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ツンデレ演じるご令嬢

前回のあらすじ

 ウィリアムに贈り物がしたい……あ、そうだ!(天災的天啓)


 清々しいほどの晴天。小鳥が囀る朝、まさしく決戦と登校に相応しい舞台。

 わたくしは昨日作った軟膏と秘密兵器を片手に意気揚々と家を出る。

 すると聞こえてくるわ、自転車の走行音が!


「あら、ウィリアム。おはよう!」

「……はよ」


 ふっ、来たわね。今日もご丁寧に自転車を押しながら姿を現したわ!

 なんか分からないけど、目の下に隈が出来てるし、これは好都合ッ!


「お前は朝から元気だな。さすがお気楽キャロライナ……ふわあ」

「今だわっ!」

「ふぁっ!?」


 欠伸を隠そうとするウィリアムの片手を払い除け、無防備に開いた口に秘密兵器を放り込む。

 ぱちくりと瞬きをしたウィリアム。わたくしの秘密兵器の正体を呟く。


「……キャラメル?」


 テンプトン家秘伝のレシピで作ったキャラメル。その甘さは長年この国に愛されているロングセラー商品なのだ。


「ふふん、美味しいでしょう?」

「まあ、美味いけどさ。なんだよいきなり」


 むむ、少し驚いただけですぐに話しかけてきましたわ。

 ですが、これはまだ序の口。作戦の取っ掛かりに過ぎませんわ。


「そうそう、これは昨日作ったわたくし特製の軟膏。ほら、受け取りなさい。受け取るのよっ!!」


 ウィリアムの手に無理やり軟膏を握らせる。目を白黒させた彼が口を開くより早く、わたくしは叫ぶ。


「それ、あなたのためじゃないからっ!」

「────はあ!?」


 軟膏とわたくしの顔を見比べるウィリアム。そしてまた何かを言うよりも早く、わたくしはトドメの一言を放つ。


「ウィリアム、口に食べ物を入れたまま喋るのはマナー違反よ」

「あ゛?」


 キャラメルをもごもごと転がしながら凄むウィリアム。わたくしの素晴らしい計画に未だに気づかない様子だわ。


「ふふん、バッチリ成功したわ。さすが、わたくし。天才的なアイディア」


 昨夜、考えに考えたわたくしはついに閃いたの。

 ウィリアムとわたくしはライバル関係。馬鹿正直に渡してもそれを理由に断られるのは決まりきっていますの。

 ならば、どうするか?

 逆転の発想。

 つまりライバル関係を口実に断れないように渡せばいいのよ。


 ああ、わたくしってなんて頭が切れるのかしら……!


「キャロラ──」

「マナー違反」

「んぐっ、いやそれはお前が」

「マナー違反」


 ふふ、愚かなウィリアムは反論しようと足掻いているわ。愉快愉快、これまでの事を水に流してもいいぐらいの慌てっぷりね!


「ふふ、うふふふっ、今日はいい天気っ!」

「おい待てキャロライナ、さっきのはどういう意味で言ったんだ!?」


 我が宿命のライバル、キャラメルの甘さに負けず素早く飲み込んだわ。その意志の強さは伊達じゃない、ということねっ!

 でもね、()()()()()()()()()()()()。今の貴方は負け、チェスでいうところのチェックメイトだわ。

 だから、勝者のわたくしは自信満々に笑う!


「あら、どういう意味か解説して欲しいの? どうしてもっていうなら考えてあげなくもないけど?」

「えっ、でもこれ、お前んところの軟膏……」

「ほらほら、その頭で自分に置き換えてよぉく考えなさいな」


 ウィリアムの顔が段々と赤く染まる。短髪だから、表情がよく見えるわ。


「な、な、な……」

「あらあら、お顔が真っ赤ですわよ〜? お口に反してお顔は素直なご様子ね〜?」

「んぎゃー!!」


 ライバルであるわたくしに煽られるという屈辱。それに耐えかねたウィリアムは自転車を押しながら走り去ってしまった。


「わたくしの完勝ですわあっ!!」


 拳を天に掲げ、わたくしは晴れやかな気持ちで通学路を歩く。生まれて初めてライバルに勝利したのだ。

 もしわたくしが大人なら、今頃は勝利の美酒に酔いしれていたわね。でも今のわたくしは未成年なので勝利の美キャラメルに酔いしれますわ。あまあま。

周囲の通行人(なんだったんだ、今のやりとりは……?)

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