5.突然の来訪者
「誰だ!?」
その二人は灰色のローブを身に付けており、一目見ただけで分かる不気味な雰囲気を出していた。
「ソール、何?誰なのこの人達!?」
ソールの声に素早く反応し、同じく振り返るルナ。
「僕にも分からない。でも……」
(これだけは分かる……。多分、この人達、普通の人間じゃない!)
ソールは自らの中で直感をかみ砕く。しかしながら、それはただの直感などではなく、かつて対面した人物と何処か似た気配を、相手に感じたものからだった。
彼は毅然とした態度を取ろうとするが、自然とその表情は緊張で強張り、額には汗が出始めていた。彼の身体は本能的に目の前の相手に対して警戒態勢に入っていた。
「坊や、オレ達はキミに用があるんだ」
男の方が口を開いた。
「いや、正確にはキミが持っている『あるもの』に、だけどね」
(僕が持っている物……?まさか……)
心当たりがあるとしたら、それはもう一つしか思い当たる節がソールにはなかった。彼が意識せずに、その手はズボンのポケットへと寄せられていく。
「い、一体何を狙ってるんですか?それに、あなた達は誰なんですか?」
左腕でルナを自分の身体の後ろに庇うような態勢になりながら、ソールは尋ねる。その声は、微かに震えていた。いくら強気に振舞おうとしても、内に秘めた恐怖心は隠し切れずにいた。
「狙うだなんて人聞きが悪いなぁ。オレ達はただ、渡して欲しいのさ。キミが持っているであろう『時計』をね」
(……やっぱり、狙いはこれなのか)
自分の中である程度の想定をしていたため、ソールの中に驚きはなかった。だが、それがかえって相手の方に悟られたのか、
「ふむ。どうやら心当たりがあるようじゃないか。ならば話が早い。大人しくこちらに渡したまえ」
男はその腕をソールの方へと伸ばしながら、徐々ににじり寄り二人との距離を縮めて行く。すると、公園に立つ外灯で男の顔が見えた。男は赤い髪をしており、不敵な笑みを浮かべていた。
「安心して。大人しく渡してくれれば、危害は加えないわ」
今度は女の方が前に出ながら言い放つ。女の方は青い髪をしており、その顔は男の方とは異なり若干の憂いを感じさせる表情をしていた。
「ソール……」
ぐっ、とソールの腕を両手で掴むルナ。ソールの背に隠れた彼女のその手に込められた力は、不安からか強くなっていく。
(どうする?もし、素直にこれを渡したとして、本当に無事で済むのか?いや、そんな保障は何処にもない。そもそも、相手が何者かも分かっていないんだぞ。それに、今はルナを守らないと……)
あらゆる思考が、ソールの脳裏で蠢いていた。ヒリヒリとした空気の中、それらは中々定まらない。彼は視点をそれぞれの対象へと移すことで精一杯だった。
「……もし、渡さなかったら?」
ソールとて、提示されたそれは簡単に渡してもいいような物ではなかった。恐る恐る、相手に訊く。それに対し男は伸ばした腕を垂れ下げ、落胆する素振りを見せた。
「……そうか。残念ながら、実力行使といこうか」
一旦眼を瞑り、再びゆっくりと見開きながら宣告した。そして、
その手には、炎が灯されていた。
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