第3話 リリー
沢山の方に読んで頂きありがとうございます!
前回から少し空いてしまいましたがどんどん投稿はするつもりです。
m(_ _)m
“ピーンポーン”
インターフォンの鳴る音に目が覚める。
「んんー、誰だろう?」
リリーも起きてー、と“隣に眠っている”リリーの事を揺すぶる。
「おーい、リンくーん。」
外からリンと呼ばれた少年は玄関へと向かう。
少しだけ扉を開けて覗いてみると、そこには見知った顔が見えた。
「おはよー、ミナ。」
「おはよー?リンくん寝ぼすけさんだあ。」
寝ぼすけ?と聞くと
「もう夕方だよー…暗くなっちゃう。そしたら遊べない。」
「?暗くても遊べるよ?」
そう言うと、
「違うの。遊んでたら怖ーい人が来て、連れてかれちゃうんだって。」
と答えが返ってきた。
しかし、リン自体夜に遊んだこともあるし、そもそもここは子供の国だ。
そんな怖い人なんてどうせ居ない。居たとしても誰かのイタズラだろう。夢の国は夢の国だ。
「大丈夫だよ、ミナ。それに怖い人が来てもミナには…。」
と、言いかけた所で端と気付く。
「そう言えば、ミナの所の妖精さんは?いつも一緒なのに、今日は居ないね。」
「うん、なんかね。大人みたいな事言うから注意したら知らない男の子が来て、そしたら急に大人しくなったの。」
「へー、じゃあ今日はお留守番してるんだね。」
そうだよー、とミナは置いて来た妖精たちの姿を思い浮かべる。
「あ。」
「ん?どうしたの?リンくん。」
リンがしまった、というような表情を浮かべている。
「リリー、置いてきちゃったから怒ってる。」
「あーあ。」
連れてくるね!とリンは家の中に消えていった。
「…そう言えば隣のお兄ちゃん、ここから出ていくって言ってたな…。」
ミナの呟きは誰にも聞こえることは無かった。
「…リリー?ごめんね。」
リリーの所へ戻ってきたリンは申し訳なさそうに謝る。
「ミナが来てたんだ、今も外で待ってるよ。起こそうとしたんだけどリリー、中々起きてくれないんだもん。」
「…。」
「私じゃなくて枕を揺すぶってたって?ごめんってば。暗くてよく分からなかったんだよ。それに…。」
リリーと同じで綿がフワフワしてたから気づかなかったんだ、と続ける。
「…。」
「え?もちろんリリーの方がフワフワで温かいよ。」
そう、リリーはぬいぐるみだ。リンがこの国に来る前から連れていた彼の唯一心を許す親友。
彼はリリーの事をぬいぐるみだなんて思っていない。この国の皆もリリーはリリーだと思っている。しかし、リン以外はリリーの言葉を聞くことすら出来ないため、誰もリリーに自分から話しかける子は居ない。
「…。」
「許してくれるんだね!ありがとう!じゃあ、一緒にミナの所に行こう?」
「…。」
2人で玄関まで戻る。
「あ、来た。待ってたよー。」
「ごめんね、お待たせ。」
「…。」
リリーを連れたリンが戻ってきたのを見てミナは安堵する。
良かった戻ってきた、と。
リリーとリンは二人の世界に閉じこもることがあり、そうなると中々戻って来ない。ミナは1度、それで数時間待たされた事があるのだ。
「それにしても、怖い人が来るっていう噂誰が言い出したんだろうね。」
「ねー、バレちゃったら怒られそうだね。」
「ミナは誰から聞いたの?」
「んーと、隣のお兄ちゃんだよ!そんな事より遊ぼ?」
「…。」
「そうだね、何しよっか!」
日は暮れ、星が瞬く空の下。
子供たちは元気に公園へと繰り出して行った。
「隣のお兄ちゃん、ね。」
どこからか少年の声がした。
リリーは何のぬいぐるみか?
聞かれるまで答えません←