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「ハア・・・ハアッ・・・カ、ハッ・・・」
炎を潜り抜け、僕はなんとか部屋の外まで出た。
急いでドアを閉め、漏れ出そうな火を完全にシャットアウトして、床に転がる。
荒れた息を整えつつ、廊下の冷えた空気と床をしばし堪能する。
ぐちゃぐちゃになった頭と体に一気に疲れが押し寄せ、このままここで何もかも投げ出して寝転がり続けたい衝動に駆られた。
廊下はシンと静まり返っている。
頭がどうにかなってしまいそうだった。
心が壊れかけていた。
ようやくこのマンションが何なのかを理解し始めていた。
このマンションは、僕に『害』を与えるんだ。
僕が何より大事にしている絆を壊そうとし、僕の人生を否定しようとする。
それは、とんでもない“害悪”だった。
・・・けれどまだ大丈夫だ。
かろうじて先へ進む気力が残っていた。
僕はアオイを連れ帰す。
どんなことをされたってアオイを求めている自分だけは信じていくんだ。
寝転がりながら上着のポケットを探る。が、そこに探し物がなかった。
あれ、と思い体を起こす。そのまま立ちあがりズボンのポケットを一つ一つ探る。
「・・・・・・次の部屋の鍵が無い」
服をもう一度入念に探ってもやはりどこにもない。
どういうことだ、と少しの焦りが生まれる。一害も、二害の場合もポケットに手を入れれば、そこに部屋の鍵がはいっていたのだが・・・。
ひょっとして三害は、もう――――ないのではないか。
僕は重い体を引きずりながら、廊下を階段がある方に進む。
暗い廊下を抜けると、登り階段がそこにあった。
「登り階段だ・・・」
ごくりと息を呑む。僕は夢中で登り始めた。しかし、一段一段慎重に。
ゆっくり。慎重に。
コツコツと階段を踏みしめる音だけが鳴る。
ゆっくり。一段一段、確かに。
コツコツ、コツコツ・・・・・・




