第6話 飛行機
帰っては来たものの、2人の様子が何だかおかしい。
リリーは何かに怯えていてこっちを向いてくれないし、ミナはお兄ちゃん、お兄ちゃん、と呪文のように呟いている。
二人とも心ここに在らずだ。
(このまま座ってるだけだとつまんないなぁ。)
何があったのか分からないがとにかく暇になってしまった。夕方まで寝ていたから全然眠れそうにもないし、2人を置いて寝るほど野暮ではない。
「喉乾いたなぁ…、飲み物持ってこよっと。2人も飲むでしょう?」
「…。」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんが、お兄ちゃん…。」
相変わらず二人とも聞こえていないようだ。
仕方ないから3人分のジュースを取りに台所に来たが…
「リンゴジュースしかないからこれでいいかな。」
ミナは確かオレンジジュースが好きだった気がするけど、と暫し悩むも買いに行ける時間でもないので断念する。
そのままお盆に乗せ、コップやらお菓子やらを持って戻ろうとしたその時、ふと頭に思い浮かんだ。
「そうだ、おままごとしよう!」
そうも思ったが早いかお盆を持ったまま勢いよく走って2人の元へと戻る。
「ねえ、二人とも!おままごとしない?」
僕がお父さんでミナがお母さんね、リリーは赤ちゃん。そう言いながら2人を強引に参加させ、おままごとを始めたが。
「ただいまー。」
「…。」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん…。」
「…ねえ、ただいまってば。」
「…。」
「お兄ちゃんだー…お兄ちゃん、ふふふっ…。」
「もういいよ、やーめた。」
今の2人ではとことん相手にならない。この調子ではほかの遊びも満足に出来ないだろう。
さっきまで気にしてはいなかったが、お兄ちゃん、とはミナの家の隣のショウくんのことだろう。
ショウくんに何かあったのだろうか。リリーが怯えているのもその事かもしれない。
「ねえ、ミナ。お兄ちゃんって隣の…!」
“ドガーンッ”
ミナに尋ねようとした途端、大きな音が響きわたった。
「キャーーーッ!!」
「…。」
リリーもミナも叫び声をあげる。
「これ…地震?」
呆然と立ち尽くしていると外からも悲鳴が聞こえてくる。
「燃えてるぞー!誰かー!」
「キャーーー!〇〇くーーん!!嫌だよぉ、置いてかないで…。」
「うえぇーーーん…。」
外も阿鼻叫喚だ。この国で地震なんて起きたことがない。しかし、ここに来る前に体験した地震とは何かが違う気がする。
「ケホッケホッ。」
ミナがむせている。よく見るとこの部屋いや、この家全体に煙が充満しているようだった。さっき叫んでいた子はリンの家を見て言ったのだろうか。とにかく火の手が回らない内に逃げないと。
「ミナ!リリーも!ここから出よう。」
「…。」
「わがっだ。ゲホッ、ゴホッ。」
ミナが辛そうだ。
早く逃げないと倒れてしまう。
2人の手を引き、窓の方へ走る。視界が悪くつまづいてしまったが誰も転ばずに済んだ。
リビングに居たのが功を奏し、庭へと繋がる窓を勢いよく開け放って外へ出た。
大丈夫?と2人に声をかけると今度は2人ともこちらを見て返事をしてくれた。ふと落ち着いて周りを見てみると、
「なに、これ…。僕の庭が…。」
外に出ると庭は抉り取られ、家の屋根からは煙が上がり、隣の空き地には大きな穴が空いていた。
そこには、小さな飛行機だったであろう鉄の塊が転がっていた。羽や不思議な部品がいくつも転がっていて、
その中には人の姿があった。
よく見ると大人のようだ。背の高い男性が燃え盛るそれらをぼーっと眺めている。
「お、とな…が…。」
そう、大人だ。あれは、大人。この国に居るのは有り得ない。きっとあの飛行機と共に落ちてきたのだろう。パラシュートが下に落ちている。だがこの国の子供は皆、大人に酷い目に合わされたりした子達だ。見たらパニックになるに違いない。
「…やっつけてやる。」
今度こそ、守らない、と…!
石を拾って投げつける。どんどんと投げていくうちに1つ、当たったようだ。
「っつ!誰だ!」
バッ、とこちらを振り返る。
「なんだ、子供か。おい、ここはどこだ。」
なんでここの上空に入った途端機器が全部イカれちまったんだよっ、くそっ。と、大人は何を言っているのかよく分からないことをボヤいている。
大人がこっちに手を伸ばしてきた。
昔の記憶が戻ってくる…。嫌だ、来るな、やめてくれ…。
「あ、あぁ、うあ…。」
リンの意識が飛んだ。
「あ、おい!倒れ…!?」
大人、いや岡本が1人取り残される。
「くそっ!何だよこのガキ…。」
風に煽られ熱風が吹く。
火が強くなった気がした。
一方、ミナたちは____
「ここなら熱くないよ、リリー。」
「…。」
「…リリー、リンくん以外ともお話しできるようになるといいね。」
「…。」
リンの家の前の道路。
2人は座り込んでリンをひたすらに待っていた。
夜中投稿多くてごめんなさい。
m(*_ _)m
もう少しでPV300!