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ナナイロシチヘンゲ  作者: タイヘイタ
1章:生存権の確保
5/23


黒い靄はすぐに消えた。良かった。誰かの攻撃を受けたのかと思ったけど、そうではないらしい。どこも痛む所はない。


ちょっとさっきよりも地面が近い気がするけど。そんでもって視界にモフモフな足が見えるけど。


…ちょっと待て。待てマテまて。え!?なにコレ。どういう状況!?俺、犬になってる!?いや、この毛色は目の前の狼に似てるから狼か…


って、そんな事はどうでもいい。重要な事じゃない。さっきの靄か!?靄のせいで狼になったのか!?戻して。戻してくれ!!


《要請を確認しました。変化を解除します》


またも声がして黒い靄が纏わりついて来た。言葉を信じるならこの靄が晴れた時には人に戻れているのだろう。


簡単に信じてもいいのか。そんな気持ちはあるが、俺の姿を簡単に変えられる相手にどうやっても敵う気がしない。それならば信じるしかない。


黒い靄が消えた。視界はいつもの高さに。手足はいつもの形に。どうやらちゃんと人に戻れたようだ。良かった、よかった。


2回の変化を経験して分かった事がある。変化は誰かの攻撃という訳ではないようだ。さっきもそうだったが、俺が望んだ直後に変化が起こっている。


敵がわざわざ俺の思考を読んで行動しているとは考えにくい。もしかして、コレって俺の力か?異世界特典みたいな。


おかしいと思ったんだよ。こんな何もない森の中に放り出されて、何の力も与えてくれないなんて。神様もそこまで意地悪ではなかったか。


狼になりたい。…狼になった。人に戻りたい。…人に戻った。やっぱりだ。コレは俺の力で間違いなさそうだ。


取り敢えず狼になっておく。狼の方が人よりも感覚が鋭いだろうし、裸足で歩くのが辛くなってきた所だったし。


ぐぅ~


また腹の音がなった。そうだった。色々あって忘れていたが腹が減っていたんだった。くそぅ。そのまま忘れていればよかったのに。


意識したら余計に腹が減ってきた。こんな時こそ狼の鋭い嗅覚だ。美味しそうな匂いを見つけるんだ。鼻に意識を集中させ匂いを嗅ぎ分ける。


目の前からすごく美味しそうな匂いがする。狼がいた。美味しそうだ。腹に噛みついた。肉を噛み千切り食べる。美味い。


一心不乱に食べる。千切り食べる。美味い。千切り食べる。苦いが美味い。千切り食べる。美味い。苦美味い。


腹が満たされ食べるのを止める。気がつけば狼の左半身から肉が消えていた。内臓も食べ散らかされている。


コレを俺がやったのか。いくら腹が減っていたからと言って何の抵抗もなく狼に喰らいつくとは……美味かったからいいか。


生きるためには食べないといけない。地球でだって普通に肉を食っていたじゃないか。それが牛か狼かの違いだけ。加工されているかされていないかの違いだけ。


よし、言い訳完了。残りの半身をどうしようかなぁ…今は腹いっぱいだから食べられないし。かと言ってこのまま置いてたら腐りそうだし。


置いていくか。誰かが見つけて食べるだろ。食べなかったとしても木の肥料になるでしょ。きっと。

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