10.時計店にて
二人はケイトが営む時計店までやって来た。
「ごめんくださーい」
店に入ると、二人の見知った顔が彼らを出迎えた。それは椅子に腰かけた白髪の老人だった。
「いらっしゃーい。おぉ、ソル坊にルナちゃんか」
「こんにちは、ケイトさん」
ルナが元気よく返した。一方ソールは、
「……こんにちは」
「おや、ソル坊どうしたね?何かあったのかい」
ルナに反して元気のない声色に、ケイトが心配そうに訊いた。
「いや、大丈夫だよ」
「そうかい?ならいいんだけどね」
「それよりケイトさん!教えてほしいことがあるの」
ルナが声を高らかに尋ねようとする。
「おぉそうかい。いいとも。答えられることだったら、何でも教えてやるわい」
「これ、なんだけど……」
そう言ってソールがポケットから懐中時計を取り出して開いて見せた。
「それは?」
「見ての通り、懐中時計だよ。でも、何かあるらしいんだ」
「ほう、いわくつきってことかい」
ケイトは興味深そうに、ソールの持っている時計を見つめていた。
「ケイトさん。これに何があるのか、教えてほしいんだ」
「どれどれ、よく見せてごらん」
言われるがまま、ソールがケイトに時計を手渡す。
「ふむ……こりゃあ驚いた」
「なになに?やっぱり何かあるの?」
ルナが興味深々といった感じで訊く。
「見てごらん。ここに星の模様があるだろう?」
そう言いながら、ケイトは時計の蓋の部分を指し示す。
「うん……。それはずっと分かってたけど」
「こいつは『星紋』かもなぁ」
「セイモン……?」
「あぁ」
老人はおもむろに立ち上がり、語り始めた。
「昔、呪い師の知り合いが居ってな。そいつから聞いた話なんだが、何でも何処かで古くから伝わる、星の加護を物に宿す際に付けるもんだそうだ。『本物の呪い師』が付けるそれは、摩訶不思議な力が宿るんだ、とな。まぁ、ワシも本物は見たこたぁなかったんだがな」
「不思議な力……」
意味ありげにソールが呟いた。ルナも同様に、昨晩の出来事を思い出していた。
「ところでソル坊や、お前さんそいつを何処で手に入れたんだい?」
「ある人からもらったんだよ、昔ね」
「ほう……。こんな代物をなぁ。一体どんな奴からだい?」
「……昔、僕を助けてくれた人だよ」
「恩人ってやつかい。そりゃまた面白いね」
まるで少年のように目を輝かせてケイトはソールの話を聴いていた。
「ただそいつぁ、只者じゃねぇってこたぁ確かだねぇ」
「え?」
ルナが発した。
「言っただろう、『呪い師』だって。『呪い師』ってのは、ただ占いとかをするだけじゃねぇ。御伽噺に出てくるような魔法みてぇな力を使えるって話だ」
「……ねぇ、ソール。やっぱりソールの恩人って昨日の人達みたいな……」
「……」
ルナの当然の疑問に対して、ソールは沈黙した。
「他に知ってることってない?」
俯くソールに代わってルナが尋ねる。
「残念ながら、ワシが分かるのはこれくらいさね」
「そっか、ありがとう」
「そうだ、お前さん達。呪い師や星の加護に興味があるなら『王立図書館』にでも行ってみるといい。あそこなら数多くの本があるはずだからねぇ。時計に関する本とかもあるかもしれんぞ」
「そっか、その手があったね!ありがと!」
「あいよ、また来てね」
老人から有力な情報を聴き、二人は時計店を後にした。




