第四話
『サンフランシスコ行き六八便、搭乗を開始いたしました。』
様々なデザインの飛行機が利発着を繰り返すのを眺めながら僕は、カンボジアへ行くため成田空港の国際線ロビーで搭乗時間が来るのを待っていた。成田からカンボジアへの直行便が無いらしく、タイのバンコクを経由してアンコールワットのあるシェムリアップという都市を目指すことになった。
利発着を見るにも飽きてきたな------と思った時。
『バンコク行き八九便、搭乗を開始いたします。ご搭乗されるお客様、五番ゲートまでお急ぎください』とアナウンスが流れた。
パスポートとチケットを見せて、機内に乗り込んだ。自分の席をチケットのシートナンバーと見比べながら探し、荷物を棚に上げ、席に座った。
ワクワクする気持ちが溢れ出してくる。子どもの頃、父親に連れて行ってもらった遊園地でジェットコースターに初めて乗る時のような気持ち-------恐怖と好奇心が入り交じっている、けど好奇心を抑えることができない何とも形容しがたい、思わず表情に出てしまう。きっと隣に座っているどこかの国の人は、僕の表情を見て不思議に思っただろう。でもこの時の僕には、周りを気にする考えなどまったくといっていいほどなかった。
『本日はバンコク行き八九便にご搭乗頂き真にありがとうございます。当機は間もなく離陸にむけて滑走路へと進路をとります。皆様方、シートベルトを締め今しばらくお待ちください。』とアナウンスが機内に響く。
フライトアテンダントの言うとおり、飛行機は滑走路へ向かいゆっくりと、動き始めた。
『バンコク行き八九便、離陸いたします。』とアナウンスが流れた瞬間、エンジン音が翼を伝って僕の体に振動となって伝わってくる。重力のためか、体が座席に吸いつけられるような感覚がする。と同時に機体が浮き上がり僕はカンボジアへ向けての第一歩を離陸と言う形で踏み出したのだ。