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第2話.神に許されし唯一の剣

「んふふふ……」


「…………」


「んふふふ……」


「…………」


 食堂の隅のテーブルで一人食事をとる少年。


 でも彼は全く食事の味を感じることができなかった。先程から目の前で頬杖を突きながら自分の方を眺めている見ず知らずの少女が原因なのは言うまでもない。


「な、何かな?」


 少年は堪らず少女に声を掛ける。


「君が主人公かなぁ? 主人公なのかなぁ? んふふふ……」


 だが少年にはその少女、時緒の言うことが全く理解できない。不可解さは余計に増すばかりだ。


「僕はリウ。リウ・オーレア・アガウェ・セ・カール・アテナータ・ホート・アニム・ソフレレェト。君は? もしかして僕と同じ新入生かな?」


「わたしはタイム。それよりさぁ、その剣って魔剣なの?」


 自己紹介も早々に時緒はリウの傍らの剣に目配せした。


「ああこれ? そう、良く知ってるね」


 リウは見るからに並々ならぬ重量がありそうなそのひと振りをひょいと片手で持ち上げて時緒に示した。近くで見るとその剣の仰々しさが際立ってわかる。リウはそれを軽々と持ち上げてみせたが、仮に切れ味が悪くとも鈍器として十分武器の役割を果たせそうな見た目をしていた。


「これはトレランス・ブレード。僕の家に代々伝わる僕の家系の血筋にしか扱えない特別な剣さ。今はこんな形だけど、中に魔術を駆使した特殊な機工が組まれていて361の武器に形を変えるんだ。99の人の武器、129の聖なる剣、129の魔の剣、4の神器。形だけじゃなく、聖剣や魔剣、神器に形を変えた時、神話や魔界の世界の武器の性質を忠実に再現できるんだよ」


「はうあっ!!」


 時緒の眉間を魅惑という名の見えない何かが撃ち抜く。


神に許されし唯一の剣(トレランス・ブレード)…………だと……?」


「あれ? 合ってるよね。合ってるのに何となく違う気がするのは気のせいかな?」


 リウは時緒の反応にたじろぐ。


「本当は凄い剣なんだけど、でも、僕にはまだ使えこなせないんだよね。今はせいぜいいくつかの人の武器に形を変えられるくらいが限界なんだ」


「すごーい!」


 だが時緒にはその謙遜の意が全く伝わっていない様子だ。


「う、うん。ありがとう。一応はこの剣のお陰で入学できたんだしね。僕、一応貴族の出なんだけど、魔術師としては三流の家系で、この剣があるから辛うじて入学資格が得られたんだ。僕自身には何の才能も無いし、入学時の試験だって酷いものだったよ。ホント、僕みたいな劣等生が入学して皆に申し訳ないよね……」


「劣等生! 気弱! でも実は名家出身! そんでもって自分にしか扱えないチート武器! おっけぇ合格、合格だよ君ぃ。かなり良い逸材だよぉ」


「え? 何が?」


 自信を自嘲する言葉も全く意に介さない。口にする言葉は不可解だが、時緒のその異様なテンションにリウは面を食らってしまう。


「ところでチートって何?」


「すっごく強いって意味だよ! 本来の意味はズルって意味らしいけど、全然悪い意味じゃないよ!」


「ズルか……、なら僕にピッタリだね、その『チート』って言葉。だって試験を潜り抜けて合格した人や、僕なんかと違ってちゃんと才能あって入学した人からしたらズルって言われて当然だし…………」


「いいねぇ……いいよぉ……。その畳み掛けるような卑屈っぷり! そういう方が後々主人公として活躍した時、断然カッコ良いんだよぉ」


 卑屈になれば成程、この少女は自身に関心を寄せる。その不条理とも思える現象に、リウはもうわけがわからなかった。


「ねぇねぇ今どんな気持ち? そんなチートみたいな能力があって、入学早々女の子に出会って、ねぇねぇ、何かが始まりそうな気分?」


「え……、な、何かな……?」


「あーでもわたしはヒロインって感じじゃないしなぁ。どちらかというと傍から眺めてたい派だしなぁ……うーん……」


 終始会話が成立していない気がするが、時緒のその気圧さんばかりの活気に、自身ばかりが卑屈になっていることが酷く馬鹿馬鹿しく思えた。


「ふふっ」


 不意に笑みが毀れる。


「ふはははは!」


「ん?」


 反対に今度は時緒の方が心底わからないといった面持ちで小首を傾げた。


「いや、ごめんごめん。えっと……タイム、だっけ? 何だかよくわからないけど、ありがとう」

本物語は現在執筆中の「石川メアの異世界召喚術式作成法」のif物語になります。

現実世界での三条時緒については是非下記物語をお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n9008ei/

まだ未完結ですが、並行して執筆していきます。

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