第8話 岡本のこと
連載サボってすいませんでしたっ。
m(_ _)m
「……お前ら近すぎるんだよ。そんなにくっつかなくても逃げねえから少しくらい離れろ。」
岡本は悪態をつきながら子供たちと一緒に歩いていた。
「やだよ、離れたら逃げるに決まってる。」
「なんでそう言いきれるんだよ。」
「大人は嘘つきだから。」
……言い返せないのは何故だろう。
そもそも子供が集まったところで大人の力にかなう訳がないのだから逃げることだって出来る。しかし、それをしないのは岡本の人間性故か。
「着いたー。」
「疲れたよー。」
「お姉ちゃんとはぐれちゃった……。」
子供達が騒がしくなり顔を上げると目の前には小さな公園があった。近所によくある児童公園となんら変わりない普通の公園だ。
ブランコには、あの“シーくん”と呼ばれる少年が座っていた。子供達の内の1人が声をかけるとこちらを見た。
「あ、ちゃんと連れてこられたんだね。」
すごいすごーい、と少し小馬鹿にしたような言い方で、自分が言われた訳でもないのに岡本は少しムカッとした。
「じゃあ、おじさんのことどうしようか話合いをしようか。」
「はーい。」
「背の順いちれーつ。」
少年の言葉に子供達は動き出す。
決まった配置があるのか一人も迷うことなくあっという間に整列した。
「おじさんはここ。」
岡本は手を引かれ、砂場の真ん中に連れてこられた。
「なんで俺がこんなガキ共と……。」
相変わらず文句の絶えない岡本を見た子供達は、
「僕らがガキなんじゃなくてあの人が大人なだけなのになんで怒ってるんだろう?」
と不思議そうな顔をしている。
「よし、じゃあ話し合いを始めるよー。」
少年が話し合いを進めるようだ。
「まずおじさんに聞きたいことがある人ー。」
「はいはーい。」
「はーい。」
「僕が聞くー。」
「んー、そこの緑の帽子の子。」
「わーい、えっとねー。」
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一通り話し合いも終わり子供達が全員帰った後、公園には岡本と少年だけが残っていた。
「じゃあ岡本さんは、外で飛行機に乗ってた人でなんでか知らないけどこの国に来ちゃって、墜落しちゃったんだね?」
「ああそうだよ。」
「この国に子供しか居ねえ理由は分かったけどよ、こんな国どうやって作ったんだ?」
「……知らない。」
少年のあからさまな態度に岡本はため息をつく。
「んなこたどうでもいいけどよ、俺は帰りてえんだ。どうやったらここから出られるんだ?」
「一つだけ方法があるよ。」
「マジか、早く教えろよ。」
岡本が希望の眼差しで少年を見る。
「うん、その方法はこれだよ。」
そう言いながら懐から拳銃を取り出す。
「……は?」
「だから、ここから出たいなら死ぬしかないよ。それにこの国の存在が外に知られたら困るんだ。」
セーフティを解除し、岡本の頭に突きつける。
「そ、そんな待ってくれ。」
「やだ。」
「っ!そうだここは子供しか居ないんだろ?力仕事でもなんでもやるからよ、命だけは助けてくれっ。」
「えー、どうしよっかな。」
自分の命が子供に握られている、そう考えると岡本はひどく惨めな気持ちになった。が、ここで逆上なんてしたらそれこそ一巻の終わりだ。
ねぇ、と唐突に声をかけられる。
「な、なんだ?」
「岡本さん、絶対逃げない?」
「ああ、逃げないとも。」
「悪いことしない?言うこと聞いてくれる?」
「聞く、聞くから殺さないでくれ。」
「分かった、じゃあ殺さない。その代わりボクのお手伝いしてよ。」
「お前の、手伝い?」
「そう、1人で皆をまとめたりするのってすごく大変なんだ。」
皆には岡本は帰ったことにしとくからさ、そう言って少年はニッコリと微笑む。
「じゃあ決まりね。ボクの家に住むといいよ、ただし外には絶対出ないこと。分かった?」
「あ、ああ分かった。」
こうしてこの国唯一の大人として岡本は、少年の元で生活することになった。
岡本は、若者です。