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多種族介護論  作者: ショコラソル
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プロローグ

私、藤沢善行(ふじさわよしゆき)は介護士である。

先ほどまで勤め先の看護小規模多機能居宅介護施設で夜勤業務に勤しんでいた。

この日は泊りの人数も少なく、昼夜逆転しているお年寄りもいなかったため、非常に快適な夜勤業務であった。


一時間に一回、居室を見て回る以外はスマホで動画を見ながらのんびりと朝を待っていたわけだが、不意に廊下の奥から「ガタッ」という物音を聞いた気がした。


気がしたというのも、夜勤をやっていると実際に聞こえている音なのか、気のせいなのか分からなくなる時がある。それでも起き出したお年寄りがいるかもしれないと、見ていた動画を一時停止し音がした方へ向かった。


私は寝ているお年寄りを起こさない様に内履きを脱ぎ、居室の扉を順に開けて行く。


今日の宿泊はたったの4人。静かにゆっくり動いているとはいえ、3分もあれば十分に居室の確認は終わる。


「気のせいか…」


小さくつぶやいたが、静かな施設内では思いのほか大きく聞こえた。そしてその声に反応するかのように、再び「ガタッ」という音が鳴り響いた。どうやら気のせいではなさそうだ。


音が聞こえた居室は、その日は利用されていないはずの部屋だ。もしも夜間でもあまり寝ない様な人が居れば、その人が入り込んだかもしれない。だが今日はそんな人はいないし、みんなそれぞれの布団で寝息を立てて休んでいたのは直前に確認済みだ。


こうなると、慣れた夜勤、慣れた施設と言えども何となく恐怖を覚える。数年前には施設を襲う凶悪犯罪も発生したばかりだ。


私は恐る恐るその居室の扉をノックしてみた。すると「ガタガタッ」と先ほどよりも大きな音が鳴り響く。どうやらいよいよ何かがこの奥にいるらしい。


鼓動が速くなり、開けて確認するべきか、何か武器を持ってくるべきか選択肢が頭に浮かぶ。


取りあえずと思い廊下の電気を点け、明るさを確保しながら業務用のスマホを取りに行こうと振り返った所


ガタンッ


扉を開け放つ音とともに後頭部に衝撃を受け、私の意識はこの世から消え去った。

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