真夏とラジオ⑥(下行きます)
助手 「なんでしょうか・・・この死体は・・・」
先生 「うむ」
某大学の研究施設へ運び込まれた変色している死体を見下ろす男女。死体は拘束具で括りつけられている。
先生 「ゾンビ映画のように、今にも動き出しそうだね」
助手 「やめてくださいよ。悪い冗談は」
先生 「フフフ。すまんすまん」
助手 「あれ?今、指先が動いたような・・・」
先生 「何をブツブツ言っているんだねキミは。しかしその皮膚の痣のようなものはなんだろうね」
死体の口元から鋭い牙が見えた。
助手 「せ、先生・・・」
死体の瞼が開き、目玉が青灰色の光を放っている。
助手 「先生!」
先生 「なんだね・・・」
振り返った先生は、笑みをうかべていた。
先生 「すばらしい!」
助手 「何言ってるんですか!逃げないと!」
死体は拘束具を凄まじい力で、ゆっくりと引き裂いた。
エレベーターへ向かう廊下に、2人の足音が不気味に響く。
先生 「エレベーターでさらに地下に行けば、地上への抜け道があるから。あわてなくて大丈夫だよ」
助手 「先生!早く!下行きます!早く!」
エレベーターの扉が閉まらないように、腕で開けたままにした状態で、私はひきつった顔に涙を流し先生を待っている。
助手 「先生!いいかげんにしてください!」
考え事を始めてなかなかエレベーターへ乗り込もうとしない先生。
助手 「先生!早く乗ってください!下行きますよ!」
先生は死体に噛まれた。
助手 「先生、私ね。死体来ますって言ったのに・・・」
私はエレベーターの扉を閉めた。
おしまい