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顔はこちらを向いているが、空洞になった眼はどこを向いているか分からない。

きっと退屈そうに床でも見ているかもしれない。


「では―――話します。

 ・・・まず、あの日僕らの家族と、彼女の家族は一緒にピクニックに行く約束になっていたはずです。

 だから、朝から父さんの運転で隣の××県のミスミ高原に出かけました。しかし、その道中、確か高速道路に乗って三十分ほど経ったころ、僕たちの乗っている車は事故にあいました。原因は合流地帯から異常なスピードで入ってきた暴走車のせいです。それに衝突しました。僕らは、ハンドルを取られそのまま横転―――何回転もして、です。車は止まるや否や炎上しました。・・・・・・今でも覚えています。あの炎の熱、悲劇の光景を」


わずかに火傷が痛む気がした。

おばさんは少しだけ俯いて、父も今では少し落ち着いて僕の話を聞いている。


「しかし、車の中には生存者がいました。僕とアオイです。ぐちゃぐちゃにひしゃげた車の中で、炎が燃え盛り、息も出来ない状況で僕と彼女は奇跡的に生きていました。その時はもう夢中でした。死にそうになりながらも壊れた窓からガラスで身を裂きながらも僕とアオイはなんとか脱出しました。僕らは三列シートの一番後ろの席に座っていましたが、前の席は既に火に包まれていて、それで・・・・・・」

少し逡巡して、僕は言う。


「みんな火の中で死んでいました」


空気がピりつく。肌で感じる。おばさんは僕を見据え微動だにしない。

息を呑む。あの日の光景を思い出した。


「長い前置きでしたが後日談と言っても、僕とアオイは今日に至るまで、それぞれの家でお互い助け合いながら一人暮らしを続けている、くらいです。事件直後のことはあまり覚えていません。両親がいなくなった悲しみから入院先の病院でいつも泣いていたくらいです。

・・・あの日は多くを失った日でした」

そして一番大事な人間が誕生した日でもあった、心の中でそう付け加えた。


「以上です。どうでしたか?」



「――――――まるで、違うな」


突如、投げかけられたのはおばさんの声ではなかった。


父でも、もちろん僕でもない。


部屋にいる三人とも同時に、廊下に通じるリビングのドアを見る。


そこに立っていたのは、もう一人の焼死体―――――アオイの父親だった。



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