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小宵、わたくしが愛したのは────

作者名はやばいですけど、ラブコメです!!

「あらすじだけ企画」寄稿作を長編化してみました。


 わたくしは放課後で人気のない廊下を走る。

 腰まである長い茶髪の髪をなびかせて、ブレザーのスカートを揺らしながら足を動かす。


 向かう先は、あの人と再会を約束した庭園の噴水。

 プレゼントされたダイヤモンドリリーのブローチを握りしめながら、わたくしはこっそりと植木の影に隠れる。


『君との出会いを一夜限りで終わらせるのはあまりにも惜しい。はしたないと思われるかもしれないが、もし君も同じ気持ちならこのブローチを持って庭園の噴水に来てくれないか』


 思い出すのは仮面舞踏会で熱烈に愛を語ってくれた素晴らしい殿方。きっと、想像を絶する美しい方かもしれない。もしかしたら、可愛らしい顔立ちをしているかも。

 ああ、あの人なら、どんな容姿をしていても愛せる自信があるわ。


 植木の影からこっそりと噴水前のベンチを見る。

 そこにいたのは、なんと……


「なんでウィリアムがここに?」


 ベンチに腰掛け、己の手元にある何かを見ているのはウィリアム。茶髪の短めなツーブロックに日焼けした小麦色の肌、冷たい青の瞳、白シャツから筋肉質な腕が覗く。

 我がライバルながら、顔立ちが整っているから絵になるわね。


 人違いと結論を出して、その場を回れ右で撤退しようとした瞬間。耳に飛び込んできたのは彼の呟き。


「あの人は来るだろうか」


 ウィリアムが頰を染めて手元にあるものを熱っぽい目で見つめる。

 それは、わたくしが握りしめたダイヤモンドリリーのブローチ。再会を意味する花言葉があしらわれたものだ。


「まだかなあ」


 ウィリアムの声はわたくしの心を突き刺しては抉っていく。


「……もう、こんな時間か」


 ぱちんと彼が懐中時計の蓋を閉めて、ジャケットの内ポケットにしまった。

 気落ちした彼の声に、わたくしの胸が締め付けられる。


 叶うなら、この植木の影から飛び出して、手に持ったブローチを彼に見せたい。わたくしが仮面舞踏会で愛を語った相手なのですと叫べたらどんなに良いかしら。

 ああ、でもそれは許されないの!!


 貴方はウィリアム・ノーランド。

 ノーランド商会の一人息子にして、我が『テンプトン商会』宿命のライバル。

 わたくし、キャロライナはテンプトン商会の娘として振る舞わなくてはいけない。


 この恋は報われないの。

 ああ、わたくし張り裂けてしまいそう。


 わたくしは後ろ髪を引かれる思いで、そっとその場を立ち去り……


「なんだっ!?」

「っ!?」


 わたくしのおバカ!

 ついうっかり小枝を踏んでしまったわ。人気のない庭園に、小枝が折れる音はとてもよく響く。


「もしかして、来てくれたのか……?」


 ま、ま、ま、ま、ま、不味いわっ!!

 ここで正体がバレてしまったら、ウィリアムとの関係が余計に拗れちゃう!!

 かくなるうえは……!!


『にゃ〜』

「ひっ、猫ッ!?」


 ベンチから立ち上がって、こっちに近づいていたウィリアムの足がピタリと止まる。


「ね、猫か……はあぁ……ツいてないなあ、今日は」


 相変わらず、猫嫌いは克服できていないようね。思ったよりも作戦が上手くいったことにわたくしはほっと胸を撫で下ろす。

 ウィリアムは後退りをして、ベンチに戻って腰掛けた。すっかり日が暮れて、一番星が輝く空を見上げる。


「帰ろう……帰って課題を終わらせたら寝よう……そうしよう……」


 肩を落としたウィリアム。

 学園の外へ歩いて行くその背中を、わたくしはそっと見送る。

 わたくしは昨日の出来事を思い出していた。


 友人に誘われて参加した仮面舞踏会、それが全ての始まりだった。

『面白い!』『続きが気になる!』『コミックで読みたい!』と思った方は下部の星評価にいい感じの数の星をタッチしたり、ブクマをしていただけると出版社と殴り合えます!

感想・レビューをしていただけますとキャッキャします!!

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