1 馬鹿女神に乗せられたあたし
隔週更新です。
「はああぁ…」
溜息しかでない。何だってこんな所で働かにゃならんのよ。
ここには、まだ何も無い。ダンボール箱だけが延々と積まれている。おびただしいそれらをたった一人で片付けろというのは、これはあれか。あたしに死ねというのか。
「こんなん過労死するわ!過労死して転生してまた過労死とか、マジで無いから!嫌だ嫌だ、もう帰りてえ。」
あの女神、今度会ったらぶん殴る。絶対にだ。うんそうだそうしよう。過労死でもいいから転生させなくてもいいのに…。あたしは、あの女神と出会った時のことを思い返した。
「夕凪 雪音さん、あなたはお亡くなりになりました」
「はあ」
「死因は過労によるストレスです」
「そうっすか」
「ちなみに、私は相談を司る女神、コンスルタと申します」
「不満を持ったまま死んじゃった人の愚痴とか聞くんですか?」
「人だけじゃないですよ。虐待された動物とか、親孝行したい天使とか、ドジしかしない部下の対処法が知りたい神とか」
「やっぱ多神なんすね」
「ええまあ」
こうして聞くと神の世界もあんま下界と変わんないのな。なんでも屋とかあるんかな?
「声にでてますよー。あとありますよー。私がやってる副業ですね」
「さすが相談の女神」
「てゆーか、疑問とかないんですかー?本来死者の担当は死神とか魂の女神とか転生の女神なんですけどー」
「いや知らねえよw」
神様の事情とか分かんねえから。普通。
「もしかして聞いてほしいんすか?なんで自分が担当なんか」
「平たく言えばそうですー」
「じゃあ聞きますけど、どのような目論見があるんで?」
「えーっとですねぇ。私の副業が思ったより需要が高くてですねぇ、だからそろそろ支店でも出そうかと思いましてー。雪音さんにはー、支店長をしてほしいんですよー」
「えー過労死した人にまだ働けっつーんですかー?」
「大丈夫ですよー。ブラックなのは最初だけで、はじまっちゃえば超ホワイトですからー。下界でやりますからここみたいにおっかない神様もいませんよー。それにー、下界は下界でも地球じゃなくてー、別の世界ですよー、異世界転生ですよー。すごいでしょー」
「じゃあ種族とか力とか選べるんすか?」
それなら獣人とかエルフとかで魔法使いがやりたいなー。なーんって。
「その辺は転生の女神と話して下さいなー。それでえ、やってくれます?」
「ええまあ。やりますとも」
そうして転生の女神様に説明を受けた。
私が転生するのは世界地図をそのまま世界にした感じの世界で、円い鏡みたいな様子。端はちゃんと透明な障壁が貼られているから落ちることはない。広さは地球の1.5倍くらいで、3つの大陸に人と獣人とエルフが散らばっている。小さな島々には鬼族とかそういった細々とした種族。そして海のしたにまた生活できる層があって、魔族が暮らしている。二階建てかよ。いや、どっちかというと一階建てで地階がくっついてるのか?どっちでもいっか。そしてやっぱり海には人魚族いるらしい。
「じゃあまず、種族を決めちゃいましょうか」
「魔法特化で」
「ならエルフ、ハーフエルフ、魔族、兎獣人、狐獣人のどれかですね」
「説明お願いします」
「エルフは長生きで成人したら外見の成長が止まる種族。線の細い人が多いから、美男美女だけどスタイルは微妙。ハーフエルフはエルフの半分くらい、二千年から三千年の寿命で、顔立ちは整っているけど体型はもう一つの血によるわ。普通の魔法よりは特殊な魔法を扱うことが得意。魔族は種族特有の魔法を使うけど、実力至上主義だからおすすめはしないわ。寿命は二百年くらい。兎獣人は体型的にはいわゆるモデル。身体能力が高くて、強化魔法が得意。狐獣人はやや小柄だけど威力の調整とかは一番得意。中には妖術を使うのもいるわ」
「なら狐獣人とのハーフエルフでお願いします」
「そういう発想の柔軟さ、嫌いじゃないわ。次は見た目を決めましょう。すぐに活動してほしいから、十歳から成人までの姿で」
「狐耳とか尻尾の色は金か銀。髪も合わせてください。尻尾は一本か九本かの二択で。あと大きさを変えられるようにして下さい。十歳くらいの姿で、人として平均的な体付きで。髪の長さはとりあえずセミロングで」
「初期装備はどうしますか?」
「上の下くらいで、ビジュアル重視で。似合うのにして下さい」
「武器どうしますかー?発動体をアクセサリーにすれば、杖を使う必要はなくなりますよ」
「大剣か双剣かハンマーで」
「じゃあ全部一応渡しときますね」
「ありがとうございます」
「ステータスはスキルと一緒に付けますけど、どのくらいにします?」
「HPとMP極振りで。あと素早さと体力も上げて」
「スキルは」
「お任せします」
「ならスキルポイントだけ自分で決めて下さいね」
これRPGのキャラ設定画面だったっけ?まあいいや。ルーレットを三回回すといいらしい。一、十、百、千があって、一万がめっちゃ狭い。あとはこれもう線だろレベルのところに任意設定がある。
「いっけー」
1回目、一。二回目、一。おかしいな、あたし結構リアルラック高いはずなんだが。
「まーいっか」
三回目。任意。おっ仕事したなリアルラックよ。
「任意なら無限大で」
「……」
転生の女神さまが燃え尽きていた。後でスキルは渡してくれるという遺言?に従って先に来たのだが。転生地が設定されていなかったわけで。つまりランダムスポーンである。そして辿り着いたのがのどかな小山だった。コンスルタが拠点を立てて荷物を突っ込んだ支店は外から見た一軒家ではなく立派なスーパーマーケットサイズだった。拠点の隣には神殿と我が家が建てられた。
そして今に至る。アイテムボックス(無限大用量)はあるけど、他のスキルは何ももらっていない。あたし、今十歳なんだが。発動体の指輪も装備もあるから戦える。でもスキルがないから魔法は初級しか使えないし、武器を扱う筋力がない。双剣の片方だけを両手でぷるぷるしながら振り回す。
当たれば倒せるから経験値は手に入る。まああくまでもご飯の調達だけど。見知らぬ野草を食べる勇気はまだない。野ウサギならまだ食べる勇気は出る。経験値は野生動物だけあって低いけど、魔物と戦えるステータスじゃないからな、今。そしてか弱い九尾の狐ハーフエルフに何が出来ると思っているんだ、あの女神は。あ、耳と尻尾は銀色だったよ、やったね。ハーフエルフ要素が獣人のせいで皆無だけど。見た目よか性能だ。そして十歳なのにもう胸と尻に若干の重み。
この世界ではステータスはこんな感じで表示されるらしい。
NAME:ユキネ・ユウナギ
SPECIES:ハーフエルフ(狐獣人)
AGE:10
LEVEL:10
LUCK:∞
JOB:村人Lv1
HP:37
MP:52
SKILL:アイテムボックス
筋力などの細かいことは出ないようだ。後、何だ運気無限大って。こえーよ。素でこれだぞ。
とりあえず、一刻も早くステータスが来るのを祈るしかないかな。