#二人の距離
チョロイン感ががががあ
チャーリーの家族という言葉への執着を感じて頂けたら幸いです。
charltteシャーロット
charlie チャーリー
スラムの朝は早いです。
日の出とともに始まります。
日の光がないと真っ暗で何もできませんしね。
スラムは危ないところと思われていますが、スラムに住んでいる人は悪い人ばかりではありません。
確かに裏の組織的な目のやばい人とか覚せい剤みたいな薬も横行しておりますが、その実難民キャンプの様相が近いです。
王都には人、と物が集まります。
そしたら仕事もあるだろうと思うわけです。
わらわら村から王都に来たところで、城壁内には入れず、星が頭に当たるような幸運でもなければ城壁の周りの平民街で生活することすらできないのです。
スラムのみんなは一日過ごすことに苦労して、おなか一杯になることを幸せと思います。
欲張りで強欲な面もありますがその点さえ、どろどろの前世に比べれば何倍もましに思えるのです。
それにしても彼女居眠りさんですね。
頬つんつんしてしまいましょうか?
ツンツン
がばぁ!!
わぉ、こけしみたいに跳ね起きました。
「っ、おはよう」
朝は声が出にくいですね。
跳ね起きた彼女はあたりを見渡して、いぶかしげな様子。
「・・・どうして何もしない」
「え?」
やめてください、僕コミュ障なんです。
寝ている子襲うなんて無理ですyo☆
「私は死ぃ、、、」
あ、一人称【私は】ですか、、、念のため変えてもらいましょう。
「あ、えっと、一人称、僕、に変えられますか?」
彼女はキィっと目をつり上げましたが、ここは譲れません。
彼女のためでもありますし、、、
「名前はなんていうの?」
「・・・ぷぃ」
ふーん,無視ですか。
「ぼくちゃん、自分の名前わからないんだ?」
「フィフス」
彼女の声は小さくて聞き取りずらかったですが、その声にはかすかな悲しさが混じっていました。
5番目というのが何を意味するか、そんなこと分かりませんがろくでもない数字に決まっています。
5番目の子供だから五郎丸的な何かでしょうか?
あぁ、五郎丸は苗字でしたね。
でも名前に愛着がなさそうなのは好都合です。
彼女に素敵な名前がないなら仕方ありません、僕が代わりに新しい名前を付けてあげましょう。
「シャーロットは、どうですか?あ、今日から僕の弟分ですからね!しっかり言うこと聞いてくださいよ。」
「何が?」
「あなたの名前です」
「私はぁ、、、」
「ここでは男の子のふりをしてください。一人称は僕です。あなたの名前はシャーロットです。
普段は男性名に近いチャーリーと呼ばせてもらいます。いいですか?」
「弟分は家族ですか?」
えぇ、、、今の流れでそこ気になります?
「そうですね、、、家族といえばそういえなくも、、、
あ、ファミリーです。」
「ファミリー?ファミリーはいつも一緒ですか?」
「そうですね。助け合うのです。いつもでもどこだって一緒です。どれだけ迷惑をかけてもいいのです。」
「僕は、チャーリー、で、兄様の名前は?」
「僕はヴィレーデ、ヴィレって呼ばれています。でも兄様はやめてください。ヴィレ兄貴はどうですか?」
「お兄ちゃん」
ううーん、まあいいでしょう。
できれば舎弟関係に周りの人には思ってほしかったのですけど
「わかりました。それでいきましょう。」
「チャーリーはお腹が空きましたか?
チャーリーのために果物をたくさん用意しておきましたよ!
これ全部食べていいのです。」
チャーリーは果物を見て、僕を見て、それから視線を落としました。
「お兄ちゃんも一緒に食べる。」
朝は食べないのですけどかわいい弟分のご使命です。
「一緒に食べましょうか。」
場所移って例の森です。
時刻は昼前といったところでしょうか?
起きたてで申し訳ないのですが、おいていき根城で一人にするものどうなのかと思うので、チャーリーにも一緒に森で働いてもらいましょう。
「さてチャーリー、新入りのあなたとてここでは仕事をしなえればなりません。
あなたには薬草摘みの任務を与えます。」
ここらへんで一番自生している薬草とその取り方を教えました。
薬草百本で硬い黒パンひとつの値段にしかなりませんが、お金はあればあるだけいいです。
頼りにしていますよ。チャーリー。
仕掛けた罠には小鹿がかかっていました。昨日と続いて幸運の神様に恵まれたようです。
かわいそうですが小鹿を絞めて、川まで運び石のナイフで皮をはぎ、血抜きをします。
チャーリーは存在感が薄いですね。
たまに一人でいる気分になります、、、いや、いつもか。
皮はちゃんと伸ばさないと縮んで交換してもらうとき価値がかなり下がります。
血抜きしないと腐りやすくなりますし、何より重くて運びづらいです。
「チャーリー、血抜きと皮が乾くまで薬草摘みをしましょう。
より多くの薬草を見つけた方を勝ちとします。
いいですか?」
僕らは川の近くで袋いっぱいに薬草を摘みました。
ちょうど自生していた、珍しい高価な薬草とかも教えてあげました。
なんかいいですね。
僕は母が死んでから一人でしたからこうして誰かと一緒に活動するのも楽しくて仕方ありません。
「チャーリー、日も暮れてきましたし、今日はそろそろ帰りましょうか。」
「うん。
お兄ちゃん機嫌がいいね。」
「そうですね、機嫌がとてもいいです。
今日は鹿が取れましたから。
鹿のお肉はおいしいですし、皮はいろいろなものに交換できるのです。
おかげでしばらく生活に余裕がでますよ。」
「、、、何か欲しいものはありますか?
せっかくファミリーになったのですし、その、、、
記念に何かと皮をこうかんしてもいいですよ?」
「髪の毛の色かえたい。」
ふむ、、、変なものを要求してきましたね。
幸運なことに頭髪用の染料なら鹿の皮と交換してくれると思います。
「わかりました。
では帰る途中に寄り道して交換してもらいましょう。」
帰り道も少ないですが、会話をしながら帰る何気ない時間がホントにたのしいです。
おもっている以上に一人でいることが精神的に来ていたのかもしれませんね。
らんらんルンルンで帰ってしまったので大事なことを忘れていました。
「よぉ、ヴィレそれ全部よこせや。」
最悪です。ダンに捕まりました。
ううーん、二日と空かずに同じことを繰り返すなんてなんて馬鹿なのでしょう。
「、、、そうですね、、、
ダンさん鹿の肉だけで勘弁して貰えませんか?」
「はぁ?聞こえなかったのかよ。
俺は全部よこせって言ったんだ。」
ダンは機嫌が悪くなると手を付けられなくなります。
力じゃ勝てませんし仕方ありません。
鹿の肉と皮はくれてやりましょう。
「わかればいいんだよ。」
ダンは僕とチャーリーに笑いかけながら続けて言いました。
「わざわざ森にまで行って貢物ご苦労さん、賤民。」
「あはは、、」
「、、、お兄ちゃん、鹿なくなっちゃったね。」
「うん。」
前々から楽しみにしていた約束が急になくなってしまった。
そんな喪失感を感じます。
今日一日が楽しかった分、
チャーリーと鹿を捕獲した時一緒に喜んだ分、
どこにでもある日常の一コマにどうしようもない苦しさを感じます
「ごめんね。チャーリー、しばらく染料はお預けだ。」
「べつにいいよ。そんなの。
それよりあれでよかったの?」
「、、、しかたないよ。
ダンは怠け者だけど、けんかはめっぽう強いし、力もすごくあるんだ
だから渡さなくてもぼこぼこにされて鹿は取られていただろし、
次からダンに見つからないように気を付けよう。」
「そうじゃなくて、お兄ちゃんはどうしたかったの?」
「どうした、も、こうした、も、ないよ。」
「むむうぬ、、、、
お兄ちゃんは鹿を手放したかったの?」
「そんなわけないよ。」
「わかった。」
チャーリーはダンを追い、駆け出した。
そしてダンをぶっ飛ばした。
それはもうアニメみたいに。
魔法の使える異世界にアニメもくそもないけど、、、
そのままダンを殴る。
「やめろ!」
僕が叫ぶとぴたりとチャーリーは殴るのをやめた。
「どうしてとめるの?」
「それ以上やったら死んでしまうよ、、、」
「それくらい加減する。
こいつをぼこぼこにしてやれば、鹿を渡す必要もないし、これからも安心じゃん。」
「いいからおいで。」
チャーリーはダンから離れる、その両手には鹿の肉と皮を持っている。
「もう人を殴ることなんてしちゃだめだよ。」
「どうして?」
「殴られるのは痛いでしょう?
やられて気分のいいものではないでしょう?
ひとにされていやなことを相手にしちゃいけないよ。
今までしてしまったものはしょうがないけど、
これからは人を傷つけちゃダメ。
約束できる?」
「ほめてほしくてやったのに、、、」
「僕のファミリーには人を傷つけてほしくない。
約束できる?」
「わかったよ。もう人を殴らない。」
「鹿を奪い返してくれてありがとう」
そういって僕はチャーリーの頭を撫でてやった。
「今日は疲れましたし、帰りましょうか。
交換は明日にしましょう。」
僕らは並んで根城に帰ります。
僕らの距離は出かける前より確実に近づきました。
チャンチャン