11 恨むように煽ったのは私ですが
とりあえずはとってもかわいそうな方を助けに行きましょうか。
その方とは公国の伯爵子息であるノートリアスさんです。
彼の婚約者であるセレステさんは魔導士として勇者パーティに入った結果、魅了されて取られてしまいました。
魅了の事を知らないノートリアスさんからすれば婚約者の突然の裏切りに大変ショックを受けてしまいました。
しかも、一度会った際にそれはそれはひどいことを言われてしまいました。
結果、ノートリアスさんは精神的に病んでしまいました。
まあ、それほどセレステさんの事を愛していたということですね。
だからこそ今まさに自殺しようとしているのですが。
「セレステ、なんで。僕はもう」
「もう生きている意味がないのですか?」
いけませんね自殺なんて。
ここは一人の人間としてなんとしてでも説得しなければなりません。
「あなたは」
「私のことなどどうでもいいのです。何故死のうとしているのですか?」
「......あなたには関係のない事でしょう」
「そうですね。ですが、本当に死ぬほどのことなのでしょうか?」
そう言うとノートリアスさんの目がカッと開く。
「あなたに! 何が分かる!」
「ええ、わかりますよ」
そうです。
私にはわかるのです。
「あなたが死のうとしている理由もわかります。だからこそ聞きます。セレステさんが勇者さんに洗脳されていてもあなたは死にますか?」
はい、終わりです。
死のうとしているなら生きる希望を与えてやればいいのです。
ノートリアスさんの場合セレステさんを取り戻せる可能性を聞けば必ず生きる意味を見出します。
そして、少し誘導すれば勇者さんを恨んでくれます。
とっても恨んでくれます。
セレステさんを取り戻すことができ、勇者さんに復讐する事が出来るプランを提示してあげれば簡単に乗ってくれました。
人って、愛する人のためと復讐のためならとっても力が出るんですよ。
きっと私の強力な手駒になってくれるでしょうね。
ふふふ。
さて、お次は勇者さんのハーレムメンバーですね。
ハーレムメンバーさんたちはそれはそれは勇者さんが大好きです。
勇者さんに出会うために生まれてきたと信じています。
しかし、それは魅了のせいです。
そして魅了は対処が実に簡単です。
解呪が得意な手駒を一人連れて行けば十分です。
という事でハーレムメンバーが一人の時を狙って近づきます。
最初はセレステさんですね。
「こんにちは。あなたを救って差し上げましょう」
そして、魅了の効果を解きます。
「あれ? アタシ、なんで? 違う、アタシ、アイツと、ノートリアスじゃない」
セレステさんは頭を抱えてうつろな目をしています。
「なんでなんでなんでなんで、ちがうちがうちがう。あ、ああ、あ、い、イヤァァァァァァァァァl!!」
おっと危ないですね。
まあ、仕方ありませんね。
魅了は解いても記憶は残ります。
愛している人がいるのに愛してもいない人と嬉しそうに交わった記憶は残ります。
そう、身に覚えはあるのです。
だけど信じられないのです。
セレステさんが愛しているのはノートリアスさんです。
なのにノートリアスさんをひどく拒絶して勇者さんを愛した。
そのことはしっかりと覚えています。
だからこそ発狂しそうになっているのですね。
魅了を解く前に人気のないところに転移して正解ですね。
しばらく暴れてたセレステさんは次第に落ち着きを見せ始め、目が虚ろで体は震え、爪を噛みながらぶつぶつと言っているという安全な状態になりました。
「セレステさん」
まあ、私が呼びかけても何の反応も見せませんが。
しかし、こんなのでも重要なことは意外と聞いているものです。
「勇者さんが憎くありませんか?」
そう言うと、セレステさんの震えがぴたりと止まります。
「あなたがこうなったのは勇者さんがあなたを洗脳したからです。だから、これは仕方のない事です。きっとノートリアスさんもセレステさんの事を許してくれます」
ノートリアスさんという希望を与えながら勇者さんへの憎悪を極限まで引き伸ばします。
意外と人間ってなんでもやるものですよ。
愛する人のためや復讐のためならば。
「さあ、ノートリアスさんと共に歩く未来を掴みましょう。その代わり私のお願いを聞いてくださいね」
そう言って手を差し伸べます。
これから一緒に頑張りましょうね。
ふふふ。
ー▽ー
そして、数日後。
勇者さんは魔王と戦っています。
今代の魔王はあまり強くはないのですが、魔王は魔王。
いい感じに勇者さんたちも苦戦をしています。
しかし、さすがは勇者。
苦戦するものの何とか魔王を倒すことができました。
「やったぞ。魔王を倒した!!」
勇者さんは勝利の雄たけびをあげます。
そうですよね。
魔王を倒した勇者は幸せに暮らすのですから。
勇者さんも、これからハーレムメンバーと共に幸せに暮らせるのですから。
大公さんの娘とも婚約していますし、将来的には自身が大公になるのも夢ではありません。
まさにこれから夢のような生活が待っているわけですね。
「え?」
まあ、そんな未来は訪れませんが。
勇者さんはハーレムメンバー全員から刺されました。
それだけではございません。
ノートリアスさんや他の勇者さんを恨んでいる人たちが突然現れて勇者さんをなぶります。
魔王を倒して疲れていた勇者さんにこれを逃れる術はありません。
しかし、なまじ勇者として頑丈なのでなかなか死ぬことも出来ないようです。
突然の裏切りと誰とも知らない人から本気の憎悪を向けられ、殴られ、蹴られ、刺される勇者さんは恐怖を味わいながら苦痛の果てに死にました。
死してなおもなぶられています。
あーあ、もう原型がないじゃないですか。
これはR18ですよ。
恨みは怖いですね。
私のせい?
そんなことありませんよ。
勇者さんの自業自得です。
私がしたのは、タイミングを見計らってから彼らに勇者さんを恨むように誘導しただけです。
ハーレムメンバーは魅了を解いて勇者さんに対する憎悪を植え付けてから魔王を倒した直後に復讐するように。
その他の方には勇者さんを殺した際の希望と憎悪を植え付けてから同じように。
そして、彼らを転移させてあげただけです。
結果、ハーレムメンバーは勇者さんへの憎悪をひた隠し、今まで通りに演じ続けました。
その他の方はひたすら刃を砥ぎ続けました。
すべては最後の瞬間のために。
これで彼らにとってのハッピーエンドが完成です。
ハッピーエンドに導いた私を彼らはとっても感謝してくれています。
さて、ここからは女王としてのお仕事ですね。
彼らを味方につけ、公国に侵略します。
彼らは権力的に高位の人たちが多いですからね。
勇者さんもいませんし。
こちらにはヤンホモさんがいますから簡単なお仕事でした。
こんなに簡単なのも勇者さんのおかげですね。
勇者さんがハーレムなんて築いてくれたから、彼らを味方にすることができました。
なんせ、放置しているだけで勝手に有能な方々が追い詰められていましたからね。
追い詰められた人ほど味方にするのは簡単です。
ちょっと手助けするだけですごく感謝してくれますからね。
本当に勇者さんには感謝です。
ふふふ。
続きは明日です。気分が乗れば幕間書くかも




