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「お願いします」


細々とした声だった。


「承りました」


そういうと、女は安堵したのか肩を落とす。

次第にその肩は震え、ボロボロと涙をこぼした。

しかし、その顔がいくら涙に濡れても、どれだけ懺悔の言葉を並べても、笑顔が消えることはなかった。

器用な女だ。いや、これも害された精神状態だからこそか。


「しかし本当にいいのかしら?深い仲なんでしょう」


「聞かないで。私たちの関係なんて・・・答えたくない」


「彼がここに来るまで待つのかしら?」


「・・・・・・いえ、もう帰るわ」

女は立ち上がってゆっくりと周りを見回した。その姿を見て察したように、

「出口はあっちの方。非常階段となっているわ。霧でここからは見えないけど、鍵は開いているから、さっさと帰りなさい」


濃い灰色の霧、その先を指さした。


「ありがとう。お世話になりました」


女は慇懃に深々と頭を下げた。


「やめてくれるかしら?私は別にあなたに何かしたつもりはないわ」


依然笑顔の女は何も言わず、もう一度頭を下げて霧が煙る方へ去っていった。


その姿を見送って、「あれだけ害されて一利もないとは、度し難いやつもいたものね」

誰に言うでもない言葉は、霧に巻かれて消えていった。




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