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巻き込まれるご令嬢

前回のあらすじ

 ウィリアムくんは放課後までに敗北した理由を考えてください


 憎きウィリアムに完全勝利を収めたわたくし。素晴らしい午前の授業を終え、ペトラと共に食堂へ向かっている最中の出来事だった。


「ペトラ、わたくし少々お花を摘んで参りますわ」

「あらあら、いってらっしゃい」


 催したわたくしは生理的欲求を解消するため、女子トイレへ向かう。

 入り口で聞こえてきたのは人の声。ピーク時の混雑に『生徒会の目安箱に「トイレ増築を強く希望」と書こうかしら』と真剣に悩む。

 待てど暮らせど一向に出てくる気配がない。そろそろ欲求が危険域に突入しそうなわたくしは、ついに焦れて中を覗き込む。


 三つある個室のうち、使われているのは一つだけ。なにやら三人は一つの個室の前でたむろしている。

 どの個室も変わらない設備のはずなのに。


「ちょっと〜、出てきなさいよナードちゃ〜ん!」

「アタシ達と遊びましょ〜!」

「ギャハハハッ!」


 友達待ちかしら? 何もトイレの前で呼び掛けるなんて、よっぽど好きなのかしら。

 ううううっ、もう我慢の限界だわっ!


「呼び掛けならトイレの外からやってちょうだい!」


 わたくしは叫びながら一番左端のトイレへ駆け込む。なにやら三人が叫んだようだけど、生き物である以上はこの欲求には逆らえないわ。


「ふーっ、間一髪だったわ……」


 用事を済ませ、個室を出て洗面台で手を洗う。ついでに頭頂部の癖っ毛も直せないか一度試してみたけど、無駄な足掻きに終わる。

 ハンカチで濡れた手を拭っていると、個室の前にいた三人がぐるりとわたくしを取り囲む。


「あら、何か御用ですか?」

「『あら、何か御用ですか?』じゃないわよっ!」


 三人の中の一人、くるくるツインテールさんがいきなり叫んだ。

 突然のことにわたくしが目を丸くしていると、周りの二人もぎゃーぎゃーと騒ぎ始める。まるで動物園のような騒がしさだわ。


「あなた、生意気よ!」

「「そうよ、そうよ!」」


 言いがかりをつけられたわたくしは、三人のスカートに視線を落とす。


 この学園では学年ごとに四色のチェック柄を振り分けている。

 一年はダークレッド、二年はダークブラウン、三年はダークブルー、四年はダークグリーンなのだ。


 目の前にいる三人組はダークレッド、わたくしと同じ一年生。


「生意気も何も、トイレを使用しただけなんだけど」

「それが生意気だって言ってるのよっ!」

「えぇ〜?」


 普段ならお兄様の言いつけ通りなるべく丁寧に接するのだけど、なんだかこんな無礼で酷い人たちに敬語を使いたくない。

 トイレという公共の場で騒がないで欲しい。


「そもそも、貴女たちはなんなんですか。ここはトイレですよ、お友達を待つなら外で待つのがエチケットでしょう?」

「あんなやつ、友達じゃないわよっ!?」

「さっきまであんなに『遊びましょ〜!!』って誘ってたのに、いきなり否定するなんておかしいですよ……ハッ!?」


 さっきから掌くるっくるな同級生三人組の顔を見てわたくしはピンときた。


「なるほど、恥ずかしいのね。好きという気持ちが先走って暴走するのも分かるけれど、そんなに押していては相手が困惑するだけよ」


 悩める同級生にアドバイスを送る。わたくしのあまりに的確なアドバイスに三人は目を見開き、さらには個室から『えっ!?』と驚く声が響く。


「相手を思いやるのも、愛ですよ?」


 決まったわ……!!

 ほら、目の前のツインテールちゃんも肩をプルプルと震わせて感激しているわ。


「なに気色の悪いことを言ってるのよ!」


 ドンと肩を突き飛ばされ、わたくしはトイレの床に尻餅をつく。


「こんな奴と関わるだけ時間の無駄ですわ」

「あ、待ってくださいませアシュリー様ァッ!!」

「アンタ、二度とその顔をアシュリー様に見せるんじゃないわよっ!」


 ツインテールちゃんは髪とスカートをなびかせて颯爽と立ち去る。それを追いかける二人。


「一体なんだったのよ……?」


 清掃が行き届いたトイレの床は綺麗だから、服は汚れない。それでも打ちつけたお尻はひりひり痛む。


「そういえばペトラを待たせていたわ。早く戻らないと」


 立ち上がった時、扉が閉まっていた個室が開いて一人の少女が姿を現す。眼鏡をかけたおさげ髪の一年生だった。

 少女はわたくしの顔を見ると、小さくぺこりと頭を下げてトイレの外へ駆けていった。


 ペトラの元に戻ると、彼女は廊下の奥に消えていくおさげちゃんの背中を見ていた。


「トイレから四人も出てきたわ。混んでたの?」

「三人がお友達を待ちきれずにトイレにまで呼びに行っていたみたいなの。全く迷惑だったわ」

「……ふーん? その三人の中でツインテールの子がいなかった?」

「いたわね。いきなり突き飛ばしてきたからびっくりしたわ」


 ペトラがエメラルド色の瞳を細めて、何かを思案するように口を閉じる。


「その子がどうしたの?」

「最近そういう子が迷惑行為をしているって噂を聞いたの。なんでも、孤立している女の子を狙って寄ってたかって虐めるとか」

「まあ、それは酷い人ね!」

「名前はたしか、アシュリーだったかな……どこかの男爵家の一人娘らしいけど」


 トイレでツインテールちゃんがそんな名前で呼ばれていた事を思い出す。


「たしかそんな名前で呼ばれていたわ。ってことは、あのおさげちゃんは困っていたってこと!?」

「状況を聞く限り、そう解釈するのが正しいわね」

「まあ、なんてこと。わたくし、そんな事に気づかないでトンチンカンなアドバイスをしてしまったわ!」


 数分前のことを思い出したわたくしは頭を抱える。ドヤ顔でアドバイスしていた過去の自分を殴りたいわ……!


「それに、おさげちゃんを助けられなかったわ……!」

「謙虚なんだか天然なんだか分からないところが貴女らしいわね。次から気にかけてあげればいいんじゃないかしら」

「そうね、これからは気をつけるわ」


 いつまで落ち込んでいてもペトラに気を遣わせるだけ。助言に従って、わたくしは胸に『アシュリーには要注意』とメモをとっておく。


「ほら、キャロライナ。食堂に行きましょ」

「そうね。早く行かないと売り切れちゃうわ」


 今日は何を食べようかな、と考えながらわたくしはペトラと一緒に食堂へ向かった。

『キャロライナ落ち着けよ……!』と思った方は下部からそこそこいい具合に評価してください!なにかびびびっと来た人はなんか適当に感想を書いていただけると上手い具合に参考にしたり、いい感じにモチベーションに繋げます!

ちなみに、ぼくのIQは99999(いっぱい)!!

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