10 のけ者にされたんだが
「うっ、つ…」
目覚めると、そこは黒い部屋だった。装飾品といったら、今目の前にあるどでかい鏡と、壁にあるアンティーク調の燭台くらい。燭台に灯っているのは銀色の炎だ。鏡に映る自分の姿はまだまだ幼かった。暇になったし、久し振りにステータスでも見ようかな?
NAME:ユキネ・ユウナギ
SPECIES:ハーフエルフ(狐獣人)
AGE:10
LEVEL:10
LUCK:∞(限界突破max)
JOB:村人Lv3 農家Lv3 狩人Lv3 巫女Lv8 魔法士見習いLv3
HP:102
MP:94
SKILL:アイテムボックス 鑑定 解体 神々の寵愛
また運気上がってるよ。限界突破maxってなんだ、あたしの運気はどこまで上を行くんだ。そして漸くHPが三桁来たあ!うん、虚しい。さっさとステータス回収したいなー。あとしれっと付け足されてる【神々の寵愛】ってなんだ?これ絶対に特殊スキルだよね。スキルポイントで取れてたら絶対見逃さないもん。明らかに厄介なスキルじゃん、うええ。
ちなみに、スキルポイントで取れたのは通常スキルと言われる、いわゆる努力次第で何とかなる部分だ。例えば魔族の種族固有魔法である混沌魔法は使えなくても、【混沌魔法学】のスキルは取れる。特殊スキルで分かりやすいのはやっぱり【勇者の資質】とか、【邪神の寵愛】とかだろう。【勇者の資質】は先天的にしか取れない、典型的な特殊スキルだ。【邪神の寵愛】は基本先天的スキルだが、よほど邪神の好感度が上がるようなことをすれば手に入る可能性もある。簡単にまとめると、自分の力だけではどうにもならないのが特殊スキルなのだ。
「む?」
どでかい鏡はどうやら魔道具だったようだ、ぼんやりと光って、何処かを映し出す。
「コル君と、アイナちゃんと、アリエントさんと、あたし。とりあえず皆居るか……」
「そうですね、バラバラにされてたらどうなっていたことか……」
「うん、確かにそれは怖いね」
「ホッとーしたしー」
ちょっと待て。色々どうなってるんだ。多分石板とか台座とか謎の声とかから推察するに、このダンジョンのコンセプトは信じることと疑うことだ。恐らく、徐々に仲間に対する疑念が生まれてきて、それでも信じられるかってところかな?
「とりあえず、前と後ろとどっちに進むかよね?アイナちゃんは探索者だし、アイナちゃんにまかせるわー」
「分かったしー」
そう言ってアイナは真っ直ぐ前に進む。そう、針山が見える方へ。
「え?やばくない?ていうかあそこにいるあたしは誰よ?」
いや、待て。ここで心を乱しては思うツボだろう。
傍観者のあたしには、仲間割れしたり、命の危機に立たされたりする仲間を信じられるか。
他の皆には、仲間を信じて、あたしの偽物を疑えるか。
多分、こんな感じだろう。ヤバいなー、ファンタジー脳のせいで直ぐに結論が……。
「ちょっと待ってください、アイナさん!」
「どうしたのさ、アリエント」
「急にどした、ロリコン?」
「そっち、何か光ってまあうよ!危ないですって絶対!」
「アリエントさんはー何を言ってるしー?光っているのはきっと魔鉱石だしー。第一ウチにはー、そんなの見えないしー」
「魔鉱石以外にも色々考えてくださいよ!魔物の目とか、トラップとか!」
「アリエントさん、考えすぎじゃないですか?魔物はまだしも、こんな浅いのにトラップなんて無いですよ」
「ユキネさん、でも……」
「もうウチは先にいくしー」
うわあ、早速か。こうして見ると、中々エグいなー。
「!ヒュー!」
「ワフウッ!」
これまで沈黙を守っていたコル君が叫ぶ。そして、ヒューが素早くアイナの眼前に回り込んだ。
「ひゃっ!脅かすなしー!」
「アリエント、ライトを飛ばしてくれるかい?」
「松明でいいじゃん」
「いいから!」
有無を言わさぬ迫力に、アリエントさんはタジタジになって、
「わ、分かりましたよっ!灯れ、ライト」
アリエントさんのライトがヒューの真後ろに飛び、照らされる針山。これ、気づけないってことは相当暗いんだろうね。
「うわあ、これは酷いな。コル君、ナイス判断」
「やっぱりトラップじゃないですかー!私言ったのにー!」
「う、煩いしー!」
これ精神的に結構ダメージ入るなー。皆無事で探索を終えたいところだ。