幕間 リリーと僕
こんにちは、リンです。今回は番外編っていう特別なお話なんだって。
何から話そうかなぁ。
んー、僕がこの国に来るまでの事を話そうかな。
実は、リリーと僕は兄妹なんだ。
誰にも言ってないから秘密だよ?知ってるのはシーくんとキミだけだからね。
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それで、えっとね、僕達この国に来る前は怖いママのお家に居たんだ。毎日僕のことを蹴ったり叩いたりしてきて、お友達も作らせてくれなかったし、お外で遊んだこともなかったんだ。リリーはね、そんなママから僕を守ってくれたんだ。
あの日は、ベランダに出されていて泣いてたんだ。真っ暗な夜に1人ぼっちで外に。僕は寒くて怖くて怪我もジクジク傷んで、お家に入れてほしかった。
それで暫く泣いてたらママが窓の傍までやって来てくれた。ああ、やっとお家に入れてくれる、そう思ってママを見上げたら何だか様子がおかしかった。
「あんたなんて、産まなければ……生きていなければっ!!」
そう言って僕を頭を掴んで無理矢理部屋の中に連れていった。
髪の毛が抜けて痛かった。ママが言っていることが怖かった。何も考えたくなくて両目を瞑ってた。
部屋のはじっこまで連れてこられるとパッと手を離された。ドスドス歩く音が聞こえて見てみたらママはキッチンで何か探してた。
ママはお料理ができないから普段はキッチンに近づかない。
珍しくて近くまで行ったらママと目があった。
「なんで来るのよ!!あっち行ってろ!この糞ガキ!!」
目を真っ赤にしてそう言ったママは、手に持っていたお鍋を僕に投げつけた。
頭に当たってガンガン痛かった。ぼーっとして尻もちをついちゃうくらい。そしたらお部屋もママも真っ赤になっちゃってビックリしておでこに触ったら血が出てた。
余計に痛くなった気がしてまた泣き出した。
ママが叫んでる言葉もよく聞こえなくて途中からお耳も痛くなり始めた。
「いい加減にしろっ!!」
今度は近くでママの声が聞こえた。
見てみたら包丁を持っていた。
振り上げているのが見えてグッと目を瞑り走ってお部屋の反対側まで逃げた。
そしたらリリーが来てくれたんだ。
「お兄ちゃん、大丈夫?私が助けてあげるよ。あんなママ、要らないよね」
最後の言葉がよく聞こえなかった。
けど、リリーが来てくれてすごく安心したんだ。最近ずっと寝ててなんにもお話してくれなかったから。
リリーは身体がないから僕の身体を貸した。したらママに向かって体当たりしたんだ。
「リリー、今のは僕もちょっと痛かったよ。」
「んん、次は気をつける。」
体当たりされたママはすごく怒って飛んでいっちゃった包丁を取らずにリリーの事を殴った。また僕も痛かった。
けどリリーはそんなことも気にしないで包丁を拾った。
「ママなんて要らない。大っ嫌い」
僕は、にっこり笑ったリリーにちょっとだけ見とれてた。
ザクッザクッ
ザシュッグチャッ
リリーは笑いながらママを刺した。
ザクザク刺されたママはすごく痛そうに叫んでた。
「いやぁぁーーーー!!!痛い痛い痛い痛い!やめて、やめて!リンーー!!!」
なんか、久しぶりに名前を呼ばれた気がする。ちょっと嬉しかった。
でも僕じゃなくてリリーが刺してるんだよ?僕はやってない。
暫くしたら、ママは動かなくなった。
血って変な匂いがして、身体がベタベタする。
「お兄ちゃん!私、ママをやっつけたよ!これでもう痛いことされないよ!」
「……うん、そうだね。ありがとうリリー。」
「えへへー、お兄ちゃん大好き。」
「僕もリリーが好きだよ、1番だ。」
ちょっと、鼻の奥がツンとした。
なんでだか分からなかったから気付かなかったことにしてるけどね。
「ねえ君、」
その時、急に声をかけられた。ママとリリーしか居ないのに男の子の声が聞こえたからびっくりした。
「僕?」
「そう、なんで1人でお話してるのかなーって。」
「1人?僕は妹とお喋りしてるよ?」
さりげなくリリーが身体を返してくれた。
「なんだって、そこに転がってるやつと君の2人だけじゃなかったのかい?」
「えっと、リリーは身体がないの。だからキミには見えてないかも。」
男の子がキョロキョロしてるから慌てて答えた。
「そっか、ごめんね。変なこと聞いちゃったね。」
「ううん、大丈夫。」
「……ねえ、その子なんて言うの?」
「リリー……だよ。」
何だか男の子の雰囲気が変わってちょっと怖くなった。
「へー、リリーちゃんって言うんだ。リリーちゃん、身体欲しい?」
この男の子、何言ってるんだろう。
不思議に思って首をかしげてたらリリーが代わりに出てきた。
「私に、身体……?」
「そう。だって2人で同じ身体を使ってるのは不便だろう?」
「不便……ではないけど。」
「まあ、なんでもいいや。リリーちゃんも自分の身体で名前も呼んでもらえる生活、送ってみたいでしょ?」
「身体があったら皆に名前、呼んでもらえるの?」
「うん。」
リリーは身体、ほしかったんだ……。
お兄ちゃんなのに全然気付かなかった。
「あげようか?リリーちゃんだけの身体。」
「ホント?!やったぁ!」
「ただし条件があるんだ。」
「条件……私、何もあげられない……」
「あはは、物が欲しいわけじゃないよ。最初に君にあげる身体はお人形だ」
最初にってどういう事だ?
「お人形?」
「そう、お人形だよ。でもお兄さんが死んだらリリーちゃんは人間の姿になれる」
「お兄ちゃんが死ぬまでお人形……」
「嫌ならお兄さんを殺せば良いんだよ?簡単じゃないか。」
「お兄ちゃんは殺さないもん。」
「別にそこはどうでもいいけど。どうするの?身体要る?要らない?」
「うぅ……。」
リリーがどっちを選んでも僕が生きている間には人間の姿のリリーを見ることはできない。でも、リリーがどっちを選んでも僕には後悔なんてなかった。
まあ、ちょっとだけあったかもしれないけどね。えへへ。
「……要る、欲しい。その条件でいい」
「そう?なら決まり。おめでとう、リリーちゃん」
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こんな感じだったかな。
その時会った男の子がシーくんなんだ。
でもリリーはもうお人形じゃないよ?今だって隣でお喋りしてるもん。 皆が見えない、聞こえないって言ってるだけできっとそれも冗談だよ。
それにしてもちょっと長くなっちゃったから疲れたなぁ。
僕、もう眠いからお昼寝してくるよ。
おやすみなさーい……。
特別な回なのでいつもより長くなってしまいました。一応8話までで1章として区切りなんで。
つか、この話すごく書きたかったんです。
リン「これで良いかなぁ?」
作者「グッジョブだよ、多分。」
リリー「私、ちゃんと喋ってる描写だー!」