺も考え込んでいると、
「まあいい。とりあえず魔封牢に入れておく。あと30分で門番のシフトは外れるだろう?そしたら体調室に来てくれ。楽しい取調べのお時間だ。
隊長の残業宣言にうなだれながら、俺は残りの時間を警戒を怠ることなく過ごした。